神魔戦記 第七十八章

                    「エアの力(\)」

 

 

 

 

 

 アゼナ連峰と王都カノンの中間付近で行われているカノンとエアの部隊の戦闘は……徐々にエアが押し始めていた。

 切っ掛けは名雪の敗北。

 匍匐飛行部隊をほぼ一人で押さえ込んでいた名雪が消えたことにより、騎士団は突き崩され、魔術師部隊に雪崩込んでいったからだ。

 匍匐飛行部隊に抑えられ魔術を放てなくなれば、自ずと超上空部隊の迎撃は間に合わなくなり、素通りされてしまうという悪循環。

「くそ……!」

 騎士団と合流して敵を迎撃している祐一は、敵を切り捨てながら思わず舌打ちした。

 状況は劣勢も劣勢。

 名雪のリタイアに加えさくらの手も抜けたのはかなりの痛手だ。

 とりあえず名雪は栞が、さくらは美咲が確保したようなので死んではいないのが唯一の救いか。

 魔術部隊が機能しなくなったことで、あとは後ろに位置する弓兵部隊に任せるしかないのだが、

『祐一! すり抜けていく敵が多すぎるよ! このままじゃ……!』

 水晶から聞こえてくる鈴菜の声からは焦りしか聞こえなかった。

 無理もない。数は減っているがそれでもまだエア側の方が多いのだ。弓兵部隊だけでどうにかしろと言う方が酷というものだろう。

 ――解放、しかないのか?

 自らの内で無意識に抑えている光と闇の属性を融合させることによる覚醒。

 状況が二転三転するかもしれないこの状況下で、使用後意識を失ってしまう覚醒はできれば避けたかったのだが。

 ――とはいえ、背に腹は替えられないか……!

 いまここでエアを迎撃できなければ後も先もない。ならばやむないと祐一が内なる力を呼び覚まそうとして――、

 

 刹那、視界を埋めるほどの雷撃が三条、エア部隊を薙ぎ払った。

 

「「なっ……!?」」

 祐一、そしてエア部隊の総指揮である聖から驚きの声が漏れる。

 当然だ。現段階のカノンの部隊でこれだけの魔術を放つ余裕がある者がいるはずがない。

 いまの攻撃はその一条一条が超魔術クラスの魔力を内包していた。一瞬であんなものを構築するなど、できるのはさくらくらいだろう。佐祐理でも難しい。

 ならば、誰が……?

 その答えはカノンの弓兵部隊よりさらに奥にあった。

 悠然と。外套を靡かせて立つ二人の少女がそこにいた。

「まったく。到着早々こんなことになってるなんてね……。それとも見越してたのかしら?」

 向かって右側、フードを被った少女が苦笑交じりに言う。フードの影で表情こそ読み取れないが、ボリボリと頭を掻く姿は如実に「やれやれ」と語っていた。

『かもしれないの』

 逆側、向かって左側の少女はフードを被っていなかった。青に近いショートカットに、やや不釣合いな大きさのリボンを着けた少女は、しかし喋ることなく指先に込めた微細な魔力で中空に文字を描いた。

 その左側の少女の姿を見て、聖は愕然とした。

「あれは……馬鹿な、ワンの上月澪だと!?」

 上月澪。

 ワンにその人ありとまで呼ばれる、全世界でも高名な魔術師だ。

 文字魔術の権威でありつつ、とある事情から後天的に特殊属性を得た、異質の魔術師。

「澪さん……!?」

 そして、それを遠くで見ていた佐祐理もまた驚きに肩を震わせた。

 佐祐理は澪と何度か会い言葉も交わしたことがある。

 だから佐祐理は彼女の強さを十分に知っていた。

 どういう理由で、どういう理屈でエアに攻撃を加えているのかはわからない。だが、

「澪さんが加勢してくれるなら、この戦い……勝てます!」

 そう歓喜に揺れる佐祐理とは逆に、聖はただその光景が信じられぬと目を見開いている。

 現在はワンの魔術学校の教師をしていたはずだが、その上月澪がどうしてカノンに……?

