これは風子がみなさんに送る、愛と感動とロマンスと哀愁と涙と切なさと・・・とりあえずそこらへんのものを適当に盛り込んだスペクタクル巨編な一日のお話しです。
風子の日がな一日☆
〜昼編(後)〜
大変です。風子は大変なことに気付いてしまいました。
風子、祐介さんの仕事場を知りません。
というかその前にここがどこかすらわかりません。
くぅ、風子ともあろうものがこんなちゃちなミスをしでかすなんて油断大敵。そこの奥さん、鍵の閉め忘れは平気ですか?
なんてみのさんやっている場合ではありません。ここは迅速かつ、速やかに対処せねば。
う〜ん・・・。
はっ!?そうです!風子閃きました。あまりの発想に風子ちびってしまいそうです。
と、いうことで風子はそれを実行すべく(断じてちびる方ではありません)辺りを捜索し始めました。
「これなんて良いのではないでしょうか」
そして風子が拾い上げたのは適度な長さをもつ木の棒です。
風子は聞いたことがあります。
道に迷ったときは道の中心でこの木の棒を・・・・・・。
この木の棒を・・・・・・・・・・・・。
風子うっかりさんです。そのあとどうするかを忘れてしまいました。
ですが風子は勇敢なチャレンジャー。思い出せないのならそれっぽいことをしてみるまでです。
風子は木の棒を持ってみちの中央に立ちました。準備は万全です。風子に怖いものはありません。
そして風子はその木の棒を・・・・・・投げました!
ぶぉん!
風を切る音を轟かせながら、その木の棒は見る間に空に消えていき・・・、お星様になりました。
「ふむ。あっちですね」
風子は投げた方向を確認し歩を進めました。
そして二十歩くらい歩いたとき、ふと風子は思い至ったのです。
「・・・なにかそこはかとなく間違っているような気がします。確か木の棒は投げるのではなく・・・埋めるのでしたか?」
「埋めてどうすんのよっ!」
むっ。なにやら後方からやかましい声が聞こえてきました。
振り向いてみればそこに立っていたのはどこかで見たことのあるようなないような紫色の長い髪をしたおばざんでした。
「って、誰がおばさんよ!」
・・・はて、風子いま口に出して喋ったでしょうか?
ま、それはさておき。
「で、あなたは誰ですか?」
風子がそう聞くとその人は大きな息を吐いて答えました。
「あたしは藤林杏。そこで保育園の保母をやってるの」
「はぁ。保育園ですか。どこのやくざかと思いました」
あ、なんかこめかみと髪が揺れて見えます。なぜでしょう?
「・・・ち、ちなみに聞くけど・・・。あたしのどこを見てやくざだと?」
「目ですね。いくら外を飾っても瞳だけは誤魔化しきれません。風子にはわかります。あなたは天性の暴れん坊将軍だと」
あ、なぜかぷるぷると藤林さんの体全体が震えています。なぜでしょうか。風子のシックスセンスが危険信号を放っています。ここにいては危険だと本能が告げているのです。
じわりじわりと近付いてくる藤林さんの両目はなぜか星型に輝いて見えます。
と、そこへ、
「あれ、そこにいんの杏じゃん?へぇ久しぶりだねぇ」
どこか軽い調子の男の人がこちらにやってきました。
・・・はて、この人もどこかで見たことのあるようなないような、やっぱりない顔ですね。
「実はさ、会社で大きな休みが取れてちょっとここに寄ってみようかなぁ、なんて思ってきてみたんだよ。そしたらこうやって杏に会えてさ、なに?僕たちってやっぱ運命の赤い糸で結ばれてるのかなって感じない・・・」
「その赤い糸って血でできてるのね!」
おもむろに藤林さんは叫びながらその男の人をむんずと掴みあげるとそのまま・・・、
ブゥン!
ズゴシャ!
「ぐぅおぇあぁったぁ!?」
な、なんと!藤林さんはここがアスファルトの道路であるにも拘らずバックドロップをかましました!しかも勢いを全く殺さずに!?
ピクリとも動かない男の人。肩で息を吐く藤林さん。
・・・もしや風子はいま生で殺人事件を眺めているのでは!?
