神魔戦記 第五十二章
「決戦、カノン(W)」
戦場。そう呼ぶに相応しい空間で、相対する影がある。
カノンの王城を背にするように立つのは、真紅の鎧を身に着けている炎の聖騎士美坂香里。
その視線は憎々しげに前方へと注がれている。
その視線の先には、涼しい顔をして大黒庵を担う杏の姿。その後ろには鈴菜と栞がいる。
「さて・・・」
その杏が視線を周囲へ巡らせた。戦況は五分五分。いや・・・わずかにこちら側が押されているかもしれない。
とすろと、あまりここに戦力は割けられない。ならば、
「鈴菜。あんたはあの魔術師たちをお願い」
「え?」
「こっちの部隊が劣勢なのは、敵の魔術師部隊が塔なんかにいるから近距離攻撃が届かないこと。
まぁ、向こうもそれを狙ってのことだろうけど。
でもその点鈴菜なら攻撃できるじゃない? しかも魔術より早く。だから」
「でも・・・」
「大丈夫よ。お願い」
鈴菜は一瞬逡巡し、しかし頷くと、
「わかった」
そうして去っていく背中から、今度は栞へ視線を向ける。
「そういうことだから栞も他に回ってくれる?」
「で、でもお姉ちゃん相手に一人は・・・」
「ま、きついだろうけどね。でも栞がいると・・・正直足手まといなのよ」
栞の息を呑む音が聞こえた。が、それは実際の話だ。
相手が普通の騎士なら、後方支援も良いだろう。が、相手は聖騎士。詠唱なしにマナを操ることができる者。
まだ魔術師としてさくらはおろか美咲の領域まで進んでいない栞では、正直邪魔なだけだ。
昔の話を聞く限りでは、成長しているのはわかるのだが。
「まぁ、あんたもいろいろと姉に言いたいこともあるでしょう。けど、それは後にしなさい。
いまあたしたちがすべきことは個人的な戦いや説得ではなく・・・力を見せ付けるための戦いであり、祐一の勝利を待つこと。
・・・でしょ?」
考え込むように俯き、しかしすぐに顔を上げ、
「はい」
「良い返事ね。それじゃあ、ここはあたしに任せて行きなさい。栞の力を必要とする戦場へ」
「はい!」
栞が駆ける。だが、それに対し香里が動きを見せた。
「行かせない、栞! これがいったいどういうことか説明してもらうわ!」
剣から炎が迸る。とはいえ、足止め用の一撃だ。直撃させるつもりはない。しかし、
「だから、あんたの相手はあたしだって言ってるでしょ」
それは巨大化した大黒庵の一振りによってかき消された。
そのまま去っていく栞の背中を唇を噛んで見送り、そのまま杏を睨み付ける。
「あなたもあなたよ、藤林杏! あなたほどの人間が、どうして魔族なんかに組しているの?」
その言葉に杏は一瞬驚いた様子を見せ、
「あれ? あたしのこと知ってるの?」
「知ってるわ。二年前のキー大陸合同武術大会、優勝候補だったエア王国の柳也さんを一回戦で下したって話題だったもの」
「あれは向こうが油断してたからよ」
「そうね。でも柳也さんは翻弄されていた。身体能力じゃ圧倒的に上の柳也さんが・・・あなたの頭脳に、ね」
「・・・」
「それだけの力を持つあなたや、栞が・・どうして魔族なんかに!?」
杏は頬をポリポリと掻き、
「まぁ・・・あたしが祐一の仲間になったのは個人的な問題よ。最初は、ギブアンドテイクのつもりで戦ってた。けど・・・いまは少し違う」
「違う・・・?」
「そう、違う。いまは・・・純粋に祐一の応援をしたいと思ってる。あいつが望む場所へ、背中を押したいと思ってる。
あいつの望むことはあたしも正しいと思うし、あいつならできるだろうなーって、意味のわかんない信頼もある。
・・・きっと栞も同じなのよ。だから彼女は『強くならなければいけない』から『強くなりたい』に変わった」
「・・・あの魔族の望むことってなに?」
問いに、杏は笑みを持って、
