神魔戦記 第百五十三章
「怒涛ニシテ傲然ナル狂宴(U)」
――07:00――
戦局は、予想以上の速度で推移していた。
しかも……悪い方向に。
「α-12部隊、α-19部隊壊滅! 駄目です、敵の規模が多すぎます……!」
「っ……敵の数と強さが予想以上ね。過小評価してたつもりはないけれど……まだ隠し種があったなんて」
次々と寄せられる情報はどれもこれも合同軍の被害ばかりだ。綾香は舌打ちし、デスクを叩く。
ここは敵の本拠地だ。これまで以上の戦力があるのは予想していたが、まさかここまでとは。
「やってくれるじゃない、シズク……!」
「でも既にアインナッシュに切り込んでいる部隊もあるのれす!」
シルファのその報告は、この状況下において唯一の光明だった。
「どこ!?」
「α-3部隊とα-24、α-36部隊れす!」
その三部隊のメンバーをざっと頭で思い返し、綾香はわずかに驚く。
うち一つはトゥ・ハートの部隊だが、残り二つは急遽参戦が決まったカノンとワンの客将が配置された部隊であったからだ
――07:03――
α-3部隊。
そこの部隊に配置された少女が、ただ一人悠然と歩いている。
その周囲だけがこの戦場から切り抜かれているかのように、少女に近寄る敵の姿はない。
否、近寄れないのだ。
「――さっさと片付けましょう」
スッと瞼を開いた少女――姫川琴音。ワンの客将として迎えられた彼女の力は、この乱戦の中においても郡を抜いていた。
アインナッシュの蔓が、シズク兵たちが琴音を殺そうと殺到する。
しかしそれらは剣に切断され、槍に串刺しにされ、矢に貫かれ、届く間もなく迎撃される。
琴音は一人。だが彼女の周囲には数多の守護者がいる。
中空に漂う剣、銃、槍、矢、槌、鎖、盾。武器という武器が琴音の周囲を踊っている。
琴音が踏みしめた土が不規則に動き、シズクの兵たちを飲み込み、押しつぶす。
それだけではない。彼女の周囲にはシズク兵のように生気のない者たちがフラフラと歩いている。
それは死体だ。この戦いによって散っていった兵士たちが、しかしいまなお自らの武器を持って琴音の周囲を守っている。
これが姫川の特殊能力『一定空間内意思強制付与』の力。
範囲内にある『無意思』のものであれば、例えそれが死体であろうと自由に操作する一族特有の能力。
その能力故に軍団戦闘において『擬似死霊使い』とさえ呼ばれた彼女らは、まさに地獄の行進を御する指揮者であった。
そしてその姫川の中でも琴音の能力は随一であり、だからこそ、
「邪魔です」
圧倒的な強さでシズク兵を叩き潰していく。
剣を折っても、槍を壊しても、死体を破壊しても無意味だ。
武器なんてそこら中に転がっているし、死体さえかしこに存在する。こと乱戦においては、琴音の能力の材料となるものには事欠かない。
だからこそ無尽蔵。彼女の周囲には尽きることもなく数千の武器と、数千の死体が蔓延っている。
「ああああああ!」
アインナッシュの中に隠れていたらしいシズク兵たちから魔術の一斉射が飛来する。
上級魔術クラスが二十近く。並の結界では到底防ぎきれない規模のものだ。
「近寄れないなら遠距離から、ですか。精神が破綻しているという割には常套手段を取るのですね。いえ、あるいは誰かが操作しているんでしょうか」
まぁ関係ないですけど、と琴音が呟いた瞬間、数多の剣が飛来した魔術を一発残らず切り裂いた。
鉄で出来ただけの、特殊な材質を使ったわけでもない剣で上級魔術を切り払うとなれば、相当な魔力付与がなければいけない。
それは優秀な剣士たちが行う基本的な行動だ。が、それは本来持っている一本のみで行うこと。
だが琴音はそれを複数同時に、しかも触れずに行っている。操っているそれらの武器のそれぞれに強大な魔力が付与されているのだ。
総魔力量も尋常ではないが、何より異常なのは魔力コントロール。
彼女ら姫川が幾度となく魔族に追われながらもそれを撃退し生き抜いてきたのはこの力があるからこそだ。
それ故に、彼女はこの戦場において誰よりも強かった。
「……?」
しかしその眼前に一人の老人が経っていた。何人とて近づけなかった彼女の領域に、あっさりと。
「ほっほ」
ここにクラナドの人間がいれば、すぐさま誰か理解しただろう。
幸村俊夫。
クラナド最強の老兵がいま、五千の繰り手の前に立ちはだかる。
――07:05――
地上を高速で滑走する者たちがいる。
α-24部隊。その先頭を担うは速術機甲(部隊。走行機甲(をかき鳴らし地上を走破する彼らの動きに、誰もが追いつけない。
「さぁさぁさぁ! 行くぜ野郎ども! 敵を払いのけ己の道を作り出す! それがオレたち速術機甲(部隊の生き様だぞ!」
「「「「「「了解(!!」」」」」」
浩之の啖呵に部隊の者たちは気合の言葉を返す。
良い返事だと思う一方で、真横に並んだ志保が目尻を釣り上げ怒りの声を上げる。