 いや、問題はそこではないと聖は首を振る。

「ワンがこの戦闘に介入してくるということは……つまりワンはカノンの側に着くと、そう判断して良いんだな!」

「それは早計というものよ、霧島聖」

 そんな聖の問いに、しかし答えたのは澪の隣にいる少女だった。その少女はわずかに嘲るような声音を響かせ、

「わたしたちは確かにワンの出身ではあるけれど。だからってこれがワンの意思ってわけじゃない。

 だってそうでしょう? わたしたちはワンの軍属でもなんでもないんだから」

 国の縛りなんて皆無よ、と少女は鼻で笑った。

「わたしたちは自分たちの意思でここに亡命に来たのよ。そこにワンは一切関係ないわ」

「戯言を。あの上月澪をワンが手放すはずがない!」

「仮にそうだとして。あなたたちにそれを確かめる術があって?」

 くっ、と聖は喉を鳴らす。

 確かに、聖たちエア側にそれを立証する手立ては無い。

 詭弁だ、とは思うが確かに可能性が無いわけではないのだ。たとえそれが建前だとしても、本人がそう言っている以上ワンに責任追及はできないだろう。

 しかし、それでも確かなものは一つだけある。それは、

「……だが少なくとも、いまのお前たちが敵だということはわかるな!」

 聖の宣言と同時、彼女の周囲にいた複数のエア兵が二人に――というより澪に向かった。

 上月澪の能力が反則的なのはキー大陸では周知のことだ。このまま澪を放っておくわけにはいかない。近接戦にて早々にケリを着けねば。

 ……と、誰しも思うだろう。

「ま、それは当然ね」

 ゆらりと、フードを被った少女が軽く地を蹴った。

 迫るエア兵とその少女が交錯し、

「でも、敵を澪だけだと思わないことだわ」

 瞬間、向かったエア兵が全員両断された。

「なっ……!?」

「そういえば、自己紹介がまだだったわね」

 身体に軽く掛けていただけだったのか、疾走の反動でフードがひらりと地に落ちた。

 ふぁさり、と背中に落ちるウェーブのかかった桃色の髪。その影からは的確に敵の動きを捉えんとする鋭利な瞳が覗く。

 その少女は三日月のような流曲線を描くその二振りの剣をそれぞれ左右に構え、言った。

「わたしの名前は深山雪見。ま、よろしく」

「深山、雪見だと……!?」

 その名前は聖も聞いたことがあった。

 深山雪見。ワン周辺の盗賊を軒並み単身で壊滅させたという脅威の剣士。

 本来は劇団の団長らしく、その仲間を守るためにと武芸に手を出したそうだが、そのレベルはもはや並の兵士を軽く凌駕するらしい。

 盗賊の間では恐怖と畏怖で名を伝えられているとも聞く。

「くそ……」

 思わず呻く。

 上月澪に深山雪見。

 どちらも一線級の実力の持ち主だ。この二人がカノン側に着いた状況で、はたしてこのまま勝てるだろうか?

