神魔戦記 番外章
「忍び寄る戦禍」
夜。
通常なら静かなこの時間帯も、この国においては真逆に近い。
王国ウォーターサマー。
魔族と人間族の国であるこの国では日が落ちてからが最高潮の活気に溢れる。
神族憎し、という共通点を持つ者たちが集まり建国されたこの国では、周囲の国家のような魔族批判は欠片もない。
街の酒場では魔族と人間族の男が肩を抱き合い歌を唄い、道端では魔族と人間族の女が談笑し、公園では魔族と人間族の子供が遊んでいる。
ここはそんな国。
だが一見平和そうに見えるこの国も、いろいろな事情を抱えている。
王都ウォーターサマー。
そこにある王城でいま一つの会議が行われていた。
議題は一つ。
隣国ダ・カーポと本格的に戦争を開始するか否か。
そしてその会議のため、この場にはウォーターサマーを統治する四家の代表が集結していた。
人間族の白河家、稲葉家。
魔族の水瀬家、柾木家。
この四つの血筋により統治されてきたのがこの国だ。
いまでこそ『王国』と名乗ってはいるが、そんなものは名目上のものでしかない。
そもそも王国を名乗ったのは他国に舐められないようにするためだけであり、現在国王の座にいる者も所詮お飾りに過ぎない。
内情は昔と変わらず、ウォーターサマーの実権はこの四家が取り締まっていた。
会議室には大きな円卓。その四方を結ぶようにして、いま二人の少女と二人の青年が座っている。
そしてその様子を伺うように『飾り』の王が隅に座っていた。
「え、えー……ではこれより四家による会議を始めたいと思います、はい」
そして会議の進行役もまたその王であった。明らかに肩身を狭め、顔色を伺うように四家の当主を見渡している。
それだけでいかにこの王がただのお飾りであるかが伺えた。
「おれは断固戦うべきだと思う」
まず最初に言い出したのは稲葉家の当主、稲葉宏だった。
「華子はおれの姉のような存在だったんだ。それが殺されて……黙ってなんかられるか」
七条華子は稲葉家縁の人間であり、分家筋でありながら次期当主とさえ呼ばれていた秀才であった。
が……その華子は二週間ほど前、稲葉の領地内で死んでいるのが発見されていた。
的確に心臓を一撃。それは実に鮮やかとも見れる死体だった。
「決め付けは良くないよ。それ、本当にダ・カーポのせいだなんてわかってないんだし」
だがそんな宏に反論するように口を出したのは白河さやか。白河家の現当主だ。
「あんただって父親殺されてるだろ。なんでそんなこと言えるんだ」
元、白河家当主の白河律。これまた同じく白河家の領地内で殺されていた。が、
「だーかーらー。それだってダ・カーポの人が殺した、なんて証拠どこにもないでしょう?
わからないこと決め付けて戦争に突入ってどうなの、って思うわけよ」
そう。四家にそれぞれ縁のある者が連続で殺されているが、それら全てダ・カーポの者が犯人であるという証拠はどこにもない。だが、
「ふん。白河家はダ・カーポ王家の白河の分家筋だからな。萎縮してんじゃないか?」
「むっ……」
声は宏の真反対から。
そこでは腕を組み顔を伏せている男がいる。その男はゆっくりと顔を上げると、さやかをはっきりと睨みつけ、
「違うのか? 『白河の魔女』。捨てられたとはいえ、白河家の血筋であるのは変わりないからな。本家筋に手を出すのが怖くなったんじゃないか?」
「……」
柾木良和。
由緒ある『鬼』の一族である柾木は、純粋な戦闘力なら四家でも随一だろう。
だが本来彼は心根の優しい人物だった。……彼女が殺されるまでは。
「良和さん。さすがにそれは言いすぎだ」
「さて、どうだか」
宏の宥めるような声もどこ吹く風。良和は残ったもう一人に視線を向ける。
「で? 水瀬としてはどう思ってるのかな」
「え……?」
話を振られたのは、いままで会話に入ってこなかった最後の四家。
水瀬家。その当主、水瀬伊月。
