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 国立キー学園のグラウンドはとにかく広い。

 というか、敷地内にグラウンドが複数あるという学園もかなり珍しいだろう。

 初等部、中等部、高等部、大学部にそれぞれ一つずつのグラウンドがあるのだ。信じられようか。

 だが、体育館は一つしかない。とはいえグラウンドをわざわざ四つも持つ学園の体育館。広さが普通でないことくらいは容易に想像がつくだろう。

 ……閑話休題。

「いやぁ、しかし学園が始まって早々体育の授業とは、俺たちもついてるよなー!」

 意気揚々とグラウンドでストレッチをしながら浩平。

 他の男子生徒も概ね同じ意見なのだろう。浩平ほどとは言わずとも皆気楽な表情だ。

 が、その中で祐一はどこか疲れた表情でストレッチをこなしている。それを見て浩平は首を傾げ、

「どうした祐一? お前は授業の方が良かったか?」

「そういうわけじゃないんだがな。誰かさんのせいで朝から全力疾走したのにすぐ体育っていうのも、ちょっとげんなりするだけだよ」

「うわ、またそういうことを言う。過去のことは過去のこととして現在を楽しまないと、人生つまんねーぞー」

「……そうだな。俺はもう少しお前みたいな気楽な思考を持ちたいよ」

「ははは、褒めるなよ。照れるぜ」

「嫌味だ、馬鹿」

 中には祐一ほどではないにしろ、いきなりの体育に乗り気じゃなさそうなのも何人かいる。まぁ、クラスというのはそういうものだろう。

 だが、そんな男子生徒の中で一人、明らかに趣きが違っている者がいる。

 グラウンドの中央、ストレッチそっちのけで黙々と一眼レフを磨いている男。

 その名は南森大介。

 通称ハイパーエロ、あるいはエロハンター。

 今年の抱負は『青春のリビドーを余すことなくぶちまける』ことらしい。

 正直ぶちまけられては迷惑なだけなのだが、この男の行動力はその一点においてはあの一年の杉並すら上回る。

 なので賢い者は放置、騒ぎ好きはエロリストだのなんだのと煽っている。

 まぁ、かといって直接的に関与する奴はほとんどいないわけで、今回も誰も一眼レフを磨いていることに突っ込みを入れる者はいない。

「しかし、一眼レフとはやりますなぁ、南森」

「ふっ。そう言ってくれるのはお前だけさ、南」

 ……いた。

 南明義。南森とよくつるんでいる男子生徒だ。

「しかし、高かったんじゃないか? カメラ」

「馬鹿を言うもんじゃないさ、南。このワンシーンにはそれだけの価値があるのだよ」

 むくりと立ち上がる南森。そうしてカメラを片手に振り替えり、天空に人差し指を突き出しポーズをとって、

「体育。……それは青春の熱き思いが吐き出される場所。考えてみろ、南よ。汗を滴らせた体操服、しかもブルマ!

 これに萌えずしてなにが漢かっ! しかもこのクラスはただでさえレベルの高いキー学においてなお極上クラス!