「全ての種族が共存できる国を造ること」
「・・・・・・・・・は?」
「耳遠くなっちゃった? だから、祐一の目指すものは全種族の共存。そしてそれができる国造りよ」
そんな馬鹿な、と香里の表情が物語っている。
まぁ、仕方ないだろうな、と思いながら杏は一歩を生み出す。
「ま、話してわかるくらいなら苦労もないわ。こういうのは接してみなければわからないものだとも思うし。だから・・・」
杏の瞳に戦意が宿る。大黒庵を構え沈み込む姿勢に、香里も慌てて剣を構える。
「だから、いまは勝たせてもらうから」
跳んだ。
杏の身体の三倍ほどにまで大きくなった大黒庵を、豪快に振り下ろす。
「その程度で!」
それを後方に跳んで回避した香里はすぐさま火のマナを剣に絡ませて、放つ。
着地のタイミングにドンピシャ。普通ならよけきれない。だが、
「そっちこそ、甘いわ!」
大黒庵は見た目と違い、所持者にとっては軽いのだ。すぐさま大黒庵を地面から引き抜き横へ振り回す。、
その風圧で炎は消し飛んだ。
「しかし・・・聖騎士は便利ね。マナから直接攻撃できるんだから」
例えば魔術なら、通常周囲のマナを身体へ取り込み、魔術回路を介して魔力に変換し、それを組み上げて魔術と化さなければならない。
だが、聖騎士は自己の属性のマナを支配できるので、ただ大気中のマナに働きかけるだけで魔術のような攻撃が起こせるのだ。
「そんなこと言っても手加減しないわよ」
「してくれないんだ?」
「あなたは何を考えているかわからない。だから・・・何か思いつく前に決めさせてもらうわ!」
香里が炎のマナを纏いながら肉薄してくる。
研ぎ澄まされた剣撃。しかしそれを杏は器用に大黒庵の柄で捌いていく。だが、
「熱っ・・・!」
剣の一振りごとに火が舞う。それをも杏は捌こうとするが、さすがにそこまで上手くはいかない。
踊る火の舞い。このままでじわじわと嬲られる。と、
「あっ・・・!」
徐々に押されていた杏が足元のなにかに引っかかって体勢を崩した。無論、それを香里が見逃すわけがない。
「もらった!」
香里は大きく剣を振り上げ、そのまま振り下ろす。だが、
「!」
香里は見た。杏の口元が小さく歪んでいるのを。
―――しまった!?
思うが、止まらない。杏は全く崩れていない姿勢で自ら目掛けて落ちる刀身を横から柄で叩き飛ばす。
逆に体勢を崩す香里。そして杏はそのままの回転運動で大黒庵を繰り出す。
杏は命中を確信し、香里は避けきれぬことを悟った。
だが・・・、
「かわせなくても防御はできるわ!」
香里の片手が大黒庵が迫る方向へ掲げられる。すると火のマナが集束し、そこに炎の壁が出現した。
激突。
「「くっ・・・!」」
両者の声が重なる。
振り抜かれる大黒庵。そして吹っ飛ぶ香里。だが、直接的なインパクトは炎の壁によって殺されている。ダメージはない。
その証拠に香里はなんでもないことのように空中で身を捻り着地しようとしている。
しかし、杏はそこ目掛けて疾駆した。
着地時は隙ができる。必ず攻撃は当たるだろう。だが、マナから直接張れる障壁の展開スピードはこちらの攻撃より早い。
単純に考えて、打開策は二つ。それ以上早い攻撃をするか、障壁自体をどうにかするか。
迷うことなどない。自分にできることは・・・後者のみ。よって、
「ふっ!」
ぶん投げた。
「なっ!?」
そのまま打ってくるだろうと考えていた香里は、突然の行動に一瞬驚きを浮かべ、
「くっ!」
しかしすぐに障壁を展開した。手を掲げてから展開完了までおよそ一秒。介入する余地はない。
そこへ投擲された大黒庵が激突する。香里は後ろに持っていかれそうになる身体をなんとか堪えた。逆に大黒庵の方が吹っ飛ぶ。