あの魔族七大名家の一つでもある水瀬の血筋としてはどことなく気弱そうだ。水瀬と言えば魔族七大名家の中でも好戦的な一族なのだが。
その伊月は良和の視線から逃れるように目線を左右に行ったり来たりした後、やや俯くようにしながら上目遣いで皆を見て、
「えと……私も、戦いは……したくない、です」
宏は溜め息を、さやかは頷き良和は動きを見せなかった。
そんな三人にますます萎縮して肩を縮める伊月。まぁ無理もないのかもしれない。
水瀬で殺されたのは前当主である伊月の父だ。なのでこうして『当主』として会議に出てくるのは初めてだったりする。
だが隣に座る、同じく初会議のはずのさやかが、笑顔のままにわずかに身を乗り出しその肩を叩いて、
「伊月ちゃん。わたしたち同格なんだから敬語なんていらないよ? もっと気楽に気楽に〜」
「あ、でも白河さんの方が年上ですし……」
「むー」
白河さやかには緊張、という素振りがまるで見えない。
肝が据わっているのか度胸があるのか。そのどちらかもしれないが、伊月はとにかくすごいと思った。
そうして伊月がやや力の抜けた頃合を見計らってか、宏が口を開く。
「それで、水瀬としてはどうして戦いはしたくないって思うんだ」
「……白河さんが――」
「さやか、で良いよ?」
「あ、はい。……こほん、その、さやかさんの言うとおりダ・カーポのせいだと決まったわけじゃありません。それに……」
「それに?」
「……その、どうにも腑に落ちないんです。今回の一件」
ピクリとさやかの眉が跳ねた。それに気付かず宏は先を促すように、
「と、いうと?」
「そもそも、ダ・カーポ側がそんなことをする理由が見えないです。私たちの親類なんかを殺していったいなんの得が――」
「それが外の人間族だろう?」
良和が口を挟む。
「外の人間族は魔族を快く思っていない。そして魔族とつるむ人間族もだ。……だからこそダ・カーポとは昔から小競り合いを繰り広げていた」
「で、でもそれもここ最近は落ち着いてきて国民もそれを嬉しがっていたのに、それをわざわざ崩すことなんてないと思うんです」
「……どうかな。むしろその平穏こそ邪魔だと思ってるのかもしれないぞ」
「柾木くん。それ、どういうこと?」
「そのままの意味だよ『白河の魔女』。ダ・カーポの白河王家は昔から随分と貪欲だったな。
民衆を煽って小競り合いを続けさせたのも、魔族が憎いからではなく国土を占有したいからだろ?」
確かにそのような噂は聞く。
現代のダ・カーポ王国の女王、白河暦こそまだましだが、それ以前の王や女王はとにかく欲深かったらしい。
旧カノンやクラナドにすら手を出そうとしたことさえあるようだから、その貪欲っぷりは推して知るべし、だろう。だが、
「でもいまの暦女王になってからはそれも減ったじゃない。その理由は通らないと思うけど」
「人間気が変わることなんて多くある。大人になっていけばなおさらな。そういうことかもしれない」
「……ちょっとお話にならないかも。だってそんな憶測立てちゃったらどんな『もしも』も通っちゃうもの」
「あぁ、僕だって理由なんかどうでも良い。ようは結果だ」
はぁ、とさやかは良和の意見にこれ見よがしに溜め息を吐く。
「だからその結果が怪しい、っていう話なのに……」
「確かにダ・カーポの奴らがやったっていう証拠はないな」
でも、と宏は続け、
「逆も言える。ダ・カーポ以外の誰がそんなことをして得する?」
「それは……」
さやかも言葉が詰まる。
そう、今回の事件がおおよそダ・カーポのせいだと決められている理由はそれが一番大きい。
「それに、だ。華子もそうだが、殺されたやつらはどれもそれなりの実力はあったぜ? ……そんじょそこらの奴に殺されるわけがない」
それぞれ四家に名を連ねる存在だ。
実力だってそれなりにあったし、宏の言うとおり並大抵の相手では殺すどころか怪我を負わせることすら難しいだろう。
