神魔戦記 第七十四章
「エアの力(X)」
「はぁ!」
気合と共に一閃が振るわれる。
光の斬撃を佳乃は横に羽ばたき回避し、今度はお返しと言わんばかりに正拳突きを繰り出す。
「!」
だが、あゆもまたこれを翼のはためきを利用して回避。互いはそれぞれ一瞥を交わし、刹那の間に同時に後方へ下がる。そして、
「『輝く乱れ星(』!」
「『光羅(』!」
佳乃の周囲に浮かんでいた数十の光球から光が一直線に飛び、あゆの周囲に展開された同じく数十の光の矢が疾駆する。
互いの魔術はそれぞれが激突し、拮抗する光は耐え切れじと空中で破砕した。
「へぇ、やるぅ」
両者の中間で相殺された魔術を見て、佳乃が感心したように呟く。
しかしあゆは慢心せず、光を担うグランヴェールを軽く回し穂先を向け、
「ボクだってカノン軍の一人。そう簡単にはやらせないよ」
特訓の成果、確かに表れているとあゆは実感する。
――大丈夫、やれるよ。
自信と共に思い出すのは、魔術の訓練をしていたときのさくらの言葉。
『良い? あゆちゃんは自分じゃ気付いてないと思うけど、あゆちゃんはかなりの魔力量があるんだよ』
『そうなの?』
『うん。まぁ元々神族は人間族や魔族なんかより魔力が高い種族だけど、その中でも大きい方なんじゃないかな』
『え、そうなんだ! やったぁ!』
『喜ぶのは早いんじゃないかなぁ。魔力総量が高いとはいえ魔力操作は出鱈目、魔力効率はごり押し、攻撃魔術も三つしか覚えてないんじゃなぁ〜』
『うぐぅ、そうだよね……』
『ま、だからこれからそれを特訓するわけだけど。まぁ、ようするにボクが何を言いたいかといえば――』
グランヴェールの柄を強く握り、あゆは腰を下ろす。羽ばたけば一気に前へ進める、という姿勢で身体を引き絞り、
「魔術をメイン、槍術をサブに置いたスタイルがボクの効率の良い戦闘スタイル……!」
飛ぶ。
穂先を眼前に突き出し、まるで己が身を弾丸とするような形であゆは飛ぶ。
「突っ込んでくる気!? なら――おいで、ポテト!」
突如空中に展開される魔法陣。そこから現れるは……どこか不気味で、しかし愛くるしいような、猫のような犬のようなもこもこした生き物。
「ぴこ」
ポテトはそのまま佳乃の肩に捕まり、首を傾げつつも口を開き、
「あの子、墜としちゃえー!」
「ぴぃぃぃぃこぉぉぉぉぉぉ!!」
光の放流が空を切り裂いた。
あゆ目掛け一直線に奔る光の刃。しかし、あゆはそれを見ながらも止まるどころかさらに羽ばたきを持って加速する。
激突する。そう見えたその瞬間、
「『光の盾(』!」
あゆの前方に出現した光の壁が、ポテトの光の放流を防ぎきった。
「そんな!? ポテトの光は上級魔術並の威力を持ってるのに、そんな下級魔術で……!?」
「これが神殺しの力だよ!」
神殺しは己が担い手の属性を強化、向上させる特質を持つ。
それ故に魔術はそれだけで威力を増し、また魔力コントロールを磨けば神殺し自体に属性を融合させることすらできる。
だから、さくらはあゆに新しい魔術を覚えさせることよりなにより、まず魔力コントロールを叩き込んだ。