が、その頃には既に杏が障壁まで肉薄していた。片手で吹っ飛ぶ大黒庵をキャッチし、残る片手には・・・杏のもう一つの呪具。
「―――守る物に意味はない―――」
小貫遁。その呪(いが読み上げられ、香里の障壁が容易く破砕した。
「え―――」
しかも残りの片手、大黒庵は先ほど吹き飛ばされた力のモーメントを利用して既に横から迫っている。
衝突までおよそ半秒。防御、回避、共に―――不可能。
「がはっ・・・!」
横合いから、強烈な一撃が香里を襲った。
そのまま強く吹っ飛ばされ、地面を転がっていく。
「か・・・は・・・」
香里にとって自分の身に受けたダメージというのは二年前の武術大会・・・折原浩平戦以来だった。
そうして痛みというものから遠のいていた結果だろうか。たった一撃で身体が重い。、
それでもなんとか立ち上がるが、直撃した左腕に力が入らない。・・・折れたか。
だが、杏は間髪を入れず迫る。
「大技を出される前に・・・決める!」
聖騎士の本分は接近戦ではない。その自由に操れるマナと剣技を組み合わせた合体技にある。
いくら杏といえど、そんなものを繰り出されたらまずい。
だから杏は肉薄し、大黒庵を振り下ろす。だが、それを香里は身体を捩ることで回避した。
「まだかわせるだけの余力が・・・!?」
そこで杏は目を見開いた。香里の片手で振り上げた剣の先、強烈なマナが集まっている。
まずい、という直感のままに杏はその場を飛び退いた。
「炎蛇翔動!」
振り下ろされた剣が大地に激突すると同時、巨大な火柱が周囲を染め上げた。
その威力、さくらの上級魔術にすら匹敵する。
「あんなもの喰らったらひとたまりもないわ・・・!」
「外した・・・!」
舌打ちし振り返る先に杏の姿。しかしそこには―――大黒庵がない。
「―――」
まずい、という予感が一気に来た。しかし、香里にはなにをして良いのかわからない。
その視界の中で、杏の唇が動いた。
「―――大きくなる―――」
瞬間、香里は顎に衝撃が走ったことを自覚した。
揺れる視界の中、下からいきなり現れた大黒庵の影。
・・・杏のしたことはつまり、こういうことだ。
先程の香里の一撃を避ける際に、杏は大黒庵を通常時の大きさに戻し置いていった。
通常時の大きさは掌並だ。無論杏の姿を追う香里に大黒庵は見えない。
そしてその場で大きくすれば、下から香里を襲う凶器となる。
「ふ・・・ざけないで!」
マナが駆ける。爆発するように振り上げた斬撃が、所有者以外は大きさに比例して重く感じるはずの大黒庵を上へ吹っ飛ばした。
「嘘っ!?」
「これであなたの武器はないわ! 覚悟しなさい!」
炎が舞う。剣から放たれる火の波をかわし、杏は足元に落ちていた誰かの剣を拾い上げ、
「はっ!」
投擲する。しかし、それは香里の張った障壁に遮られる。・・・が、
「―――守る物に意味はない―――」
結界の消失と同時に顔の横を何かが飛んでいった。まさか・・・、
「さっきの呪具を・・・投げた!?」
「油断大敵よ!」
杏の姿は目前にあった。彼女の武器は―――拳。
「はぁ!」
必中のタイミング。しかし、
「この程度!」
「!?」
香里は顔面へ繰り出されたその一撃を顔を動かすだけで回避した。
「格闘技の修練もない者の拳くらい、この状態でも楽にかわせ―――」
「―――大きくなる―――」
言葉は、しかし不吉な呪(いによってかき消される。
まさかまた、という疑念が香里の中に生まれる。
身構えするが・・・しかしなにも起こらない。
「くっ・・・フェイク!?」
いまので隙だらけな杏を見逃してしまった。横を通り過ぎた杏を視線で追うように振り向けば、
「はぁぁ!」
杏が巨大な槌を持ってこちらに迫っていた。
そんな馬鹿な、という思いがある。先程大黒庵は強く打ち上げた。まだ戻ってくるはずがない。