い、いけません!?風子、警察に電話しなくてはいけません!番号は・・・009でしたか!?
ゆらりと立ち上がるその女性。その様があまりに修羅のようで、こ、怖いです。
「あぁ、すっきりした」
・・・が、表情は笑顔。
どうやらいまの一撃で藤林さんは機嫌を直したようです。
風子は賢いのでこういうことわざを知っています。
触らぬ神にたたりなし。
ということで風子はいまの殺人を記憶から削除しました。風子何も見ていません。風子、これでもご近所さんの中では世渡り上手で有名なのです。
「で、あんたいったいなにしてたの?」
と、むこうもなにもなかったかのように話を進めてきます。悲しいかなこれが現実。風子は涙を呑んで話に乗ることにしました。
「風子はこれを祐介さんに届けるという使命があるのです」
「で?」
「そして風子はその最中なのです。他言は無用です」
「・・・それ、手出しが無用の間違いじゃないの?」
「そうとも言います」
「そうとしか言わないわよ」
そこで杏さんはため息を吐いて、
「・・・で?その祐介さんとやらの仕事場がわからなくて迷ってたと?」
「気分はウォーリーを探せですね」
「ネタが古いのよ!ってか主旨だいぶ間違ってるし!」
びしっ、と虚空に向かって突っ込みを入れる杏さん。
・・・本当に保育園の先生なのでしょうか?本当は漫才師なのでは?
とはいえ風子はそのようなことは口にしません。そんなことでバックドロップされてはたまったものではありませんからね。
「それで、あなたは祐介さんの仕事場を知ってるんですか?」
「いや、だってその祐介さんって人知らないし。ね、その人なにしてる人なの?」
「電柱弄くったりしてますね」
「電柱・・・?もしかしたら朋也がいる仕事場かな・・・?」
朋也?そこはかとなく聞いたことのあるような名前ですね・・・。はて、いったいどこで聞いた名前でしょうか・・・?
あっ。
「朋也って、もしかして岡崎さんのことですか?」
「え、そうだけど。なんだ、あんた朋也のこと知ってるの?」
「はい。岡崎さんは風子の敵ですから」
「て、敵ね・・・」
汐ちゃんの心を乗っ取るひどいあくまです。
いつの日かその魔手から汐ちゃんを救ってみせます。待っていてくださいね、汐ちゃん。
「そっか。うん、朋也の働いてる事務所ならあたしにもわかるわ」
「本当ですか?」
「ええ、任せてよ。なんなら送ってってあげようか?」
「良いんですか?」
「ええ、いいわよ。久しぶりに朋也にも会いたいし」
・・・・・・ふむ。なにかいま妙なニュアンスを垣間見た気がします。
まぁ、案内してくれるなら良いんですけど。
「それじゃ急ぎましょうか。そろそろ暗くなってきたし」
「・・・・・・はい?」
そんな馬鹿な、さっきまでお昼真っ盛りだったのですよ?そんな暗いなんて・・・・・・って、暗くなってしまってますっ!
こんなことがあって良いのでしょうか?タイムスリップ!?いま風子はタイムスリップを体験してしまったのですか!?
それにこれではお弁当を届ける意味がないのでは・・・?いえ、そのまま夕夜食に移行っていう手もありですね。というかぜひそうしてもらいましょう。
そんなこんなで風子は杏さんと一緒に祐介さんのいる仕事場に向かったのでした。
ちゃんちゃん♪
あとがき
こんばんは、神無月です。
・・・なんかこれ書いてると思うんですが、風子ってばかだなぁ。(←なにを今更)
でもそこがきっとつぼにはまるんでしょうな。いろんな意味で。
しかしやっぱギャグは難しいなぁ。
・・・今度ことみや渚など他のボケ属性がついたキャラの一日を書くのも愉しいかも。
な〜んて野暮なことを考える神無月でした。
あぁ、あと今回の読めばわかると思いますが、これ風子エンド後ではありません。渚アフターの話です。ちゃんと渚も生きてます。
・・・ま、そんなことはどうでもよいか。