「もしかして『野郎ども』ってあたしたちも含まれてないでしょうねヒロ!?」
「どうだろーな?」
「ちょっとー!?」
「ふ、二人ともいまは戦闘中なんだから落ち着いてよぉ〜」
「そうだよ。ほら、正面から来る」
あかりと雅史に注意され憮然とする志保に苦笑しつつ、浩之は前方に展開するシズクの兵士たちを見やった。
正面にいるのは……ざっと五百人前後、といったところだろうか。対して先頭を突き走る彼ら速術機甲(部隊の人数はわずかに十三名。
トゥ・ハートの四大部隊はどれも規模で言えば小隊から分隊レベルの少数精鋭だが、その力は普通の大隊・中隊を遥かに凌駕する。
「フォーメーション・ガンマシックス!」
「「「「「「了解(!!」」」」」」
「遅れるんじゃねぇぞ!」
告げた瞬間、浩之の姿が消えた。
否、尋常ではない加速のまま単身五百の人の壁に突っ込んだのだ。その後方に追走する形でマルチ、更にその左右後方に二人が従う。
通常のものより限界速度が著しく上昇されている部隊特性走行機甲(が唸りを上げ、四人は風となる。
放たれる魔術や投石などを尋常ではない機動で回避する。マルチ他、二人の兵士も同じ動きで回避しているため部隊の錬度の高さがわかる。
浩之が裏神殺し・魔銃『紫貫』を構える。銃口と銃身の側面から噴出す光が、徐々に雷光へと変化していく。
第二形態の属性融合。そこから放たれるは圧倒的な雷の奔流。刹那の間に大気を奔る稲光は瞬く間にシズク兵を焼き払い、その中央で、
「雷時雨」
拡散した。
爆発点から上下左右前後、全方向に雷が四散する。その強烈な雷に焼かれ吹き飛び穴の開いた中央に四人は飛び込み、
「おぉぉぉらぁ!」
浩之が右手に持つ、同じく雷光をその刀身に浴びる魔槍『紅牙』を振るう。
帯電した雷が爆発し、薙ぎ払われた大地がシズク兵もとろも円状に粉砕された。
だが足が千切れようが腕が斬り飛ばされようが、絶命しない限りは動きを止めないシズク兵はそれでもなお浩之の周囲を取り囲もうとする。
しかしそれをマルチたち三人が許さない。
浩之をカバーするようにマルチが熱を帯びた拳で薙ぎ払い、剣を持った二人の男女が切り払う。
そしてそこへすかさず残りのメンバーからの援護射撃が入る。
速術機甲(部隊は浩之の従える三人以外は基本的に中〜遠距離攻撃を主体とする面々だ。
志保以下二名は投擲武器、雅史以下二名は銃器、あかり以下二名は魔術。
つまり速術機甲(部隊の基本スタイルは浩之たちが突っ込んで他の面々が援護するというものである。
それがフォーメーション・ガンマ。
……だが、たかが援護と侮るなかれ。彼ら彼女らの『援護』はそれ自体が必殺だ。
「シックスに応じ、周囲一帯を制覇(するよ」
「「了解(」」
あかりの左右にいる男女の神族が応える。どちらも神岸縁の者でその実力はあかりの次に優秀な二人だ。
その三人が、力を解放する。
両手を押し出し、指で複雑な軌道を描きながら、
「『光の檻』を展開する――残留」
「「残留」」
シュカ、というなんとも形容しがたい奇妙な音と共に、光の線が奔った。
それらはまるで鋭利な刃物のようにシズク兵たちを瞬時に切断していく。だがこの程度の力なら光魔術でも、あるいはその他の魔術でも可能だ。
神岸の力は……この後にある。
光が――消えない(。
それに触れればやはり刃物のように切断される。その光は力を残したまま、まるで網目のように空中に存在し続けた。
神族四大名家、神岸。その能力は特殊な光属性――『残留』。
言葉通り、力をその場に残す能力。
いまのようにあかりたちの手元から放たれた光は、彼女らの意思によってその場に残留し続ける。
細い糸のように放たれた無数の光はその軌跡に力を残し、まるで浩之たちの周囲を守るように網目に展開していた。
殺到するシズク兵を切断しつくす。しかしそれも数秒、この光の異常性に気付いたシズク兵たちが距離を取り初めていた。
やはり、これまでのシズクとは違い知性に近いものを感じた。あるいは誰かが彼らを統率しているのかもしれない。
しかし関係ない。この力の利便性の高さこそが、彼女ら神岸を四大名家としている力なのだから。
「『光の檻』の座標残留のみ解除、ベクトルを変更する――解除」
「「解除」」
あかりたちが両手を広げる動作をする。するとそこに残っていた光が腕の動きに応じるように、左右に広がった。
その挙動はまるで鞭だ。腕の動き連動ししなる光の線は、しかし力をそのままに振るわれ、浩之たちの周囲にいたシズク兵を寸断した。
大きな穴が開いた。もはや浩之たちを止める者はいない。
「突っ込むぞ、続け!」
浩之たち四人がアインナッシュの麓に向かって疾走する。地中から木の根が出現し浩之たちに襲い掛かるが、四人はそのことごとくを切り払う。
「隊長。後ろの連中まったく追いついてませんけど、ここまで先行して良いんですかね?」