が、現実に目の前にこうして杏は巨大な槌を持って目前にいる。
なにかしらまたしたのだろう。それが単純に自分の与り知らぬことだというだけで。
だから香里は結界を張った。結界を壊す呪具はもうないのだから、と。
・・・だから香里は気付かない。杏の持っている巨大な槌が黒ではなく白(だということに。
「―――守る物に意味はない―――」
何かを思考する暇もなかった。
結界が壊されたと認識した次の瞬間には風景が強く前へと流れていたのだから。
そして背中がなにかにぶつかり、
「・・・っ!?」
止まった。
霞む視界の向こう、杏が悠然と立っている。
胸の奥からせり上がってくる何かに必死に耐え、香里は悔しげに問いかける。
「・・・最初に、大きくして・・・攻撃したのは・・・」
「もちろん攻撃でもあったけど、あれは後の布石。まぁ、あんたが上に打ち上げてくれたのは僥倖だけど」
「・・・剣を投げてきたのは・・・」
「結界を張らせるため。そうじゃなきゃ小貫遁投げたとき怪しまれるし」
「・・・殴りかかってきたのは・・・」
「それも小貫遁投げたことを怪しまれないため。ああすれば小貫遁をあのために投げたって思えるでしょ?
他にも移動としての手段でもあるし、またあんたの近くでわざと呪(いを聞かせるためでもあったけど」
大きくなる、というあの呪(いは決して香里の言うようなフェイクではなかった。
あれは上に放たれた大黒庵に向かって投げた小貫遁を大きくするためのの呪(い。
無論、大黒庵に大きくされた小貫遁は重くなり、重力に従ってすぐさま落下してくる。
それをキャッチし、杏は香里に躍り掛かった―――というわけだ。
「・・・最初から、全てを計算して・・・いたのね」
「あたしにできることはそれだけよ。あんたみたいにあたしは強くないしね」
香里は力なく笑う。
「・・・ここまでくれば・・・それも十分強さ・・・だわ」
ズルズルと身体が沈む。消え行く意識の中、
「・・・・・・今回の勝負・・・あなたの、勝ち・・・ね・・・」
そう良い残して、香里は力尽きたように倒れた。
「はぁ〜〜〜・・・」
それを見届けた杏が思わずへたり込む。
「今回はって・・・。次やったら勝てる気しないっつーの」
大きく息を吐き・・・香里に視線を向けて小さく微笑んだ。
「ま、あんたには生きてもらうわよ。・・・この戦いが終わったら、ゆっくりと栞と話しをすることね」
その頃。カノンの王城、地下。
漆黒の闇に包まれた狭い空間に、しかし数人の人の気配がある。
「まったく・・・。魔族どもめ。こんなに早く攻めてこようとは・・・」
「まぁ、そう憤っていてもなにがどうなるわけでもない。もう少し落ち着かれよ」
「が、そうそう悠長に言っていられないのもまた事実ですな」
「無論。そのためにこうして皆集まっているのでしょう?」
言葉が飛び交う。聞こえてくる声は、どれも元首たちのものだ。
「しかし・・・まだ試験もろくに済んでいないのに・・・はたして上手くいくのですかな?」
その誰に向けられたわけでもない問いに、しかし返ってくるのは唸り声だけだ。
「・・・とはいえ、この国を魔族どもにに落とされては元も子もない。違いますかな?」
「いや・・・違いない」
次々と肯定の返事が返ってくる。
「では・・・我らが至高の結晶を起こすとしよう」
そうして、皆が一点を見る。
そこにはわずかばかり緑色に発光するなにかがあった。この空間においてそれは唯一の光点とも言える。
近付く。
それはよく見れば、なにかの液体に満たされた縦長の水槽のようなものだった。
その中央、人影が浮かんでいる。
更に近付く。
それはまさに人だった。
