三年E組所属、藤林椋は存外に変な人間である。
どこが変か挙げろと言われれば、とりあえずそれなりに挙げられるだろう。
例えば、占い。
彼女は占いが大好きなのだが、何故かそれをトランプで行う。
トランプで何をどう占い、規律も法則も無い柄を見てどのように結果を出すのかは、定かではない。
本人によれば乙女のインスピレーションだとかなんだとか。
……まぁ、他にもありはするのだが、中でも一番変だと思えるのは、これだろう。
日記。
日記を書くこと自体は別におかしくはない。
が、問題なのはそれを書く時間だ。
「えーと……」
現在化学の授業中。化学担当の霧島聖が弁を振るう中、悩むようにシャーペンをクルクルと回している椋。
だが、彼女は決して授業に悩んでいるわけじゃない。
質素な授業用ノートの横、隠すようにして置かれているどこかファンシーなノート。
何を隠そう日記である。
……そう、これこそ彼女のおかしな行動のその最高位。
日記をリアルタイムで書くのだ。
朝ご飯はどうだった、となれば朝食中に。授業で何かがあった、となれば授業中に。登校中や入浴中といったどうしてもできない状況下で無い限りその行為は行われるのだ。
そしていまもその腕は日記に文字を走らせている。
今日は、そんな彼女の日記を紹介することにしよう。
その出だしはこう始まっていた。
『4月○日 ここはおかしなクラスです』
集まれ!キー学園
十八時間目
「ここはおかしなクラスです」
4月○日
ここはおかしなクラスです。
なにがおかしいって、そりゃあもう周囲を見渡すだけで何個も発見できるくらいにおかしいです。
いままで何度もクラス替えをしてきたけれど、ここまで個性的なメンバーが揃ったのは初めてなような気がするくらいに。
今日はちょっとそんな個性的なメンバーを観察してみようかなぁ、って思いました。
名前順から一番前の席に座る私の両隣は春原くんと老船さんです。
なんていうか、とってもやばい人たちに挟まれている気がします。
春原くんはなんというか……なにが変かと聞かれれば全てとしか返せないくらい変な人だと思います。むしろ存在が変?
事あるごとに朋也くんを親友だと公言してますが、そんなのはあり得ないです。
朋也くん曰くゴキブリ並の生命力だとかなんだとか。お姉ちゃんの辞書を連続で直撃しても突っ込めるだけ確かなのかも。
とにかく、あまり関わりたくない人です。でも朋也くんに付きまとうのできっと関わることになるんでしょう。
今度お姉ちゃんみたいに辞書投げてみようかな?
老船さんはなんというか……なにが変かと聞かれれば全てとしか返せないくらい変な人だと思います。むしろ存在が変?
なんかさっきと同じ言葉な気がしますけど、春原くんとは別の意味でおかしな人です。
生徒会長です。あり得ないです。
一時間目なんて新任らしい先生がどこか緊張しながらも笑顔を浮かべて教鞭を振るっていたとこに、机をペシペシと叩きながら、
「なんだねその教え方は。教科書をただ読むだけなら幼稚園児でもできるというものだよ。
公務員という国民の血税で生きている分際でその体たらくはなんだね? その点を大いに反省して前世からやり直してきたまえ」
などと言い放ち、新しい教師生活に夢を描いていた教師は授業開始三分で玉砕、泣きながら去っていきました。
言っていることはあながち間違っちゃいないんですが、なんというかストレートすぎて思わず同情してしまう勢いです。
あの先生はこれからどうなるんでしょうか。なんか再起不能になってしまったら可哀相です。
ま、それはさておき、老船さんは現在霧島先生の授業を頷きながら聞いています。
この人は一見自己中心的に見えますが……どうやら自分が認める相手だけはきちんと話を聞くみたいです。
キー学教師陣や……生徒では真坂くんや朋也くん、佐祐理さんといったところでしょうか。