 いや、と聖は首を振る。

「勝てなくても良い。だが、いまは持ちこたえねばならない!」

 できることならカノンを攻め落とす。最悪でも往人が帰ってくるまでは持たせなければならない。 

 選択肢はなかった。

「迎撃しろ! 奴らも敵だ! たかが二人、蹴散らせ!」

 たかが二人、という枠組みにその少女たちが組み込まれないことは聖自身理解している。

 しかし、そんなことを指揮官である彼女が言ってしまえば、部隊の士気は大きく下がるだろう。

 いまはカノンを押し始め、ようやく士気が上がり始めた頃合なのだ。ここで下げられたら、後が無い。

 しかし、そんな聖の思惑をせせら笑うように、ワンの二人は動き出す。

「迫ってくるのはわたしがやるわ。澪、あんたはでかいのぶちかまして」

『わかったの』

 力強く前へ踏み出る雪見。そしてその後ろで澪は脇から一冊の、手の平に収まるような小さな本を取り出した。

 タイトルもなにもない本。だが澪はそれを手で開けることなく上に向かって放り投げた。そして、澪の指が踊り、字を描き出す。

『写本、起動』

 すると投げられた本が中空で動きを止め。バン、と勢いよく開け放たれた。

『第三章を参照、第三十二節より四項から九項までを選出。術式発動』

 綴られる文字に反応してか、本は勝手にパラパラとページを捲り、そして命に従って計六枚のページが本から破れ空に舞う。

 澪は文字魔術の支配者。それが文字魔術による何かであることは誰にでもわかるだろう。

「させるな、止めろ!」

 号令にエアの兵士が澪を取り囲もうとする。どのような魔術であろうと近接戦闘に持ち込めば対処可能だ。だからいま佐祐理たちも封じられているのだから。だが、

「行かせないわよ」

 割って入るように雪見が跳んだ。

 二十人近いエア兵が群がる中心にいながら、しかし雪見は怯まない。むしろ獰猛な笑みを見せて、その剣を振るう。

 しかし、ただ振るうだけではない。その刀身にはそれぞれ魔力が込められていて、

「『乱れ狂う雷の槍(ボルティス・ランサー)』」

 右の剣を振るった瞬間、雷の上級魔術が振り落ち、

「『乱れる雹(ヘイルストーム)』」

 左の剣を振るった瞬間、辺り一帯を氷の上級魔術が覆い尽くした。

「なっ……!?」

 その驚きの声は誰のものか。しかしその驚愕もある種当然のことだろう。

 見た目に剣士であるはずの雪見が魔術を、しかも詠唱も無しに上級魔術を連発したのだ。驚くなという方が無理だろう。

 だが、これにはからくりがある。

 ……その双子剣、名を『デュナミス』と『エネルゲイア』と言う。

 元々はワン国王、折原浩平の所有する剣だったのだが、とある事情で雪見が授かったものだ。

 その『可能』と『現実』という意味の名を銘とされた剣には、地味だが有力な特殊能力があった。

 呪文詠唱の中途破棄(ショートカット)

 第三小節までの工程をカットすることができるという、それは概念武装に近い武装だった。

 だからこそ、深山雪見は単身で盗賊を壊滅させるだけの力を持つ。

 彼女は剣士にして魔術師。

 世界でも実に珍しい、祐一のような魔術剣士のタイプなのだ。

 そして、

『文字式展開――解放』

 その間にも澪の準備は完了している……!

天罰の神雷道(ジャッジメント・ゼロ)