神殺しで魔術の能力が上がる以上、能力の高い上級魔術なんかを覚えるより、魔力コントロールを良くして素早く、かつ効率的に魔術を扱えた方がすぐに実力に直結するからだ。
この二ヶ月、それこそ嫌になるくらい必死に魔力コントロールの特訓をしてきたのだ。
おかげで一発に使用する魔力も効率化できたし、下級魔術程度なら無詠唱だってできるようになった。
現在あゆが覚えている魔術は全部で九。それも最初から覚えていた魔術を除けばそのうち八つが下級魔術だ。
神殺しで魔術的な負担が軽減できることを良いことに、弾数と素早さに物を言わせるスタイルをあゆは選んだ。
無詠唱でかつ一気に多数の魔術を展開し、接近戦も踏まえつつ相手を翻弄する。
これが――新しい、月宮あゆの戦闘スタイル。
「『光羅(』!」
叫べば、あゆの周囲に一気に五十近い光の矢が出現する。
以前であれば、これだけの数を展開すればすぐにばてていたものだが、いまは疲れすら感じない。
神殺しの威力上昇補正により一発がそれこそ中級魔術レベルにまで押し上げられた矢が、あゆから先行するように佳乃へと飛ぶ。
「反則っぽいよね、それ!」
毒吐きながら、佳乃は周囲に滞空している光球を操作し、それぞれを迎撃していく。
だがその光球を操作するのはそれなりに集中力のいる行為。そうして動きを止めた佳乃目掛け、あゆは特攻を仕掛ける。
「えぇぇぇぇぇい!!」
体重と加速度を込めた渾身の体当たり。その穂先が直撃するその寸前に佳乃は身を回し、
「まだまだぁ!」
一回転という力を利用して穂先を横に蹴り飛ばした。
衝撃に穂先がずれ衝突コースから外れる。だがあゆは自らの翼で制動をかけ、更に翼を用いて一回転。佳乃と同じ要領で槍をぶち込まんとする。
それを佳乃は身を下げかわし、その隙だらけの懐にタイミングを合わせたポテトの咆哮を形にした光が飛ぶ。
ほぼ零距離という射程でありながら、しかしあゆはグランヴェールを振り抜いた反動すら利用し、その方向へ翼をはためかせ回避。
そうしてそのまま距離を取るのかと思えばすぐ反転し手を掲げ、
「『光弾(』!」
光の弾丸が撃たれる。
どの属性にも共通のことだが、下級魔術の中で矢は速度重視、弾は威力重視の側面を持つ。
しかしあゆはやはりここでも神殺しの能力を生かし、無詠唱で威力を増しながらも連発で唱える。
「『光弾(』、『光弾(』、『光弾(』!」
既にそれは一発という響きではなく連射という轟音を打ち鳴らしている。
それを『輝く乱れ星』で迎撃しきれないと判断した佳乃は魔力を拳に付与し、その弾丸を悉く打ち払っていく。
だがそうしていると、前方から外から回り込んでくるように弧を描き光の矢まで飛んでくるではないか。
「うわわわわぁ!?」
佳乃はおそらく生まれて初めて――下級魔術が脅威だなどと思っただろう。
封印を解ければこの程度の相手……とは思うが、あれはここぞというとき以外の使用を禁止されている。そしていまはそういう状況ではない。
ならいまのままで頑張るしかない、と考えつつ拳で弾を、『輝く乱れ星』で矢を迎撃する。
すると数秒後、不意に魔術の攻撃が止み、
――来る!