 この日のためにカメラを新調しようとした俺の気持ち、お前にもわかるだろう!?」

「あぁ、おうともさ! やっぱお前は魂の兄弟だ!」

「おぉ、兄弟よ!」

「兄弟!」

 がしっ、と互いを抱く二人。いま二人はえろでできた絆によって繋がっている。

「……あぁ、頭痛い」

 脇で呟く久瀬。いまだけがそれに同意したい祐一であった。

「むっ!?」

「どうした、兄弟南森!」

「来る!」

 そう言った瞬間、グラウンドに賑やかな集団が現れる。

 着替えを済ませた二年A組の女子一行だ。

 それを見た南森がすかさず疾走。そのままヘッドスライディングの要領でダイビングしつつ身体を空中で反転。

 顔を上に向けた形でカメラをセット。どうやらブルマを下から仰ぎ見る写真を撮ろうとしているようだ。

「貰ったぁぁぁぁ!」

 ものすごい勢いで土煙を巻き上げながら滑っていく南森。後頭部がはげになるんじゃないかという勢いだが、そんなことは南森の頭には無い。

 彼は、いまいかにえろいことをするかしか頭にないのだから。

 ……故に、彼は人選を間違えた。

 滑り込み、仰ぎ見ようとした、その相手。

「うぉ……!」

 それに気付いた浩平が思わず呻くその女子。

 それは――長森瑞佳。

 足元に滑り込みシャッターを押そうとした南森。それを瑞佳は、

「あれ、なにしてるの?」

 とか言って躊躇無く踏みつけた。

 ……首を。

「ぎえええええええええええええええええええええええ!!!?」

 カエルを踏みつけたときのような不気味な声が響き渡るが、瑞佳はまるで動じていない。

 というか足をどかそうともしない。

「駄目だよ、そんなところに寝っ転んでたら。踏ん付けちゃうよ?」

 現に今踏んでいます、と南森は言いたいのだろう。しかし首を踏まれた南森は声を発することもできず、ただ口をパクパクとしているだけだ。

「……金魚の真似?」

 瑞佳、まったく別方向に受け取ったようだ。

「……」

 そこへ、里村茜がやって来る。彼女は踏みつけられた南森の横に転がっているカメラを見下ろし、

「……またそういうことをしているんですか」

 嘆息。すると茜はいきなりカメラを足で引き上げた。

 そのまま数回リフティング。上手いものである。

 そしてリフティングしつつ茜は周囲を見渡し、探していた人物が見つかったのか、ポーンと一回強くカメラを浮かばせると、空中でキック。

 そのカメラの向かった先にいるのは……智代だ。

「ん?」

「シュートです!」

「え、なんだ?」

 とか訊ねつつも、しかし、反応してしまう悲しき条件反射。

 智代は向かってくる物がなにかを知る前に、全力でシュート。

 カメラは轟音と共に空中分解した。

「うわぁぁぁ……」

 無残である。

 だが、ここで終わらないのがエロリスト南森大介。

 皆が粉々に散ったカメラに目を奪われている隙に、ポケットから取り出した予備のデジカメで、

「げっぷぉぉぉぉぉぉぉぉ!(ゲットォォォォォォォォ!)」

 瑞佳、そして隣の茜を下から激写。そして壊される前にという配慮なのか、メモリースティックを取り出しカメラを草むらに投げ捨てた。

「……」(←ものすごい迫力で南森を見下ろす茜)

「……」(←やることはやった、と死にいく兵士のような笑顔を浮かべる南森)

「……?」(←状況をよく理解していないが、とりあえず踏んでいる瑞佳)

 一歩を踏み出す茜。そして彼女は不意に足を振り上げ……、

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」

 南森大介、16歳。

 新学期最初の授業、しかもそれが始まる前に保健室へと担がれていった。

 しかし一部の男子生徒は彼を見てこう思ったという。

 漢だ、と。

「認めたくないものだな、若さ故の過ちというのは……」

「……黙ってろ馬鹿浩平」

 

 

 

 

 

集まれ!キー学園

十六時間目

「体育の法則(前編)」

 

 

 

 

 