「どうでも良いぜそんなこと。さっさと死徒二十七祖を斬りたいもんだ。ハハッ!」
「ふ、二人とも不謹慎ですよっ!」
眼鏡を掛けた男と、剣を振り回す女、そしてそんな二人を注意するマルチの会話を後ろに聞きつつ、浩之は口元を釣り上げる。
「ライナの言うとおりだ。俺たちは突っ込むのが仕事だしな!」
「さっすが隊長! 話が早いぜ! オラオラオラァ!!」
ライナ、と呼ばれた女剣士の剣が炎に包まれる。それを振り回し大地に突き刺した途端、大地が爆発し連鎖するように地中を伝ってアインナッシュの麓まで炎が奔った。
「隊長もライナも好戦的に過ぎますね。……マルチさん」
「はい!」
眼鏡の男が剣を振るえば風が、マルチが拳を振るえば熱が、その二つが重なり突き進んで更にアインナッシュの手近な木々が破壊されていく。
そこへ浩之が突っ込む。ギャリギャリギャリィ! と走行機甲(で滑り込んだ浩之は『紅牙』を片手で回転させ、
「雷桜ぁ――――ッ!!」
瞬間、迸った雷光が木々と大地に突き刺さり周囲一帯を焼き尽くした。
薙ぎ払う雷は花弁のように細分化し、舞って、触れた対象を根こそぎ破壊する。
そう、それはまるで雷の桜吹雪。
見る者を魅了し、触れた者を死にいざなう妖美な蒼き桜だ。
「まだまだこんなもんじゃないぜ、シズク!」
そしてなお、彼らの突進は終わらない。
――07:09――
α-36部隊は大進撃を続けていた。
「魚鱗陣を展開! 先頭は俺たちが担う! いくぞ、アイシア! 美春!」
「うん!」
「はい!」
部隊を率いているのは朝倉純一。
それに付き従うサーヴァント、キャスターのアイシア、そして魔導人形の天枷美春が彼の指示を受け爆発的な力を見せ付けている。
元々彼はこの部隊の指揮官ではなかった。
だが配属されていたトゥ・ハートの部隊長が倒れ部隊の統制が取れなくなったとき、それを纏め上げたのが純一だった。
彼は数千人規模の軍団戦闘の経験は一切ない。ましてやそれの指揮など皆無。
しかし純一はこれを成し遂げていた。
部隊の錬度が高いことや、比較的従順な魔導人形で過半数を占められた部隊であるとはいえ、彼の指揮はまさに圧巻だった。
だがそれでもなお、純一は歯噛みする。
「くそ……反応が合わない……!」
純一は自分が指揮官向きだとは思っていない。
確かにいまここにいる者たちを純一は指揮している。その指揮の的確さ、状況判断能力や処理に関してはこの場にいる誰もがもう認めている。
けれど純一だけは違った。思い描くような指揮を取れないのだ。
まず、十数人規模の戦闘と数千人規模の戦闘では舞台の広さがあまりに違いすぎる。
そのために判断、認識、対応、そのどれもにラグが生じ、上手く捌ききれない。
加えて、部隊の足並みが揃わない。指揮能力と統率力は違う。純一がどれだけ指揮が優秀であろうとも、統率されていない部隊ではそれを完全に再現などできはしない。
だがそれは純一視点の話。普通に見れば、十分に純一の下に統制されているように見える。
つまり、純一の考える完全な指揮とはこれの遥か上のレベルにある。
――もっと、もっとだ。
ズキン、と眼球が痛む。
王都ダ・カーポでの戦いのときのような痛み。おそらくは魔眼が何かに反応しているのだろう。あるいは既に何か力を発揮しているのか。
『ごめんね。ボクもあまりよくわからないんだ、夢現の魔眼に関しては』
カノンの王城で再会したさくらは不甲斐なさそうに言った。
『上級魔眼の中でも一番不鮮明なのが夢現の魔眼なんだよ。他者の夢を見る、とか夢を共有出来るとか、そういった能力は知られているけど、それはどれも片鱗って言われてて実際の能力がどういったものなのかは過去どの所有者も結局わからなかったみたい』
次いで、真剣な顔で彼女は忠告してきた。
『気をつけてね。痛みを感じるってことはきっと何かしらの力を使っているんだと思うから……飲み込まれないようにね』
飲み込まれる、とはどういうことなんだろうか。魔術に疎い純一にはよくわからない。
だがそれが上級の……虹クラスの魔眼を持つ者の宿命と言うのなら、純一はそれから逃げるつもりはない。
そもそも大した力も持たない自分だ。よくわからないその効力が、何かしら良い方向に向いているのであれば能力がわからずとも関係ない。
「純一! 敵の集団が来るよ!」
「あぁ、視えてる。左だな」
「え……?」
何故かアイシアが驚く。よくわからないが、純一は魔導人形たちに左方向に一斉射撃を命じた。
すると左側……誰もいなかった(はずのその方向に、突如シズクの集団が現れた。
それは奇妙な光景だった。まるでわざわざ撃たれるために出てきたかのような、そんな動きだった。
アイシアは純一が未来視の能力を持っているのでは、と一瞬考えたがそれだけでは説明のつかない何かがある。
一体純一の本当の力とはなんなのか……?