判断した瞬間に佳乃は真横に身体を捻った。すると先程まで佳乃がいた場所を後ろから貫く光の刃。
「うぐぅ、あれでかわすなんて……!?」
「まだまだ甘いよ!」
「さすがに隊長格は強いね! でも……負けないよ!」
穂先が軌跡を生み、突きと振りの連撃が来る。
その槍の動きはまるで以前とは別人。達人という域にまでは届かなくとも、一般の槍兵よりは遥かに速く、また強い。
「この槍の型って……二ヶ月前に戦ったあの魔族さんに似てる……?」
突きを払い、振りを回避する佳乃は、その動きからそう感じ取った。
その呟きを聞き取ったあゆは頷きを見せ、
「美汐ちゃんはボクの槍のお師匠さんだもん。だからその意味でも――ボクは勝つよ!」
「あたしだって負けないんだから!」
互いの攻撃をいなし、かわし、距離が開けば魔術戦が展開される。
両者の実力は傍目から見ればほぼ互角。決着が着くにはまだしばらくの時間が掛かるだろう。
しかし佳乃を一人で抑え込むという意味合いでは、ここはあゆの勝ちなのかもしれない。
振り落ちた光の一撃。
晴子を第二師団長たらしめているその破壊力は、他の追随を許さない。
単体攻撃力だけならば、神奈以外で晴子に届く者はエアにいないだろう。
それを見ていた他のエア兵は歓声を上げる。だが、カノン兵の表情に落胆はない。それが全てを物語っていた。
「へぇ……。良い防御能力持ってるやないか」
晴れていく土煙。その向こう……暗黒の半球でその身を覆い、無傷でいる名雪が立っていた。
「遮鏡(の夜」
名雪はその表情に自信の笑みを浮かべて、
「不通の闇が作り出す結界は、どれだけ強大な技だろうと魔術だろうと通用しないよ」
「ほぉ〜。ま、確かにその結界は堅そうやな。なら――」
晴子が前傾姿勢を取る。来る、と察し結界を解き剣を構える視線の先で晴子は口元を豪快に歪め、
「試させて――もらおかぁ!」
飛翔。
翼のはためき一つを持って晴子が急速に接近してくる。
握られた拳にはやはり光が漲っている。それこそが先程の一撃の源だろう。
「おらぁ!」
振られる拳。しかし距離はまだまだその拳が直接届く距離ではない。
しかし、そこから来る。拳に乗せられた強烈に圧縮された光の放流が顔面コースで飛んでくる。
それが先程の一撃の正体。
「!」
それを見届けてから、名雪は身体を捻りその一撃を回避した。
強烈な一撃だ。完全に回避したというのに余波で身体に痺れが奔るほど。直撃すればひとたまりもないだろう。
だが、かわせない程ではない。
それに見てくれほど射程距離は無いらしい。かわせばすぐ後ろで光がその強さを失い虚空へと霧散した。
まぁ、射程距離が関係ないなら晴子がこちらに近付いてくる必要性もないわけで、その辺は推測も既に立っていたのだが。
そしてそこまでの結果から導き出される答えは、
「冷静に対処すれば、わたしに分がある……!」
母親の秋子ほどは遠距離には不可能だが、そこそこの距離までなら『琉落の夜』を展開できる。
見た感じスピードに大差は無い。上手く距離を保ち続ければ、それで勝負は決まる。
さらに右、左の拳から連続で二発の光が迫る。それをそれぞれ上手く回避し、剣を縦に構え、
「琉落(の夜!」
「!」
晴子を包み込むように、突如暗黒の球体が虚空に出現する。
以前までは剣を媒介にして地面伝いなどでなければできなかった『琉落の夜』も、現在ではこの通り所定の空間に出現させるだけのことができる。
自分だっていままで城でのらりくらりしていたわけじゃない。
もっと強くなれるように、そうなるための努力は惜しまなかった。
「おおっと!?」
だが、その闇が不通の結界として完成する前に晴子は脱出していた。
舌打ちする。技発動から結界として確立するまでおよそ半秒。素早さに自信があるものであれば回避もできるだろう。
加えて相手は翼持ちの神族。一般兵ならまだしも、幾多もの戦場を潜り抜けてきた隊長クラスがあの程度で驚くこともないのだろう。
その晴子はやや離れて滞空するこちらを見上げ、
「なーるほど。なかなか良い観察力の持ち主みたいやな。……この距離、ギリギリうちの攻撃が届かない距離や」
「わたしをあんまり甘く見ない方が良いよ?」
「そやな。……しかーし!」
そこでチッチッチッ、と晴子は人差し指を軽く振って見せ、
「あんたこそ、うちをあんまなめん方が身のためやで?」
「え?」
「……あんたは、他の魔族に比べて魔力が低い」
「!」
「あるいは、さっきの結界の使用魔力が高いのか……ま、どちらにしろ多用できないという事実がある。そやろ?」
看破された事実。
どうして、と愕然と思う名雪に晴子は苦笑する。
「あんたが観察してたように、うちも観察してたっちゅーこっちゃ。……あんた、うちの攻撃回避しとったな?
あれだけの防御力を持つ結界があるにも関わらず、や。……ま、普通に考えればそこになにか理由あると考えるやろ?