「よーし、じゃあ男子は適当にチーム分けして練習開始しろー」

 そう声を掛けたのは、体育担当の教師、国崎往人だ。

 茜による戦慄の踏み付けを意図的に記憶から失くした二年A組。

 その最初の授業は体育で、内容はソフトボールらしい。

 で、女子はしばらくキャッチボールで球を慣れさせる、ということで男子はいきなり実戦形式の練習と相成った。

 A組の男子の数は十四人。半分に分けると七人ずつとなる。……南森が消えたので、片方は六人だが

 ソフトは野球と同じく一チーム九人でやるものだが、人数が足りないのでは仕方ない。

 外野を三人ではなく二人、内野では遊撃手を失くす。六人側のチームは相手チームから捕手を出すという特別ルールのもと、

「はいはい、じゃプレイボール」

 という国崎往人の試合は開始された。

「んじゃ、適当に」

 Bチーム。投手は相沢祐一。

 Bチームのメンバーの総意によりこうなった。

 ちなみにBが六人チームで、捕手はAチームの風上将深。

 内野は一塁から順に斉藤時谷、北川潤、南明義、そして外野はライトから佐藤恭一、氷上シュン。

 そしてAチームの先頭バッターは久瀬隆之だ。

 久瀬はバットを軽く回し構え、眼鏡を釣り上げキラーンと輝かせると、

「ふっ、相沢くん。いつまでも君の時代が続くとは思わないこ――」

 ズバン!

「ストラーイク」

「なっ!? ちょ、待ちたまえ!? 人が喋っているときに投げるとはどういう了見だい!?」

「いや、だって構えてたし」

「くっ……!」

 久瀬もいまのは自分に非があると思ったのか。再び構え直し、

「確かにいまのが僕のミスだね。けど、これが僕の実力だと思わない方が――」

 ズバン!

「ストラーイク」

「……」

「いや、だって構えてたし」

 こめかみをひくつかせ、しかしそれでも久瀬は三度目の正直と構え、

「……お、追い込んだからと安心しないことだね。僕は昔から追い詰められてからがいちば――」

 ズバン!

「ストラーイク、バッターアウトー」

「なにぃぃぃぃぃぃぃ!?」

「……なんで台詞の前に構えるかな」

 無念だ、とか言いつつ下がる久瀬。基本的に自爆なのだが、……いや、だからこそ許せないのかもしれない。

 で、次に二番バッターとして打席に立つ男を見て、祐一は思わず溜め息を吐いてしまう。

「城島司、かぁ」

 苦手な相手だ。どうして苦手なのかと言うと、

「相沢祐一……。今日こそ俺はお前を越えて、茜を手に入れる! さぁ、どこからでも掛かって来い!」

「……いや、だから俺と茜は別にそんな関係じゃ――」

「茜って呼び捨てにするなぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……はいはい」

 この調子なのだ。

 がっしりと構え、やる気満々……というか殺る気満々といった視線で睨みつけてくる司。

 何を言ってもこの男には通じない。

 そういままでの経験から理解している祐一は、無言のままに投球フォームへと移っていく。

「来い! 茜の見ている前で、俺はお前に負けない!」

 ズバン! ズバン! ズバン!

「ストラーイク、バッターアウトー」

「ガッデ―――――――――ム!!」

「やれやれ……」

 ちなみに茜はまるで見ていなかった。

 しょげ帰る司と入れ替わるように入ってくる一人の男。不敵な笑みを浮かべるその男の名は、

「よぉ、まさかお前と俺が敵同士になるとはな」

「浩平か」

「悲しいけど、これ戦争なのよね」

「……もはや何も語るまい」

 祐一、釣られてしまっている。

「いけー、折原ー!」

「お前だけが頼りだー!」

「おう、俺に任せろ!」

 バットを片手にバッターボックスに立つ浩平。イチローばりに袖を引っ張りくるんとバットを回し、

「しゃー、どんと来いやー!」

 ブゥン!

 ズバン!