「聞いてたシズクの動きと違って随分統制が取れてるな。誰かが指揮してるんだろうけど……そいつを叩けばもっと有利に進められるな、この戦い」
「そうですね! さっさと見つけてガツンとやってしまいましょう! カノンに恩返ししたいですしね」
「だな。ついでに借りを返すのも悪くない。……って、どうしたアイシア?」
「あ、ううん。なんでもない」
いけない、と意識を戦闘に集中させる。
一人でも多くの人を救い出す。
それが英雄アイシアの目的なのだから。
――07:13――
予想以上に兵力を消耗してはいるものの、作戦自体は順調で敵部隊はα部隊の応戦のためにアインナッシュ外円上に展開している。
特に既にアインナッシュの麓まで到達している三つの部隊の活躍は大きい。暴れてくれれば暴れてくれるだけ爆撃による洗脳された仲間の被害は少なくて済む。
上空を行くエルシオン級三隻はシズクの攻撃を結界組の力でどうにか防御しつつ、アインナッシュの真上へ移動していた。
理絵とユーノ、そして何より伊月の結界は強力で、いまのところ船体に損傷らしい損傷は見受けられない。
敵空戦戦力もこちらの空戦部隊の奮戦によってどうにか抑えられている。
いよいよ状況はフェイズツーからフェイズスリーに移行されようとしていた。
「全砲門射撃準備! 兵が奮闘して稼いでくれている時間を無駄にしないためにも、急ぎなさい!」
「「御意!」」
ささらの号令でエルシオン級に搭載されている魔力砲撃呪具『怒号砲』が船体のかしこからせり出てきて、一斉に真下を向き充填を開始する。
ささらもわかっている。
シズクが精神支配した者たちをアインナッシュにまだ隠していた場合……それもろともこの爆撃の炎は焼き払うだろう。
しかし、全てを救うことなど出来はしない。救うことだけを考え新たな犠牲を生み出すわけにもいかない。
出来る限りのことはした。もし、アインナッシュの中にまだ昔の仲間たちがいるのなら……作戦立案者として、ささらは謝ろう。
――ごめんなさい。あなたたちの無念は、私がきちんと背負って生きます。
だからいまは……目の前の敵を倒すためにささらは指示を出す。
「砲手魔導人形はタイミングと射撃点をシルファさんに同調! 操舵手、アインナッシュの直上まであと何秒ですか!?」
「十二秒……いえ、十秒です!」
「各『怒号砲』充填率八十パーセントを突破!」
「カウント!」
「八、七、六、五……」
「怒号砲の充填率百パーセント! 全砲門、射撃準備良し!」
「四、三、二……」
「一! アインナッシュ直上到達!」
「全砲門一斉射撃!!」
「一斉射撃ッ!!」
シルファのデータリンクが各魔導人形に伝えられ、エルシオン級三隻、合計百二十六門もの怒号砲から一斉に魔力砲撃が放たれた。
それはまさしく豪雨と表現するのが相応しい怒涛の爆撃。降り落ちた魔力の乱雨は爆心地から巨大な爆炎と土煙を立ち上らせた。
「報告! アインナッシュの損害は!?」
「計測中です……出ました! って、嘘……!?」
「なに!?」
「そ、損害率五パーセント未満……! アインナッシュ及びシズク兵の停止を確認できず!」
「五……!?」
そんな馬鹿な、と綾香やささらが思うそのモニターの向こう、土煙の晴れたアインナッシュの姿は、その言葉通り大した変化は見られなかった。
木々が折れ、燃え、大地が捲りあがったりしているものの、何の影響もないとばかりにすぐさま新しい木々が立ち並び大地さえ修復していく。
百二十六門もの怒号砲を持ってしても、アインナッシュの再生力の前では無意味に等しかった。
「さすがは死徒二十七祖の十位より上、ってことね。こんな魔力砲撃じゃちっとも鈍りはしないってことか……」
綾香は呻き、踵を返した。
「εチームとして出撃準備をしてくる。ささら、後はお願いね」
「はい」
ブリッジから出ていく綾香を見送り、ささらは小さく唇を噛む。
アインナッシュ、もといシズクの力はこちらの目算以上。このまま行けばεチームの突入もほぼ間違いないだろう。
フェイズスリーで全てが終われば、と考えていたのに……。