一糸まとわぬ少女。見た目は十歳にも満たないような少女が、まるで眠るように、そして胎児のように身を丸めてそこに浮かんでいる。
だが、身体には幾多ものコードが繋がっており、そのコードは規則的に明滅している。どうやら光源はこれのようだ。
「いくぞ」
誰かが呟いた。その他の者が頷く気配がする。
一人がその水槽脇にある装置のようなものに近寄り、スイッチを一つ押した。
すると少女の身体からコードが抜け落ち、水槽の中の液体が徐々に失われていく。
全ての液体が水槽からなくなると、水槽が開いた。水槽の中では、いまだ丸まったままの少女が倒れている。
「・・・おい、起きないではないか」
「まさか・・・失敗か!?」
「あれだけの時間と資金を費やした結果がこれか!?」
「いや、研究者の言う限りでは失敗は見当たらないそうだ」
「しかし現に動かないではないか!?」
「いや、待て・・・。見ろ、動いたぞ!」
言われ、皆の視線が一斉に少女へと向けられる。
ピクリ、と・・・確かに少女の身体は動いた。
元首たちが感嘆の声を上げる。
その先で、少女の瞼がゆっくりと開いた。
・・・闇に栄える、禍々しいまでに綺麗な碧の瞳。
「おぉ」
どこからともなく響く声の中、少女はゆっくりと立ち上がる。
「動いているぞ!」
「おぉ、まずは成功のようだな」
うち一人が前に出て、手に持っている者を少女に差し出した。
それは漆黒の服と、銀色に輝くブレスレット、そして・・・銃だった。
「使い方は・・・初期記憶として書き込まれているからわかるな?」
ワンテンポずれて少女は頷き、それらを受け取った。
ブレスレットを左手に嵌め、服を着て、銃を右手に持つ。
そして待っていたかのように元首たちがその少女を取り囲む。
「良いか? 君の存在理由は敵を殺すことだ。君は敵を殺すために生まれてきたんだ」
「・・・敵を・・・殺す」
「そうだ。そのために我らは莫大な資金をつぎ込んだのだ」
「そしていま殺すべき敵が来ているのだ。さぁ、お前も早く―――」
言葉が途切れた。
それまで喋っていた元首の額には小さな穴が開いていた。
そう、それは・・・銃で撃たれたかのような。
「・・・な、なにを―――!?」
突然のことで凍り付いていた者がようやく動きを見せたが、それも響く銃声によってかき消された。
中央に立つ少女の表情に変化はない。いま二人の人間を殺したばかりであるというのに、だ。
「・・・敵は・・・殺す」
銃口が、また別の元首に向けられる。
「ま、待て! 我らはお前の敵じゃない! 敵は上に―――がっ!?」
「ひ、ひぃ、助け―――」
歩く。ゆっくりと。そして歩を刻むように一定のリズムで銃声が轟く。
・・・そしてしばらくするとそれも止まった。
「・・・・・・」
少女の足元には、たくさんの死体が転がっていた。先程まで元首と呼ばれていた者たちの。
だが、少女は一瞥すらしない。それはただのゴミか風景であるかのように気にしない。
少女はゆっくりと周囲を見渡した。
「・・・敵、いない」
歩き出す。物言わぬ屍と化した者たちを躊躇なく踏みつけながら。
階段に差し掛かると、上から爆発のような音が響いてきた。天井が揺れ、埃が舞う。
「・・・敵が、いる」
階段に足をかけた。
そのまま、ゆっくりとした足取りで少女は行く。
あとがき
うい、ども神無月です。
というわけで、頭脳派杏ちゃんの勝利でしたー。
自分より強い敵は、本気を出される前に、あるいは本気を出させないまま倒す。これが杏の神魔における戦い方ですね。
先を見据えての戦いの流れ方は祐一ともそっくりで、そういう意味で祐一も杏を信頼しているようです。
で、例のカノンの実験のアレ。出てきましたね。とりあえずまだ深くは触れませんが。
では、次回。あの二人の魔術師の激突です。
ではでは。