「ストラーイク」

 空振りした。

「……ださ」

「やかましい! 勝負はこれからじゃー!」

 叫び、構え直す浩平。しかしそんな彼に教師たる往人の物凄い発言が飛ぶ。

「お前なんとなく嫌いだからバッターアウト」

「ちょっと待てやこのクソ教師っ! なんだその私利私欲な物言いは!?」

「何言ってんだお前。このグラウンドでは俺が神だ」

 さも当然のことのように言う往人に、さしもの浩平も呆然とする。その後ろで守備陣がすでに下がってきている光景がなんとも痛々しい。

「……俺が何をしたぁぁぁ!!」

 浩平の咆哮も完全無視を決め込まれ、攻守交替。

「ちっ、この恨み晴らさでおくべきか……」

 そう言いながらピッチングマウンドに立ったのは、いましがたワンストライクでアウトにされた不遇な男、折原浩平だ。

「浩平がピッチャーか。厄介だな」

「そうなのか?」

 それを見て思わず呻く祐一に、隣にいた潤が聞いてくる。それに祐一は頷き、

「あいつ、昔少年野球やってたんだが……ピッチャーとしての能力はかなり高いぞ」

「そんなにか」

「あぁ。練習がめんどいとか言って部活には入ってなかったが、入っていれば間違いなくエースはれるくらいにな」

「それはすごいな……」

 そうして視線を向けてみれば、既に先頭打者である南が三振を取られていた。

「はっはっはっ、打てるもんなら打ってみなぁ!」

 ノリノリである。先程のワンストライクアウトがよっぽど気に入らなかったようだ。……まぁ、あの理不尽さでは無理もないが。

「うわ、速いねぇ」

 続く二番打者、シュンも空振り三振。しかしそのアルカイックスマイルは消えることはなかった。

「はっはっはっ、どうだ、参ったかぁぁぁ!」

「……あいつ、かなり熱くなってるなぁ。冷やしておくか」

 調子に乗り出すと止まらないのが折原浩平という人間なのだと、幼馴染である祐一は嫌になるくらい理解している。

 なのでここで一つ、頭を冷やしてもらおう。

 そう思い祐一は自分のチームにいる一人の男を呼んだ。

「佐藤、ちょっと」

「ん、僕?」

 呼ばれ、祐一の横に並んだのは佐藤恭一。

 今年初めて同じクラスになった相手だが、学園でもそこそこ有名な生徒だ。

 茶髪が太陽に眩しいが、地毛なのか染めているのかは知らない。が、その温和な顔を見るにあまり自分からそういった目立つ行動は取りそうにないように見える。おそらく地毛だろう。

 ……まぁ、そんなことはどうでも良い。

「佐藤、お前野球の経験は?」

「え、無いけど」

 ならば好都合だった。

「よし、じゃあお前が次行け」

「え、僕やったことないから、きっと無理だよ?」

「大丈夫。秘策がある。そしてそれはきっとお前にしかできない」

 そうして祐一は恭一に一つの案を耳打ちし、

「う~ん……。そう上手くいくかどうかわかんないけど、やってみるよ」

 微妙な表情で頷いた恭一がバットを持ってバッターボックスに立つ。

 バットの構え方や体勢を見れば、すぐに野球やソフトボールの経験者でないことがわかるだろう。野球経験のある浩平ならばなおのこと。

「ふ、佐藤か。しかしたとえ運動が苦手な方のお前が相手であろうと、俺は手を抜かないぞ!」

「で、できれば少しくらいは加減して欲しいなぁ……」

「問答無用!」

 浩平が投球モーションに入り、そのまま下手投げで球が投げられる。

 それを見送り、勢い良くミットに納まる球。傍目から見てもそれなりに速い球を見て、恭一は一度二度と頷き、

「速いね。ざっと100キロは出てるかな」

「下手投げは慣れてないからな。野球のときはサイドスローだし。ま、それでもそんくらいは出てるだろうさ」

 キャッチャーに返された球をミットの中で遊び、浩平はもう一度投球フォームに入る。

 その途中、恭一がちらりと祐一を見た。

 祐一は頷き、『行け』というサインを送った。

 自信なさそうに頷いた恭一が前を向く。それとほぼ同時、浩平の腕から再び球が投げられた。

 速い。コースは内角やや高め。初心者ならまず打てないようなコースだ。

 しかし、

「ここ!」

「なっ!?」

 恭一が振ったバットに球はジャストミート。振り遅れもなく引っ張るように三遊間をライナーでぶち抜いた。

 外野の久瀬が球を戻す頃には既に恭一は一塁のベースを踏んでいた。

「な、な……!?」

 それを見て愕然とする浩平。その前にバットを持った祐一が不敵に笑みを浮かべながらバッターボックスに立つ。

「お前、忘れてただろ。佐藤が何部か」

「何部って……あぁ!?」

「確かに佐藤は陸上やらなにやらは苦手みたいだが……あいつは、テニス部で救世主とまで呼ばれている男だぜ?