そうするとまぁ、その二つくらいしか考えられんわな」
迂闊。
自分がしていたことを相手がしていないなんて、どうしてそんな風に考えていたのだろうか。
これがまだ自分が未熟だと……母にそう言われた理由なのだろうか。いや、それも含めまだまだ未熟なんだろう。
認めよう。だが、認めたうえで、
「確かに、そう。でも、だからってどうするの? 速度が互角なら、あなたじゃわたしは倒せないよ」
それでも勝つ。そう決めたから。
しかしそんな決意を嘲笑うかのように晴子は嘆息。何もわかってない、と言わんばかりに大仰に首を振り、
「あんた、実戦経験それほど無いんとちゃうか?」
「な、なんだよ!?」
「は、図星か。せやろな。そうでもなければ、そんな言葉吐かんわな。
良いか? よー覚えとき。冥土の土産パートツーや」
告げた瞬間、晴子の身体が大きくなった。
「え?」
違う。それはそう見えただけ。
つまりは……遠くにいた晴子が、近付いた。ただそれだけのこと。しかしそのスピードは、
――さっきの二倍近いなんて……!?
「観察で本気出す阿呆がどこにいる、っちゅーねん」
その言葉でハッとした名雪は、既に回避不可能の距離であると察した。
反射という動きで魔力を練り上げ、一瞬の下に自己の成し得る最強の盾を具現化させる。
「遮鏡(の夜!」
光の大砲が直撃するよりも刹那早く『遮鏡の夜』が展開し、その一撃を防ぐ。だが、そこで終わらない。
「おらおらおらおらおらぁ!」
連打連打連打連打連打。
ぶれる程に加速された拳が次々と光の大砲を『遮鏡の夜』へと叩き込む。
強烈な連打。確かに回避は困難そうであるが、この程度の威力であれば何十発、何百発ぶつけられようと『遮鏡の夜』は崩れない。
いまは防御に徹して隙が出るのを待つ。
そう考えた名雪の目前、不意に光の豪雨が止んだ。が、その向こうに晴子の姿が……無い。
目を見開く名雪。しかし、それに気付いたときには既に遅く、
「こっちやで」
その言葉と同時、突如横合いから腹部に強烈な衝撃がぶち込まれた。
「ごふっ……!?」
「あんたのその結界。確かに堅いみたいやけど、いかんせん防御方向が一方向やからなぁ……。横、がら空きや」
内臓がやられやのか、口から吐き出される血。
だがその肉体的なダメージよりも、出し抜かれた、という精神的なダメージの方が大きくて、
「……っ!」
横を向きすぐさま『遮鏡の夜』を張ろうとするが、遅い。
それよりも早く十近い光の連打が身体中に叩き込まれた。
衝撃に身体は跳ね飛ばされ、そのまま追撃の一撃によって地面へと叩き落される。
「がっ!?」
激突する大地の中、その衝撃に再び血を吐きながらも、名雪は晴子を睨み続けた。
気を失いたくなるような激痛。身体の節々は痛みの悲鳴を上げ、頭にもダメージを受けたのか視界も歪む。
しかし、気絶なんかしない。ここで気絶をすればそれ即ち死であり……その結果として、
――祐一を、守れない。
数年前、祐一の父親……自分の伯父に当たる存在が殺されたときに何もできずに逃げてしまった無力感を。
二ヶ月前、秋子との戦いのとき……自分は戦えるんだと錯覚し、しかし何も出来ずにいたときの無力感を。
――わたしはいまでも……覚えてるよ。
だからこそ努力した。
いまのカノンという国は、祐一の目指す夢への大きな土台なのだ。
それを崩させたりはしない。もう二度と、あんな悔しい痛みを味わいたくは無い。
だからこそ、
「今度こそ、祐一のことをわたしが守るんだ……!」
気合で身体を押し上げる。さらにそのまま飛翔し、再び晴子に対峙した。
最早満身創痍、といった風体の名雪を見て晴子がどこか感心するように二度頷き、
「おぉ、根性あるなぁ、あんた」
「……当然、だよ。だってわたしには……守りたいものが、あるんだから……!」
剣を水平に構える。
……自分がいま使える水瀬の技は全部で三つ。
自分が小さい頃、秋子に教えてもらったのは『琉落の夜』と『遮鏡の夜』の二つのみ。
しかし、もう一つ。名雪が使える技がある。
いや、使える、なんて言うのはおこがましいかもしれない。まだろくに制御もできないのだから。
だが、自分の知りうる限りこの技こそ水瀬最強。あの秋子が魔族の長としてこのカノンに君臨していたのもこの技あってこそ。
秋子が得意とする対多数一撃殲滅技。名雪はそれを教えられはせず、しかし見ることは数回あった。
故にこれは見よう見まね。いままで何度も練習をしてみたが、それでも上手くいった試しは無い。
……しかし、『琉落の夜』と『遮鏡の夜』が共に効かない相手であるならば、もう残された道はこれしかない……!