と、ささらは既にフェイズフォーへの移行をほぼ確信していた。
それはいくらδチームの四名が巨大な力を持っていようとも百二十六門もの怒号砲が効かない相手に通じるとは思えなかったからだ。
だが彼女は数秒後にその思考を恥じることになる。
いまこのエルシオンの甲板上に立つ四人の力は、そんな容易い『現実』というものを切り裂く存在なのだと。
――07:14――
『アインナッシュ及びシズク軍、依然行動を継続中。怒号砲による制圧砲撃による対象の損害率五パーセント未満。
よってδチームは即時攻撃開始、追加攻撃をお願いします』
「了解しました」
通信に答えたのは立川郁美だった。
δチーム。大規模魔術部隊。そこに名を連ねる四人は、いま横一列に並んでいた。
コミックパーティー王国女王、立川郁美は杖を手に鋭利な視線を眼下に向け。
トゥ・ハート王国女王、来栖川芹香は相変わらずのとろんとした瞼のまま真っ黒な分厚い本を抱え。
あの『白河の魔女』と恐れられている白河さやかは、暢気に「うーん」と伸びをしながら上空の風を浴び。
そしてカノン王国の王、相沢祐一は、新たな剣『マージ』を鞘から抜き放ち。
「それでは……始めましょうか」
郁美が言った瞬間、その四人から尋常ならざる魔力が立ち上った。
甲板にいた者たちだけではなく、船内にいた者、空中で戦っている者、そして地上で戦っている者たちですら感じれるほどの圧倒的な魔力。
果たして人一人が展開出来る魔力量なのか、と疑いたくもなる強烈な魔力を放つ存在が、四人並んでいる。
その光景はまさしく圧巻。
間近でその様子を見ていた甲板に立つ者たちの中には、自分たちに向けられたものでないにも関わらず気を失う者まで続出するほど。
「んじゃ、まずは新参者からやらせていただきましょー♪」
トトッ、と数歩前に出たのはさやかだった。
彼女はゆっくり両手を掲げる。すると滲み出していた魔力がその上に集約していく。
「第二の魔宝――」
さやかの静かな言葉に、世界が軋んだ。
まるで禁忌の単語を口にし世界が怯えるかのように空気が重く、そしてギチギチと悲鳴を上げる。
ゆっくりと、しかし確実に彼女の手の先に何かが顕現しつつあった。
それは蒼白。雷光の如く戦慄き光る蒼と、雲のように穏やかに輝く白の模様を浮べた、一本の棒だった。
ただ直線ではなく、先端と江尻が妙に歪んでいる奇妙な棒だ。
それを手に取ったさやかは感触を確かめるように握り締め、三度ほど回転させると大きく振り上げる。
背を反らし、力を溜め込むように振り上げた棒を振り下ろすその一瞬前に――さやかは、その『魔宝』の真の名を呼んだ。
「――ミョルニル!!」
瞬間、大空が割れた。
空を割り、雲を割り、漆黒の物体が降り落ちる。
それはあまりに巨大。この巨大なエルシオンの船体さえ足元にも及ばないような、まるでそれそのものが別の『空』なのではと思えてしまうほどに。
その漆黒の物体は、さやかの棒に連動して動いていることを祐一たち三人は悟った。
そう。その蒼白の物体は、棒なのではなく……『柄』だったのだ。
おそらくそれは武器。そしてその形状は無理を通せば『槌』に分類出来るかもしれない。
槌とは柄を振り下ろしその慣性を利用して頭部の重りで対象を打ち付ける武器だ。
ではこの軽い柄と、あの尋常ならざる巨大な頭部が連動しているとすればどうなのか?
答えは簡単。巨大な頭部は、その質量からは到底考えられないほどの慣性と速度を得て、大地を、そこに生えるアインナッシュを打ち付ける。
大破壊の音が木霊した。いや、それはまさしく大地の悲鳴だったかもしれない。
数千万トン近い質量の物質が超音速を突破して降り落ちたときの衝撃は、数千億トン以上にもなる。
それはさながら巨大な隕石が降り落ちたかのように大地を抉り、木々を叩き潰し、大規模な地震を起こし、土砂を巻き上げ、何もかもを破壊した。
「なっ……!?」
驚愕の声は誰のものか。
怒号砲の一斉射撃でさえどうも出来なかったアインナッシュが、なんの魔術でもないただの物質にその半分ほどを損壊したという事実。
それに驚かず何を驚けと言うのか?