それでもその奔放というか超特急な物言いは変わらないみたいですけど。
さて、今度はもう少し範囲を広げてみようかと思います。
私の後ろの席は渚ちゃん、右斜め後ろと左斜め後ろにはそれぞれ星条さんと渡辺さんがいます。
渚ちゃんはなんというか、とっても可愛い人です。
小動物的可愛さ、というかなんというか……なんか無性に抱きつきたくなるような、そんな可愛さです。
仲良くさせてもらってます。占い研究会にも入ってもらいました。
でも、ライバルです。多分。
直に聞いたわけじゃないですけど、渚ちゃんはきっと朋也くんのことが好きなんです。目を見ればわかります。女の子ですから。
でも渚ちゃんはあんまり自分から動こうとはしないのでその点は安心です。むしろそういう点ではお姉ちゃんや佐祐理さんが怖いです。
おっとと。脱線してしまいました。
星条さんは一見まともに見えますが、やっぱりちょっと変な人です。
風紀委員の委員長さんで、仕事に忠実な人です。で、教会に住み込んでるシスターさんでもあります。
というか、定められた規律に従わないのは神に背くこと、だということで厳しいようです。
なので二年の折原くんや一年の杉並くん絡みの事件が起こると天罰とか神罰とか言いながら廊下を走ってます。怖いです。
で、そういう点のせいか、老船さんとはしょっちゅう激突していたりします。
生徒会長と風紀委員長というだけでなく、多分性格的にも合わないんでしょう。でもこの二人の口喧嘩はある意味楽しいので好きです。
……なんて、口に出したら星条さんの反応が怖いので決して言いませんけど。
で、渡辺さんはすっごい変な人です。
なにが変って、まず顔を見たことがありません。
いつも顔を覆うフードを着けていて、マントまで羽織ってます。ああいうマントってどこで売ってるんでしょう?
や、そうじゃなくて。
どういう顔でどういう体型をしているかすら誰も知らないそうです。それどころか喋るところも誰も聞いたことないそうです。
すっごい不気味不思議です。
魔術研究会なるものを発足していて、噂じゃ得体の知れない実験をしているとかなんとか……。
……怖いので渡辺さんについてはこの辺にしておこうかと思います。
他にも観察したい人はいるんですが、今回はこの辺にしておこうかと思います。
何故って、そりゃあー……霧島先生が目の前に立ってこっちを見下ろしているからです。
正直、とっても怖いです。
あ、霧島先生が、
「藤林椋。……お前、一番前の席で授業を聞かず別の事をするなんて堂々としたもんだな〜。挑戦か、ん?」
とか言ってすごんでます。怖いです。
噂じゃ数時間前に職員室から一年の教室に遠距離投擲されたメスは霧島先生の仕業だとかなんとか。
そんな先生に目を付けられた私はいったいどうですれば良いのでしょうか? 助けて朋也くん!
「……と、注意してる傍から無視して手を動かすお前はよほど根性があるようだな。その辺は姉譲りか。
よーしよくわかった。来い、お前に私の恐ろしさを教えてやろう」
笑顔がとっても怖いです! 伸びてくる手! あぁ、大変です捕まってしまいます私なにも悪いことしてないのに!?
あぁ、襟首を掴まれて!? 助けて朋也く
日記はそこで終わりを告げた。その後、椋がどうなったのかは――ご想像にお任せするとしよう。
あとがき
ども、神無月です。
キー学史上最小記録です。
それはさておき、なんとなくやりたかったことパート1。
っていうか椋が日記帳に周囲のメンバーを書いていく、ということ(何故椋かは他にそれらしい人物がいなかったから)にしたわけですが。
周囲のメンバーがCLANNADキャラと神無月のオリキャラだけというのは後でわかったこと。
……むぅ、オリキャラを出したかったんですが。
というわけで次回、学年は未定ですがオリキャラ中心に展開していこうかなぁ、と思います。
では、また。