これは風子がみなさんに送る、愛と感動とロマンスと哀愁と涙と切なさと・・・とりあえずそこらへんのものを適当に盛り込んだスペクタクル巨編な一日のお話しです。

 

 

 

 風子の日がな一日☆

        〜夜編〜

 

 

 

 

 

 

 もう辺りはすっかり暗くなってしまいました。漆黒カルバナルとはまさにこのことです。

 

 おばけは墓場で運動会するこの時間に、どういうわけか風子は紫の人に手を引かれ道を歩いています。

 

 風子は良い子なので本来ならもう寝なきゃいけない時間です。

 

 ・・・いえいえ、違います。風子は大人なのでこんな時間だって起きてるのが当然にして普通なのです。

 

 なので風子これっぽっちも眠くなんてありません。目はぱっちりオープン・ザ・ドアです。いつでもいけます。風子はやれば出来る子です。

 

 ゴン。

 

「はうっ!?」

 

「・・・あんた、よくただ歩いてるだけで電柱になんか激突できるわね」

 

「〜〜〜!・・・だ、だいじょうぶです。風子これっぽっちも眠くなんてありません。大丈夫です。生きてます。オールオーケーです。そもそもそんなところに電柱があるのが悪いんです。・・・はっ!?もしやこの電柱は岡崎さんの建てた電柱!?ということはこれは全て風子を陥れるための陰謀!?」

 

 くぅ、恐るべしです岡崎さん。(←完璧に冤罪)

 

 風子の隙を的確に突いた見事な一撃です。風子眠くて油断・・・、

 

「ちょっと。頭抑えて蹲っちゃってるけど、大丈夫?」

 

「風子眠くなんてありませんっ、ないのですっ!だから油断なんかしてないですっ!」

 

「はぁ?」

 

 くぅ、恐るべしです岡崎さん。

 

 風子の肉体面だけではなく精神面にもダメージを与えるなんて、なんて末恐ろしい人でしょう。いえ、そもそも人ですらないのかもしれません。

 

 そう、言うなれば・・・天上天下悪魔!

 

 はっ!?

 

 これはまさか汐ちゃんと風子の仲を進展させまいとする妨害工作!?(←冤罪ぱーと2)

 

 くぅ、なんと卑劣!なんと小癪!

 

 しかし風子は負けません!風子は強い子ですっ!

 

「今度はいきなり立ち上がってガッツポーズ・・・。ちょっとあんたホントに大丈夫?どっかヤバイとこでも打ったんじゃないの?」

 

「なにをボーっとしているのです杏さん。風子はこの内から滾るヒトデパワーを岡崎さんに叩き込まねばならないのです。速やかに案内してください」

 

「なにを言ってるか意味不明な上に当初と目的が摩り替わってるって気付いてる?」

 

「ぼさっとしている暇は1ミクロンもないのです。風子は先に行きますよ」

 

「あー、そっちはいま来た道よ」

 

「・・・・・・・・・・・・言っておきますが風子道に迷ったわけではありませんので」

 

 杏さんは「あ、そ」と小さく笑って再び歩き始めました。

 

 ・・・なんかそこはかとなく負けた気がします。

 

「・・・ん?ねぇ、あれ」

 

 と、杏さんがなにかに気付いたようにある方向を指差しました。

 

 そこに振り向いてみれば、電灯の点灯チェックをしている二人分の人影。

 

 目を凝らしてよく見てみます。

 

 丁度良いタイミングで電灯が点きました。

 

 明らかになったその顔を見て、風子の身体に気合が走りました。

 

 そこに・・・・・・・天上天下悪魔がいたのですっ!

 

「あ、朋也じゃん。おーい、と(ゴウッ!!)やー・・・って、え?」

 

 杏さんの声を掻き消し風子は一陣の風となります。風の子と書いて風子ですからこんなのは序の口です。

 

 ターゲットは脚立を押さえているあの人、岡崎さんですっ!

 

 なにか、なにか武器はないか・・・と探してみれば、上手い具合に右手には巾着袋。触ってみても堅さは丁度良い具合です。(←大切な事を忘れてる・・・)

 

 ―――いけますっ!

 

 受けてくださいっ!これが風子と汐ちゃんの仲を引き裂こうとした悪魔に対する天罰です!

 

「日輪の力を借りて(←もう夜です)、いま、必殺の、ヒトデ・・・・・・・あたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっくぅ!!

 

 大きく振りかぶって投げた巾着袋は空気の壁を突き抜け風を切り裂き・・・、(←大きく誇張)

 

 ゴチィン!

 

「ぐあっ」

 

 見事に直撃!見ましたか、風子のこの洗練された投球モーションを。風子はやれば出来る子です。

 

 くらりと倒れる岡崎さんと共に脚立は崩れ、その上に立っていた祐介さんも落下し、巾着袋からはなにかおいしそうなものがバラバラとぶち撒かれました。

 

 ・・・・・・はて、いまなにか見てはいけないものを複数見た気がするのですが・・・?