「ま、こんなところかな?」
魔宝『ミョルニル』を消失させたさやかの顔に疲れはない。彼女にとってこの程度の力は造作もないことなのだ。
さもありなん。『白河の魔女』とはこれら『魔宝』を使うためだけの魔術回路。
特化したその身において、たかが主たる『魔宝』一回の行使で疲労するなんてありえないことなのだ。
「でもまぁ、ミョルニルは史上最強の物理武装。威力はともかく……死徒二十七祖にはちょっと物足りなかったかな?」
さやかの言う光景は、眼下。
その総面積の半分以上を壊滅させられたアインナッシュだったが、すぐさま再生が始まっていた。
ミョルニルは尋常ならざる破壊力を持った武装だが、何の神秘も帯びてはいない。それでは打撃を与えてもすぐに再生されてしまうだろう。
だがそれはさやかの領分ではない。とりあえず大きな痛手を与えてアインナッシュの動きを鈍くしただけで彼女の役目はもう十分だった。
「んじゃ、あとはお任せしま〜す」
「あぁ、任せろ」
次に動いたのは祐一だった。
彼の背には既に漆黒と純白、双対の翼が展開し、その瞳は先程の光同様の黄金が浮かび上がっている。
右手に持つは仲間たちが創ってくれた至高の剣『マージ』。
宿し繰る魔力の流れは、驚くほど軽く、そして見事なまでに強固になっている。
しかしそんな効力よりも彼の心を温かく満たすのは、仲間たちの信頼とその想いだ。
そしてそんな仲間たちを操り、彼らの意思を侮辱するシズクを、祐一は決して赦しはしない。
グッと剣の柄を握り、急速に魔力を集約していく。
それはもはや暴風と言っても過言ではない集束だった。形なき魔力があまりに莫大すぎて風を生み出している。
いつもと同じだけの魔力を込める。だが『マージ』は半分の魔力で倍の力を生み出す剣。なればその威力は――実に四倍以上。
剣を振り上げた。そこに躊躇はない。
確信している。祐一が信頼しこれまでを戦い抜いてきた最大の技を持ってしても、この剣が壊れるはずがない、と。
性能がどうとか効力がどうとかではない。
それこそが彼と――仲間との絆なのだから!
「“光と闇の二重奏( ”!!」
光と闇。対極の波動が激突、集束し、消失。そして刹那を経て無が有へと転じ、ありえざる力を発動する。
瞬間、轟いた撃音はエルシオンの船体さえ奮わせた。
祐一から放たれた対なる漆黒の闇と純白の光。それはこれまでの比ではなく、計算上の数値を超える圧倒的な力を見せ付けた。
アインナッシュに降り注ぐ“光と闇の二重奏”は勢いを止めず大地さえ消し去っていく。
対消滅の力を帯びる“光と闇の二重奏”は大地に激突しようと爆発したりはしない。進行上のものを全て無に返すその力は、大地を抉り続けアインナッシュの根という根を滅ぼし尽くしていく。
その威力はあまりに絶大。アインナッシュの防御などもはやあってないものであり、何物に侵されることもなくその破壊を撒き散らす。
……だが、範囲はさやかのミョルニルに比べてあまりに狭い。
アインナッシュの成長を止めるという意味で根を貫いたことは大きな成果だが、これでアインナッシュを無効化するには攻撃範囲が狭すぎる。
だが良いのだ。さやかと同じく祐一でどうこうしたいわけではない。
さやかが広範囲に打撃を与え、祐一が対消滅の力で再生力を停滞させる。その後は、残りの二人に任せれば良い。
「頼む」
「はい。任されました」
下がる祐一とすれ違うように前に出た郁美は、神殺し・魔杖『ブレイハート』を構え、告げる。
「ブレイハート。第三形態第二へ以降。出力は最大。加減はいりません、本気で行きますよ」
「Ok. Brahart standby」
神殺しによる大規模魔術の行使。特に遠距離からの火力砲撃となると、最適なのは第三形態の第二だ。
最終形態は長期戦も視野に入れた全能力を平均的に全て向上させるシステムだ。
しかし第三形態の第二は一発のみに全能力を注ぎ込むというパワー重視の形態。近付かれれば危ういが、一撃の威力で言えば神殺しのどの形態よりも上なのだ。
第三形態特有の強い光を各所から噴出させたブレイハートを構え、郁美は眼下を見やる。
「そう、全力で」
構えたブレイハートの杖の先、そこに光が集約し始める。
それは純粋な白い光……ではない。どこまでも眩く、そしてどこまでも清らかな真の光。
黄金。
神族が扱う光属性。稀に人間族にも生まれるという光属性だが、彼女の扱っている光はそんなレベルの話ではない。
それはまさしく『神』の光。過去、人間族を根絶やしにしようとした数多の神が振るってきた至上の力。
だがそれを真似て、同じ域に辿り着いた魔術師がいたのだ。
古代魔術の創始者……第二星界時代、全ての魔術の生みの親となった一人の偉大なる魔術師が残した数多の古代魔術の、その一つ。
光属性の古代魔術において最も知られている『裁きの聖十字』さえ上回る、世界最高位の光属性古代魔術。
その名は、