それをどれも的確に心臓を一撃。不意を突かれたのか、それとも相対しながらもそういう結果しか出なかったのか。
……どちらにせよ敵の実力は相当なものだと判断できる。
宏の言いたいことはわかる。それはさやかも納得できる。しかし、それでも釈然としなかった。
「……でも、やっぱりいきなり戦争なんておかしいよ。もっと慎重に調査して、全てを明確にしてからでも遅くは――」
「そんなことしててまた誰かが殺されたらどうする気だあんたは!」
バン! と良和が机を叩いてさやかの言葉を遮った。
「……どうしてそんな悠長なこと言っていられるんだ。僕は許さないぞ。あいつらのこと」
「で、でも柾木さん……」
反論しようとする伊月の弱い声すら怒りを呼ぶのか、良和はギリッと歯噛みしながら伊月を血走った目で睨み、
「妹の茜を殺されたんだ! 当然だろう!?」
「ッ!?」
その殺気に、伊月は思わず身を振るわせた。
怒りに反応してか、鬼の力が溢れ出している。
四大魔貴族の一つである鬼。
その血を色濃く受け継いでいる柾木家の中でも最強と言われる良和に純粋な殺気をぶつけられれば、同じ魔族と言えど身ぐらい震える。
むしろその程度ですんでいるのを褒めるべきだろうか。隅にいる王は泡を吹いて気絶すらしてしまっているのだから。
「良和さん、抑えて」
が、そんな良和を見ても特に様子を変えない宏が止めに入った。
それは彼の――否、稲葉家に受け継がれた特異体質故だ。彼には魔力による圧力なんかは一切通用しない。
良和はギラついた目で宏を見るが、それを宏は軽く受け流し、さやかと伊月へ視線を向ける。
「このまま話してても平行線だな。……多数決、取ろう」
ウォーターサマーの決め事は全て四家で執り行う。そしてその方法は、四家の当主による多数決。
「戦争に賛成の者」
本来進行役である王が気絶してしまっているので、宏が自ら言いながら手を上げた。そして座り直した良和もまた手を上げる。
「……戦争に反対の者」
そして残った二人が手を上げる。さやかはしっかりと、伊月はおずおずと。
良和はあからさまに舌打ちをし、宏は仕方ないとでも言うように溜め息を吐いた。
宏からすればこの結果は予想通りだった、ということのなのだろう。宏はゆっくりと顔を上げ、
「……それじゃ、意見が半分に割れたから、四家の『血約』に従い決議は二週間後っていうことで」
四家の『血約』。
ウォーターサマーが建国された際に四家が作りだした、いわば盟約のようなもの。
「そして四家はそれぞれもう一人を会議に呼び、王を入れ、九名での決議を行う」
四家の当主のみで意見が定まらなかった場合はこうなっている。
それぞれの家の補佐、ないしそれに近いポジションに立つ者を一名呼び、またさらに王を含め九名で多数決を取る、というものだ。
九名。必ずどちらかの意見が通る数。
この意味するところに、誰もが無言になった。
その沈黙が数秒続き、不意に宏が席を立った。
「稲葉家……うちは稲葉ちとせを呼ぶ。白河家は?」
二週間後の会議において呼ぶ補佐を提示する。これもまた『血約』により定められていた。
「白河家は上代蒼司くんを呼ぶわ」
そして呼ぶ者は別に四家直系の人間でなくても良い。
当主が認めた者であり、その四家に属する家の者なら誰でも良かった。
「水瀬家」
「み、水瀬、小夜ちゃん」
「柾木家」
「伊吹公子」
その名に、誰もが一瞬驚きに良和を見た。
三人はてっきり補佐役には京谷透子を呼ぶのだと思っていたのだが……。
それに伊吹公子という名。聞いたこともないものだ。
一体どういう人物なのだろうと誰もが考え込む中で、良和が立ち上がる。
「……提示したんだ。今日の会議はこれで終わりだろう?」
「そうなるな」
「そうか。なら僕は帰らせてもらう」
ここにいるだけで気分が悪くなる、とでも言いたげに良和は足早に会議室を後にした。