 球を見定める力はおそらく俺たち以上のはずだ」

 そう、浩平は最初の一投で気付くべきだった。

 本当の初心者が第一球を見て、大体のスピードを把握することなどできるだろうか。

 答えは否だ。

 祐一が恭一に言った案はただ一つ。

『一球目をじっくり見ろ。そして二球目を打て』

 テニスで培った球を見る目があれば、ソフトボールくらいの球は打てるはずだと祐一は考えたのだ。

 そして、実際結果はそうなった。

「ま、これでお前も少しは頭冷えただろ」

 ……しかし、祐一は一つ読み間違いをした。

「ふ、ふふ……、そうか。これは祐一の差し金か。……おーけー、わかった。つまり――」

「……しまった」

 それは――浩平が極度の負けず嫌いだということだ。

「宣戦布告と受け取ったぁぁぁ!!」

「余計燃え上がらせてしまった……」

 いきなり投球モーションに入る浩平。慌てて祐一も構えるが、

「おらぁ!」

「!」

 ズバン!

「ストラーイク」

「……おいおい、さっきより数段速いんじゃないか、浩平?」

 さっきのが100キロくらいなら、いまのは120キロ近くは出ているのではないだろうか。そのくらいに。

「ふっ。お前は眠れる獅子を目覚めさせてしまったのだよ……」

「おいおい、体育の授業なんだからさ。もう少し肩の力を抜いてのんびりと――」

「おう、のんびり三振されちまえ!」

 放たれる一球。外角高め、

 ――ボールだ。

 そう判断し見送るが、

「ストラーイク」

「……」

 そうだった。この教師はそういう教師だったのだ。ギリギリのラインは全てストライク扱いされるだろう。

「ふふん? 祐一も俺の球に手も足も出ないか?」

 そんな浩平の軽い挑発。いつもの祐一なら受け流しただろう。しかし、彼は髪を書き上げ、嘆息一つ。

「……!」

 浩平は知っている。その仕草は、祐一の癖なのだ。

 ……祐一が、珍しく本気になるときの。

「……ふぅ、仕方ない。いっちょ揉んでやる」

「……へへ、そうこなくっちゃな」

 相沢祐一。

 一見クールな彼だが、しかし実は負けず嫌いだという点だけで言えば……浩平とさして変わらないほど。

 久しぶりの祐一の本気だ。浩平は自らが持てる渾身の力を込め、

「積年の恨み! いまこそここで晴らぁぁぁぁぁぁす!!」

 スポーツ精神など欠片もない個人的恨みの言葉を叫びながらその一球を放った。

 再びの剛速球。だが三度も同じスピードを捉えられない祐一ではない。

「ふっ!」

 ガッ、と鈍い音を上げ球がバットに激突する。

 球が高速なら、そのバットのスイングもまた高速。一部分だけ切り取ればプロでも通用するようなその交錯。

 しかし、浅い。かすった球は前にではなく後方に流れ――、

「ぐあ!?」

「「あ」」

 何かがどこかにぶつかったような音と同時の悲鳴に思わずユニゾン。

 ……まぁ、つまりどうなったかと言うと。

 バッドにかすった球がそのままの勢いで後方へ飛び、ろくにマウンドも見ておらず油断していた審判――往人に直撃した、というわけで……、

「……」

 むくりと立ち上がる往人先生。その頬には痛々しい赤く丸い跡があり、

「男子の試合は終了――――!! 終了だ、終了!!」

 浩平渾身の恨みの球は、往人の恨みを買ってしまったようだ。

 

 

 

 あとがき

 あい、どうも神無月です。

 えぇ、なんかこう……コメディってどこまでマジでやって良いのかわからなくなりますねw

 次回は女子のソフトボールです。南森も復活します。一瞬ですが(ぇ

 では、また次回に。

 

 

 

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