「“神威の滅光( ”!!」
昂然と告げた郁美の言葉を具現化するように、黄金の太陽は膨張し、その圧倒的な光の力を持ってアインナッシュに降り注いだ。
その光を帯びた瞬間、魔の木々は腐り、蒸発し、塵と消えていく。
神威の滅光。
文字通り、神の光は全てを滅ぼす。特に闇に属する者であれば、その光の力は許容出来ぬ死の閃光となる。
アインナッシュは、死徒だ。闇に属する魔族である。
この光を帯びた途端、ミョルニルからのダメージを再生しようとしていたアインナッシュの動きは鈍った。否、さらに腐敗していく。
だがそれが本命ではない。いまなお光を溢れ出しているこの黄金の球体。小型の太陽とも言えるこれこそが、この魔術の『本体』なのだ。
「おおおおおお!」
そしてそれを、郁美はアインナッシュに向けて振り落とした。
大きさはさほどでもない。子供が両手で抱えられる程度の大きさだ。落ちていくスピードも、ミョルニルに比べれば止まっているとさえ言えるかもしれない。
だがゆっくりと、荒れ果てた地表に辿り着いた黄金の球体は、
「!」
ゴッ!!! と爆発的に巨大化し、黄金の光を持って全てを包み込んだ。
その光は『次元崩壊』の光。中に孕んだいかなるものを消し去る、対消滅と並ぶ大いなる力。
光が消えた先には……半分以上を枯らせたアインナッシュの無残な姿があった。
三人の攻撃でおよそアインナッシュの面積の半分が完全に死滅した。再生の兆しさえもはや見えない。
だが半分も残っていれば、一時間もすれば完全に再生するだろう。だが一時間では足りない。もう少し時間を稼ぐ必要がある。
そして最後に、黄金の光が消え去った甲板で動きを見せたのは芹香だった。
芹香が小さな声で言う。
「……やりましょう、アヴアヘル」
『ふむ。面倒なことだな』
そんな皮肉げな男の声は祐一のものでも、ましてやさやかや郁美のものでもない。
それは、そう――その芹香が抱える大きな漆黒の書物から聞こえていた。
アヴアヘルの魔典。それがその書の名だ。
この世界に存在する闇の古代魔術を一つ逃さず網羅した自意識を持つ魔導書。
だが実際は、魔力の素質の高い子供にとり憑き、擬似的に新たな生を得て魔導を極めようとした魔術師の成れの果てだ。
一部の魔術師が悠久の人生を得るために吸血鬼になったようにアヴアヘルという魔術師だった男もまたこのような方法でそれを手にしようとした。
だが甘かった。アヴアヘルは生まれたばかりの芹香にとり憑こうとしたが、逆に芹香に支配されてしまったのだ。
簡単な話。長い人生と数代の憑依を経て蓄積されたアヴアヘルより、生まれたばかりの芹香の方が魔術師の格が上だったというだけのこと。
だからいま、芹香という主の下にアヴアヘルという魔典は存在する。
『しかし死徒が相手とは……あぁ実に面白い。よし芹香、この私を使用することを許可する。存分にやれ』
「……」
『あぁすまん私の言い方が悪かっただから捨てようとするな!?』
「……冗談はほどほどにして、始めましょう」
『ほぉ、冗談だったのか。お前とはそれなりの付き合いだったがいまのは割と本気に聞こえたぞ――ってわかった始めるから破こうとするな!』
まったく、というアヴアヘルの嘆息と同時――芹香の真上に巨大な漆黒の魔法陣が出現した。
さやかと祐一、郁美たちでさえ思わず目を見開く複雑怪奇な魔法陣。
従来の円形の魔法陣とも大きく違う、それはまるで『樹木』のような魔法陣だった。
ならば何故それを魔法陣だと判断できたのか……それはもはや直感としか言いようがない。
それは、七十二の過去。
それは、七十二の現実。
それは、七十二の未来。
樹木から伸び出ずる枝は細々と分かたれ、七十二の道を作っていた。その枝の先から、更に円形の魔法陣が出現する。
『先に攻撃をした三方、真に見事であった。いやはや、やはり世界とは広く凄まじいものだな。芹香と同等の存在がこんなにもいて、揃うのだから。
きっともっと広くを見渡せば、更に同等、あるいはそれ以上の存在がいるのだろうな。うむ、これだから死ぬのは惜しい世界よ。
ならばこそ、我らの最大をお見せしよう。
三人の雄姿に応えるために。そして眼下に広がる愚かな吸血植物の群れと愚劣な支配者気取りの男に見せ付けるために。
さぁ芹香。これを告げよ。我が生涯で得た古代魔術の最強を顕現させよ。なにお前なら容易だ。何故なら私が支配されるほどなのだからな』
まるで歌うように喋るアヴアヘルに、芹香は小さく頷いた。
そっと魔典から手を離す。しかしある項を開いた魔典は中空に浮かんだまま、そこに綴られた文字を読むのを待っているかのようだった。
だから芹香はその文字を読み上げる。力ある単語の羅列を、手を掲げ、祈るように、捧げるように、その細くも小さな声で――。
「“七十二の暗黒舞踏( ”」
樹木の枝に浮かぶ七十二の魔法陣から、暗黒の光が輝いた。