最後、さやかと伊月の方を睨みつけて。
「やれやれ……」
そんな良和を見て宏が嘆息する。
彼もダ・カーポに怒りを持っているという点では良和と同じだったが、幾分も冷静だった。
さやかや伊月の意見もわかる。しかしだからと手を拱いていたらこれ以上誰かが殺されるかもしれない、という良和の言葉が重く圧し掛かった。
だからこそ、宏は賛成に一票を投じたのだ。
彼には絶対、守らなければならない人物がいる。
「……おれは、ちとせを絶対に守らなくちゃいけない」
稲葉ちとせ。血の繋がった、掛け替えのない妹だ。
既に両親は他界し、従姉であった華子も死に、たった一人残された肉親。だからこそ、
「わかってくれとは言わない。……でも、おれはこれ以上誰かに死んで欲しくない。だからおれはこの意見を曲げるつもりはない」
そうして宏は二人の少女を見下ろして、苦笑した。
「だからまぁ……悪いな」
そう言って宏もまた軽く手を振りながら出て行った。
そんな宏の行動にさやかと伊月は互いを見やり、力なく微笑んだ。
「憎めないなぁ、もう」
「元々憎む気なんてないですよね?」
む、とさやかの動きが止まる。くすくすと笑う伊月を見て、あなどれないなぁ、とさやかは思った。
「稲葉さんは本来家族想いの良い人ですから……。ただ今回はその家族に被害が及んだからああなってしまっているだけで……」
「そうだねぇ〜。稲葉家の領地の雰囲気見てればわかるかなぁ」
四分土稲葉の領地に住む人たちは王都以上に笑顔が多い。それもこれも現当主である宏の手腕の成せる業だろう。
しかし、その想い故にいまは対立することになってしまっているわけだが。
「……私も、頑張ります。戦争なんてことにならないように」
伊月がそう言うには理由がある。
水瀬家は、魔族七大名家の中でも好戦的と言われるほど、本来気性の荒い血筋だ。無論、その傘下に入っている者たちもまた同類。
当主の伊月こそ戦争反対の意を表明しているが、むしろ水瀬家全体として見れば、戦争賛成派の方が多かったりするのだ。
「うん、頑張ってね」
さやかとしてはそう言う他にない。
他の家の話には口を出せないのだから仕方ない。
「はい」
それが難しいことだとわかっているのだろう。なかなか厳しい表情で一礼して伊月もまた去っていった。
「……ふぅ」
ポツンと残されたさやかはボーっと天井を見つめる。
……落ち着いていたはずのダ・カーポもここ最近は荒れているらしい。
どうもダ・カーポの重役が何者かによって殺されたとか。それをウォーターサマーのせいだと思い込んでいる者もいるのだという。
どうにもこの流れ……作為的なものを感じてならない。
ダ・カーポはウォーターサマーに。
ウォーターサマーはダ・カーポに。
まるで二国を争わせようとするかのようなこの一連の動き。これがさやかが戦争を反対する理由の一つでもあった。
このまま踊らされては取り返しのつかないことになる。……そんな気がしてならないのだ。
「あ〜あ。やだなぁ〜」
目に見えない暗黒の渦に飲み込まれていくような感覚。……しかしさやかはクスリと微笑み、
「そう簡単にいかないわよ。まだ見ぬゲームマスターさん?」
「はぁ〜」
それからしばらく経って会議室を出てみれば、既に外は夕暮れに包まれていた。
「なんだかんだで結構な時間ボーっとしちゃったのね〜」
あはは、と一人苦笑。どうにも考え込むと時間を忘れてしまうらしい。
早く帰ろう、と足早に廊下を歩いていく。
「あ」
と、先で見知った人物を発見した。
廊下の窓から外をボーっと見つめているその青年は、間違いない。
自分の最も信頼する、そして最も大好きな人物だった。
「あは♪」
あまりに嬉しくなったので歩調が走りへと変わっていく。
その足音に気付いたのか、こちらを振り向くその青年にさやかは思いっきりダイブした。