「……!?」
いままで余裕さを決して崩さなかった晴子の表情が緊の一字に染まる。
眼下、戦闘を繰り広げていたエアの匍匐部隊とカノンの騎士団すら動きを止めた。
それほどの魔力が、いま名雪の周囲を踊っている。
名雪が内包しているであろう、そのほとんどを使用しているのではと思えるほどの高圧な魔力。それは水平に構えられた剣に集約する。
魔族七大名家、水瀬。
七大名家の中では芹沢の次に好戦的とされ、こと集団戦闘においては無類の強さを誇ったと言われる一族。
その真価が今、ここに具現する……!
「砕城(の夜……!」
その名を告げた途端、名雪を中心に広範囲を強大な闇の球体が覆い包んだ。
大きさは半径にしておよそ十五メートルほど。晴子だけでなく低空飛行していた匍匐部隊の一部すらも巻き込み、球体は闇を成す。
しかし、いまだそれは結界としてまだ不完全。
「ほんま、ごっつ大きい魔力やけど……そんなん完成するまで待つかボケェ!」
一瞬術者である名雪を倒そうか、と考えた晴子はしかしその思考をすぐに切り捨てた。
魔力が安定していない。この技が名雪にとって未だ未完成な技であると晴子もすぐに理解した。
そんな状況で術者を倒したとしても、魔力の大きさに技が勝手に暴走するかもしれない。それではアウトだ。
だから晴子はこの結界からの逃亡を決めた。名雪に背を向け、全速力でこの球体からの離脱をはかる。
球体はそれほど大きくはない。本来はもっと巨大なはずなのだが、それを晴子が知る由もない。
抜けられる。そう確信し、確かに抜けた。
だが、それで晴子は安心してしまった。
「あ?」
不意に、何かに引っ張られるような感触の下、前進が止まった。
何故、と思い肩越しに振り返って……晴子の表情が驚愕に染まった。
結界が完成している。そして……翼だけが結界の中に取り込まれたままだった。
「しまっ……!?」
身体が抜けただけで安心し、速度を緩めたのが仇となった。
もしそこで速度を緩めず突っ切っていれば、翼も残すことにはならなかったはずなのに……。
「闇よ閉じよ。そして全てを凍て付き殺せ……!」
名雪の宣言の下、『砕城の夜』が崩壊を開始する。そして、
「……!?」
晴子の翼は、匍匐部隊の一部の者たち同様、一瞬にして凍りつき塵となって消え失せた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!?」
翼を失い、地面へと墜落していく晴子。
それを薄れ行く意識の中で見届けた名雪もまた、気を失い大地へと沈んでいった。
あとがき
えー、ども神無月です。
また個人バトルに突入した神魔でありますが、今回はあゆVS佳乃と名雪VS晴子をお届けしました。
あゆ&名雪のレベルアップ、どうでしたでしょうか?
特にあゆは以前より数段パワーアップしています。いや、単に以前がめちゃめちゃ弱かっただけなんですがねw
ま、結果的にはあゆは勝負着かず、名雪は引き分けみたいな感じで終わりましたが。
では次回。さくらVS聖と祐一&ヘリオンVS美凪をお届け。ではでは。