尋常ではないほどに凝集した『闇』は、もはや地獄を具現化していると言っても過言ではないだろう。
闇属性を持つ祐一や郁美も知らぬ古代魔術。しかもその濃密に過ぎる闇を見て、驚きを禁じえなかった。
これほどの闇。はたして魔族でもない人間が扱えるものなのか? と。
だが芹香は――否、芹香とアヴアヘルはこれを御する。無駄に魔力が散ることもなく、暴走することもなく、ただ淡々と、些細な作業のように。
ピッ、と芹香が右手の指を立て……そしてそれをスッと下ろした。
それを号令とするかのように、七十二の魔法陣から闇の奔流がアインナッシュに降り注いだ。
ゴバァ!! という怪音は果たして何によるものか。
闇に撃ち抜かれた部分は根こそぎ消失していた。郁美にはわかる。この術もまた『次元崩壊』の力を兼ね備えている。
郁美の使った“神威の滅光”が一点集中破壊だとすれば、芹香の“七十二の暗黒舞踏”は複数拡散破壊と呼べるだろうか。
事実郁美の攻撃がまったく届いていなかった部分に集中してその攻撃は降り注いでいる。
その光景はまるで地獄から召喚された悪魔が歓喜の声を上げているかのようで、また大地から漆黒の柱が天に昇っているかのようでもあった。
『ふむ。さすがは芹香』
「……ありがとうございます」
アヴアヘルの賛辞に芹香は小さく微笑み、術が消えていった。
――07:21――
ささらは呆然としていた。
いや、ささらだけではない。ブリッジにいたクルーの大半が……魔導人形でさえ、同じ様子だった。
たった四人。
そう、たった四人の攻撃だ。それがもたらした結果が……これだ。
大地を陥没し、中央を再生不能なまでに穿たれ、更に広範囲を消滅され、残っていた部分も闇に貫かれたアインナッシュ。
「……た、対象の損害率は八十パーセントオーバー。自己再生が働く様子も見受けられません」
報告しているクルーも信じられないというように声を震わせていた。
自国の女王である芹香の力は知っているつもりだった。だがそれはただそう思いこんでいただけらしい。
芹香でさえ、あんな力を持っているとは知らず……そして残りの三人にしろそれに負けず劣らずの力を見せ付けていた。
対消滅の力をその身に宿す半魔半神の王、相沢祐一。
忌み名として『白河の魔女』を持つ恐れられた系譜、白河さやか。
人間族最高の内包魔力量を持つとされる上に先祖還りで光と闇の両属性を操る、立川郁美。
そして……呪いの魔典を生まれてすぐに支配してしまった規格外の女王、来栖川芹香。
誰一人例外なく、怪物だった。ささらなど足元にも及ばぬ、死徒でさえ蹂躙する正真正銘の『天才』だった。
けれどささらたちの胸に去来するのは恐怖ではなく……希望の光。
数で負けているからどうなのだ。状況が劣勢だからなんなのか。
これだけの力を発揮する存在が四名もいて、一体何を恐れることがあるだろう?
勝てる。
この時この瞬間、四人の攻撃を見た合同軍の面々は皆そう考えた。
――07:23――
アインナッシュはほぼ行動を停止していた。
α部隊に対して行っていた蔓や根による攻撃もいまは動きを顰めている。自己再生に全ての力を注いでいるらしい。
しかし……あの四人の攻撃を持ってしてもなお、シズクの動きは止められなかった。
どうたらあれだけの爆撃を受けながら、月島拓也は未だに健在のようだ。
だとすれば合同軍としてやるべきことは一つしかない。
フェイズスリーからフェイズフォーへの移行。即ち……εチームの出撃だ。
アインナッシュが動きを止めたいまこそ好機。
四人の働きに応えるためにも、必ず月島拓也を見つけ出し、倒す。そのために、
「んじゃ、行きましょうか」
綾香の宣言と同時、εチーム……十四名の精鋭たちが爆撃中心地点へ降下していく。
あとがき
……相変わらず長ぇ。
というわけで、どうも神無月です。
本当は一話一話の文章量をこの半分に抑えたいんですけど、いやはや……なんでこんなに膨らんでしまうんでしょうね〜(汗
さて、今回は三つの部隊の活躍と、四人による大規模魔術攻撃でした。
アインナッシュフルボッコですね。っていうかアインナッシュを滅ぼすだけなら四人があと数回攻撃すれば出来るでしょう。
それをしないのは仲間の救出のためであるわけですけど……まぁアインナッシュに攻撃をしているα部隊なくしてこんな余裕を持って攻撃は出来ない話なんですけどね。
祐一と郁美はともかく芹香とさやかの攻撃らしい攻撃は今回が初めてでしたね。
以前良和が「遠距離戦ではさやかが最強」と言った理由はまぁこんな感じです。そもそも『魔宝』ってなんぞや? っていう質問はなしの方向で。
あと一話か二話でさやかの力に関しては全部明らかになりますんで。
芹香は典型的な魔術師です。魔力量こそ郁美には及びませんが、総合的には同等であり、魔術的な面だけで言えば両者祐一を上回ります。
リーフの王はどいつもこいつも強いですねぇまったく(何
ではまたー。