 澪の指がその魔術の名を書き上げた瞬間、中空に舞ったページ一枚一枚がその超魔術へと変貌を遂げた。

 文字魔術とは、言うなれば魔術の貯蓄だ。

 詠唱と魔力の組み上げ、構築を事前にこなし文字と共に記した物体に封印するとでも考えればわかりやすいだろうか。

 そうすれば発動の魔力さえ込めれば、その物体は入力された魔術を発動させることになる。

 暇なときに魔術を組み上げておけば、有事の際に貯蓄した分だけを僅かな時間で発動できるのが文字魔術の強みだ。

 だが、一見長所ばかりな文字魔術だが、そうではない。

 そもそも文字魔術を扱える魔術師が限りなく少ないのだ。

 文字魔術とは貯蓄。即ち、一定時間、しかもかなり長い間、膨大な魔力を一箇所に留めておく、ということなのだが、それ自体がかなり難しい。

 それでも下級から中級魔術程度のものを、容積の大きいもの……剣や鎧や盾に込めるのはまだ容易だろう。

 だがそれ以上、上級魔術や超魔術などといったレベルの術を、札や紙、あるいはアクセサリーなどといった小物に込めるのは尋常ではないのだ。

 容積の大きさは比例して魔力を込める器としての大きさになる。

 紙や札などもともと壊れやすいものに膨大な魔力を込めるということは、壊れる寸前のグラスに熱湯を注ぎこむのに等しい。

 だから、それを成し遂げるには効率の良い文字配置、それに対する魔力の配分、繊細なコントロールが必要になるのだ。

 そういう点では佐祐理もすごいだろう。上級魔術を手の平サイズの札に納めることが出来るのだから。

 しかし、澪はその手と同じくらいの大きさの本、その一ページに超魔術を込めていた。

 それこそ、上月澪が世界一の文字魔術の使い手であるという証明。

 その証たる金色の矢が六条、エア兵を貫くように空を突き奔った。

「……!」

 雷の魔術は高速。放たれてからの回避や防御はほぼ不可能。故にそれらは上空の部隊を根こそぎ吹き飛ばしていく。

「これが、上月澪……! そして深山雪見かっ!?」

 なんとかその攻撃を回避した聖は、憎々しげにその二人を見つめた。

 最悪だ。せっかくの流れがここでせき止められた。

 カノン、エア、両軍とも二人がどういう理由でそこに立っているかこそわからないものの、それが心強い援軍であるか強力な敵であるかは理解しただろう。

 カノン兵の動きには活力が戻り、逆にエア兵の動きは鈍いものになっていく。

 聖は確信する。このままいけば負ける。下手をすれば全滅するかもしれないだろう、と。

 どうする。往人を待たずに下がるか。しかしそうなれば全ては失敗に終わってしまう。

 だが、そうして迷っていると、耳を打つ声があった。

「なにやってる聖! 下がれ!」

「国崎くん!?」

 そう、それはカノン城へ向かった往人であった。しかしその腕に、観鈴の姿は無い。

「国崎くん、まさか――」

「作戦は失敗だ! あいつら、城にもかなりの戦力残してやがった……! だから早く下げさせろ! こっちもやばそうじゃねえか!」

「っ……! 全軍に伝える! 撤退! 撤退だ!」

 聖の号令にエアの進軍が止まる。

 いまにも止まりそうだった流れは、その声でどうにか自らの意思で後ろに流れ始めた。

 作戦失敗。その意味が、聖の胸に深く突き刺さる。

「あいつら……一筋縄じゃいかないぞ」

「あぁ……そのようだな」

 悔しそうに告げる往人に、聖もまた半分ほどに小さくなってしまった自らの武器を見て頷きを返す。

 敵は、予想以上に層が厚いようだ。

 クラナドと兵を分割しながらも、往人を退けるほどの兵を城に配置し、さらにここにこれだけの戦力を裂けるのだから。

 そしてワン。口ではああ言っているものの、まず間違いなくあの二人はワンとしての差し金だろう。

 この戦争。どうやら遠からず四国での大きな戦いになりそうだ。

 そう考えながら、聖たちもまたその場を去っていった。

 

 

 

「行ったか」

 ふぅ、と嘆息しつつ祐一は思わず地べたに腰を下ろした。

 追撃はさせなかった。いや、できなかったという方が正しいか。

 今回はたまたま予想外の援護があったから退けはしたが、正直あのままでは負けていたのはこちらの方だっただろう。

 兵の損耗率もかなり高い。皆、疲労と緊張から座ったり寝っ転がったりしている。

「これを……続けるのか」

 大国エア。そしてクラナド。

 今回こそ四部隊だけであったが、エアが本腰を上げ全軍で向かって来たとき、はたして自分たちは勝てるのだろうか?