 

「あちゃぁ、こりゃまた・・・大惨事ね」

 

 横に並んだ杏さんに言われるまでもなく、そこは大惨事となっています。

 

「・・・・・・これって全面的に風子のせいですかね?」

 

「「「明らかに(お前)(風子)(あんた)のせい(だろ)(でしょ)!!」」」

 

 四方から放たれる言葉の弾丸に風子の心は強く傷付きました・・・。弾幕薄いです、なにやってるんですか。

 

 頭を抱えながら憮然とした目でこちらを見る岡崎さん。・・・なんですか、そのあたかも風子が悪いかのような視線は。

 

「いつつ・・・。こんな時間にこんな場所で・・・お前は通り魔か?」

 

「いえ。風子は悪魔である岡崎さんに対する天罰のリビドーに逆らう事が出来なかっただけです。そんなこと言うなんて、岡崎さん最悪ですっ」

 

「それはこっちの台詞だ、この小型通り魔が。しかも投げつけたのが弁当というのはどういう了見だ?これ・・・公子さんの手作り弁当だろ」

 

 ぎくっ。

 

 な、なんで岡崎さんがそんなことを・・・。

 

「なんで俺が知ってるのか、って顔してるな」

 

 しかも見抜かれてる辺りがぷち最悪ですっ。

 

「そりゃ、芳野さんとは組んで仕事やってるから愛妻弁当を見る機会なんてよくあるからな。嫌でも見慣れる」

 

 複線はバッチリですか・・・。さすがは岡崎さん、侮れません。

 

「んで、お前はいったいなにしに来たんだ?まぁ、大方昼飯忘れた芳野さんの弁当を持ってくるように頼まれたのに場所を聞き忘れて途方にくれてたら夜になっちまって、そこでなんかトラブルが起きて俺に濡れ衣着せて怒り心頭、そこでタイミング良く見つけた俺にこれが弁当だと忘れて投げつけた・・・ってとこだろうとは思うけど」

 

 筒抜け!?まるで見てきたかのような物言いにして必中!?

 

 な、なんということでしょう・・・。どうやら風子は岡崎さんの力を甘く見ていたようです。さすがは汐ちゃんのお父さんですっ。風子は岡崎さんの認識を改めねばいけないようです。

 

 そう・・・これからはエスパー岡崎と呼ぶ事にしましょう。

 

「待て。その呼び方はやめろ」

 

 ・・・いま風子喋りました?

 

 ・・・・・・恐るべし、エスパー岡崎。

 

「だからやめろって」

 

 風子はいま人間の神秘を垣間見ました。人間の能力に上限はなさそうです。かの赤いお人も言いました。・・・人類全てがニュータイプにならねば地球は救われない、と。

 

「にしても、さすがにこれは食えないな・・・」

 

 岡崎さんに続き立ち上がった祐介さんが、無残な姿に成り果てた弁当を見下ろして呟きました。

 

「まったくです。どうしてくれるんですか岡崎さん」

 

「まぁ、なんとなくこっちにくるのは読めたが・・・。とりあえず俺は関係ないぞ」

 

「岡崎さん、現実逃避はよくありません。罪は認めてこその罪ですよ」

 

「最近自分の事を棚に上げる姿勢に磨きがかかってると思うのは俺だけか、風子」

 

「多大に気のせいです」

 

「まるで掛け合い漫才ね・・・」

 

 おっと、そうでした。杏さんの存在を忘れていました。と・・・、

 

「・・・・・・え?」

 

 振り向くと、そこには杏さんと別にもう一人、すごく見慣れた女性が立っていました。

 

「あまりにも帰りが遅いから、心配して来てみたんだけど・・・・・・」

 

 ぞくっ!

 

 戦慄、とはまさにこの事でしょうか・・・!身震いが止まりません!それだけの威圧を放つ・・・笑顔の般若がそこには立っていましたっ!

 

「・・・お、お姉ちゃん・・・」

 

「あ〜、さっきからいてね。声を掛けようとは思ったんだけど・・・」

 

 そんな呑気にポリポリ頬を掻いている場合ではありませんよ杏さん!あなたは大変かつ重要な情報を伝えなかったのですよ!?

 

「・・・ふぅちゃん?」

 

「は、はい!風子は元気ですっ!?」(←動転して声が上がってる)

 

 無造作に踏まれた一歩。その威圧感といったらゴジラやガメラなど比にならず、山積みのレインボーパンにも匹敵するこのプレッシャー!?

 

「お弁当が散乱しているのは・・・どういうこと?」

 

「あ、いえ、あれは、・・・お、岡崎さんの・・・」

 

ふ・ぅ・ちゃ・ん?

 

 封殺。言葉の圧力で風子のトークは抹殺されました・・・。

 

 まずいです、風子大ピンチですっ。

 

 誰かに助けを求めようと振り向いてみても、誰もが風子と目を合わせようとしません。

 

 ・・・風子身に知りました。この世に情けなんてないんです・・・。

 

 孤高の風子・・・。風子は、永遠に不滅ですっ!

 

 

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・。

 

 

 

「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」

 

 

 

 

 

 

 ・・・この後、偶然現場に居合わせた藤林杏はこの日の事を「ベルリンの赤い雨」と言ったとか言わないとか・・・。

 

 

 

 ちゃんちゃん♪

 

 

 

 あとがき

 ども、神無月です。

 やっとこさこの「風子の日がな一日☆」が終わりました。

 なんか・・・妙に疲れました。やっぱギャグは苦手だぁ〜。しかも終わり方微妙だし・・・。

 ・・・風子好きのみなさま。こんな風子俺の風子じゃねぇ!とか言う人もいらっしゃるかもしれませんが、これが神無月の風子です。

 ちなみに公子が怖いキャラになってる気がしなくもないですが、こんなもんだと思うのは神無月だけでしょうかね・・・?

 まぁ、なにはともあれ楽しんでいただけたならば幸いに思います。

 では、またどこかで。

 

 

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