「そ〜お〜じ〜くーん♪」
「うわ、ちょ先輩!」
驚きながらも抱きとめてくれる青年――上代蒼司に、さやかは思わず笑顔になる。
「あははは、迎えに来てくれたの蒼司くん?」
「えぇ、まぁ」
そう言って微笑む蒼司。
蒼司くんは卑怯だなぁ、なんて思う。
あれだけ鬱屈してた気持ちもこうして話し、触れているだけで吹っ飛んでしまうのだから。
蒼司がそうさせるのか。はたまた自分が調子良いだけか。
とにかくこんなことならあんな部屋で一人ボーっとせずにとっとと出てくれば良かった、と心底思った。
「それじゃ、帰ろっか」
「はい。でも先輩、その前に離れてくださいね」
「ぶーぶー、けち〜」
かと言ってここでごねても蒼司は取り合ってくれないだろう。
蒼司は甘やかせてくれるときは目一杯甘やかせてくれるが、時と場合を弁えている。
個人的には時も場合も気にせず抱きついたりしたいのだが……。
「あぁ、良いなぁ〜そういうのも。なんていうかこう〜、ラブラブ?」
「虚空眺めてなにニヤついてるんですか。……それはともかく。で、どうでした?」
「え? あぁ……うん」
まぁ聞かれるよなー、と思わず嘆息一つ。
「なんか駄目っぽいかも。ずっと平行線だし」
「やっぱり、ですか……」
蒼司の中でも大方予測済みだったのだろう。小さく肩を竦め、
「……とにかく二週間後、ですね」
「だね〜。あ、補佐は蒼司くん指名したからよろしくね?」
「わかりました」
即答の笑顔がなんとも頼もしい。
状況はピンチだが、それでもこうして笑っていられるのは皆に支えられているからだろうなぁ、とつくづく思う。
「みっちゃんやもっちゃんも手伝ってくれるかな」
「まぁあの二人はなんだかんだでお人好しですから。……あぁ、そういえば萌がそのあだ名激しく怒ってましたよ」
「えぇ〜、可愛いのに〜」
「そんなこと言ってまたあいついじめないでくださいよ。いつもそのツケは僕に回ってくるんですから」
「あははー、ごめんごめん」
「謝るくらいなら最初からやらないんで欲しいんですが――」
と、蒼司はそこで言葉を切って天井を見上げた。
……なんとなく言いたいことがわかったのでさやかは「かちーん」と来た。
「蒼司くん? いまの言葉の続き、『どうせ無理だよなぁ』なんて思ったんでしょ? そうでしょ?」
「あー……わかりました?」
「そりゃあ、わたしと蒼司くんの仲ですからぁ〜? ……でもね、それって結構ひどいと思うの。乙女の心が傷付いちゃう」
「だったら僕がそう思わないような行動をして欲しいですね。いや本当に」
「蒼司くんがいじめるよ〜!」
よよよ、と泣き真似をすると「あぁもう」と蒼司が困った顔をしていた。
蒼司の困る顔はとっても好きだ。そうしてからかうのは自分の特権でありたい、と願うのは我侭かなぁ、とも思うが、
「……だから頑張れる、ってことで、ここは役得かな〜」
「? さやか先輩、何か言いましたか?」
「ん〜ん! 何でもなーいよっ!」
「って、だから腕絡めないでくださいって!」
「照れない照れない〜♪」
「照れてるとかそういうのじゃなくてここはまだ王都ですよ――って聞いてないですね!?」
蒼司の言い分は華麗にスルーした。
……とりあえず諦めずに頑張ろう、と思う。
こうやってまだ馬鹿をしていられるように。
戦いなんて……無いに越したことはないと、本当に思うから。
あとがき
はい、どーも神無月ですー。
というわけで番外章、ウォーターサマーの動きでした〜。
まぁウォーターサマーの話はいままでにもちょこちょこ触れてはいましたが、ようやく本格お目見えですね。
もちろん「三大陸編」にはサーカス大陸も含まれていますので、この辺がキーパーソンになります。
果たしてダ・カーポとウォーターサマーは戦争になってしまうのかどうか。
この続きは「三大陸編」の冒頭になると思われます。では、そのときに。