「いや――」

 勝たねばならない。

 それに、その希望となるかもしれない者たちがこうしてそこに立っている。

「はじめまして。あなたが……カノン王、相沢祐一?」

「あぁ。俺が相沢祐一だ」

「そう。形式ばった物言いは好きじゃないから、ごめんなさい。

 ……わたし、深山雪見とこの子上月澪は、ワンの王、折原浩平の命によりカノンにしばらく厄介になるわ」

 相手が一国の王であると知りつつも砕けた物言いをする雪見。そしてその横でただニコニコと微笑んでいる澪。

 そしてそんな態度を気にもしない祐一は、言葉を聞いてやはりな、と心中で頷いた。

「助かった。とりあえずは……ありがとう、と言うべきか」

「礼なんていらないわ。わたしたちは折原が――国王が行けというから来ただけよ。

 このタイミングだったのは偶然か――いや、折原のことだからわかってたのかもしれないけど」

 はぁ、と嘆息する雪見の前。そこにフワリ、と。翼をはためかせあゆが祐一の隣に着地する。

 ところどころに小さな傷こそあるが、さほど大きな怪我はなさそうだ。

「王様の命令って……でも、さっきワンは関係ないって言ってなかった?」

 そんなあゆに――というよりも神族であるあゆがここにいるのがやや驚きだったのだろう。雪見は一瞬目を見開きつつもすぐにややツンとした表情に戻り、

「あんなの出任せに決まってるじゃない。第一、わたしたちがカノンに亡命する理由なんかどこにもないわ」

「そうだ。それが嘘であることくらいエアの連中もわかっているだろう。だがああ言っておけば、責任追及もそう簡単にはできまい。

 二人が軍の者ではないのは事実なんだろうし、それならワンに二人を縛る権利は無い。エアから追求されても知りませんの一点張りで通るだろう」

「うぐぅ、そんなもんなの?」

「あゆ。お前はもう少し頭を使うことを覚えろ」

「う、うぐぅ。祐一くんひどい……」

 涙目で訴えるあゆを苦笑しつつ、祐一は雪見に視線を戻す。

「これは折原国王の案なのか?」

「ええ。軍属じゃない人間で助っ人として使えそうなのはわたしたちだけだから、って。まったく……こっちの意思も聞きやしないで勝手に決めて」

『でも、深山先輩もなんだかんだでしっかり動いてるの』

「まぁ、折原には借りもあるしね――って、澪。あんまりそういうことは言わないの」

『はい、なの』

 にこにこと笑顔を浮かべながら澪は指に込めた魔力で文字を綴る。

 それを見て、祐一は澪についてのある噂を思い出した。

「そういえば上月澪は喋れない、という話だったが……本当のようだな」

『はいなの。ちょっといろいろあって……。でも、不便だと思ったことはないの』

 いろいろあって。その部分でやや暗い表情になったが、最後にはいつもの笑顔に戻っていた。

 なにかあったのだろう。こんな時代だ、曰く付きの過去を持つ者など山ほどいるだろう。

 詮索する気もない。当人がいいと言っているものに口を出すほど野暮でもなかった。

「さて……城に戻ろう。あっちも気になるしな」

「え、どういうこと?」

 剣を使って立ち上がる祐一に、あゆは首を傾げる。そんなあゆに祐一はやれやれと吐息をこぼし、

「さっきのあの男、城の方角からやって来た。そしてこう言っていたな。『作戦は失敗した』、と。

 つまりあいつは別働隊で、城で何かをしようとして、しかし香里たちに止められたのだろう」

「あ――」

「本人が失敗した、と言っている以上失敗なんだろうが、こっちに被害が無いとも思えない。ゆっくりしている余裕は無いだろう。

 あゆ、悪いが皆にそう伝えてきてくれ」 

「あ、うん。わかったよ」

 飛んでいくあゆを一瞥した後、祐一はワンの二人に目を移し、

「それじゃあ、お前たちもついてきてくれ。もろもろの話は城でしよう」

「わかったわ」

『はいなの』

 さて、と祐一は思う。

 とりあえず城に戻ろう。城の状況や、クラナドとぶつかった部隊の安否も気になる。

「しかし……これは、きついな」

 カノンを攻めるときは、後ろにはなにもなかった。

 だが、いまはその後ろにあるものの方が比重が大きいだろう。

 これが王。一国を背負うものとしての戦い。

 ……しかし、ならばこそ余計に敗北は許されない。

「そうだろう? ……神奈」

 そう強く誓い、祐一は歩を刻み始めた。

 

 

 

 あとがき

 はい、どーも神無月です。

 えー、長かったVSエア編もどうにか終わりました。いや、ホント長かった(汗

 そしてやってきました雪見&澪。個人戦力豊富なワンの一員です。

 んで、次回はそのワンに視点がいきますです。お話中心ですな。

 では、また次回に。

 

 

 

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