Episode ]]]V

       【開かれしパンドラの箱(前編)】

 

 コロニー内。出撃できないキサラギの前で、徐々に瓦礫が撤去されていく。

 こういうときMSの精密に動く四肢などは役に立つ。兵器としてだけではなく、船外作業機器としてもMSは優秀だ。

 新規コロニーの建設では、初代ジムやボールが扱われているという時点でその有用さがわかるというものだ。

『撤去、これくらいでどうだ!』

 朋也の言葉にことみは目の前をじっと見つめ、

「・・・多少船体が傷つくかもしれないけど、いまはそんなことに気を遣っている余裕はないし・・・うん、いこう」

『おし』

「機関最大! 多少強引になってもかまわない・・・ここを出るの!」

「「「了解!」」」

 クルーの返事と共に、キサラギが起動する。そのエンジンを強く高鳴らせ、コロニーからの出港を試みる。

『MS隊! 引っかかりそうな瓦礫は出来る限り撤去しろ! 損傷は最小限抑えるんだ!』

 朋也の言葉が飛び、MS部隊がキサラギを囲むように展開する。イブキでキサラギやカンナヅキに搬入されたイブキ軍のゼオンやエイレスもある。

 それらが見つめる先、ガリガリと嫌な音をたてながら、キサラギが出口に衝突した。

「くっ・・・!」

 予想以上の振動に思わず身体が崩れる。やはりまだ無理だったか?

 けれどこれ以上はクラナドが危ない、という考えがことみのその思考を切り捨てた。

「前進して!」

 無理やり前進。MS部隊が引っかかっている瓦礫などをビームサーベルで強引に切っていくが、それでもなおキサラギの振動はやまない。だが、

「コロニー、出ます!」

 オペレーターの言葉と同時、一際大きな衝撃が艦を打ちつけ・・・船体は完全に宇宙へと投げ出された。

「―――朋也くん!」

『あいよ! MS部隊、展開! クラナドを援護に向かう!』

 キサラギをコロニー外へ出したことで、MS部隊がすぐさまクラナドへと向かっていく。隊長は朋也だ。

 それを見つめながらキサラギは船体の姿勢を立て直し、クラナドと激しい砲撃戦を行っている艦隊を見る。

「カンナヅキ級・・・ムツキ!?」

 見間違うはずもない。先頭で撃ち合っている戦艦は、このキサラギと同じカンナヅキ級であるムツキだ。とすれば、

『もちろん良い噂ですよ。カンナヅキ級の開発の第一人者にして天才指揮官。連邦であなたの名を知らない者はいないでしょう』

『そんなことはない。あなたの実力は誰もが認めているところです。ムツキに乗ったからこそ、それも実感しましたしね』

 あれに乗っているのは、あのとき横浜基地で出会った人の良さそうな青年だろう。

「・・・」

 いずれこうなる、そうとわかっていて選んだ道だ。とはいえ、やはり知った顔を相手にするというのは、なんとも気乗りがしない。・・・だが、

「ここでクラナドを失うわけにはいかないの!」

 強い想いを秘め、ことみはムツキを見る。

「全速前進! ミサイル装填、三連圧縮メガ粒子砲、サブメガ粒子砲、両チャージ! 目標―――ムツキ!」

 

 

 クラナドの周囲はまさに激戦と化していた。

 あゆの量産型キュベレイと佐織のドーベン・ウルフでなんとか持ちこたえさせてはいたものの、それでもそろそろ限界か、という絶妙のタイミングでカンナヅキ、キサラギのMS部隊が雪崩れ込み、MS戦は混戦を極めている。

「ちっ、あともう少しだったのに・・・」

 その光景を見て、広瀬真希は舌打ちする。この連中には、毎度毎度苦汁をなめさせられていたのだ。今度こそは、と思ったのだが・・・。

「えぇい!」

「!」

 目の前をビームが過ぎる。機体を旋回させ回避した真希の視線の先には、黒塗りの量産型キュベレイがある。

「いい加減しつこいわね! とっとと墜ちゃいなさいよ!」

 ビームスマートガンを連射するが、当たらない。どれもギリギリのタイミングでよけられてしまう。

「くそ・・・!」

 あの時といい、今といい、キュベレイを相手にするとろくなことがない。だが、

「あのときと今じゃ、機体性能が違うのよ!!」

 真希の咆哮にSガンダムに搭載されたシステムが呼応する。

 ファンネルを携え横から迫るキュベレイに対し、Sガンダムが真希の操作を待たずして反応しビームサーベルを抜いた。

「えっ!?」

 まさか突っ込んでくるとは思ってなかったのだろう。だがその驚きが一瞬の隙を生む。

「もらったぁぁぁ!」

 振られるビームサーベル。その一閃はコクピットへの直撃コースであり、しかし、

「―――ボクだって、やれるもん!」

「なに!?」

 いきなりキュベレイがありえない方向にずれた。ビームサーベルは当初の狙いを外し、右腕部を切り裂く。

 馬鹿な、と思う。いまの機動はどう考えてもMSのできる芸当ではない。あまりに不自然すぎる動きだ。

 何故、という問いの答えは、キュベレイの背部からあがる煙を見て導き出された。

「まさか・・・ファンネルで自らを撃たせたの!?」

 その反動で機体をずらした、そういうことなのだろう。

「ボクだって・・・いつまでもお荷物じゃないんだからぁ!」

 その声にファンネルが展開し、Sガンダムを取り囲むように駆け巡る。

「くっ・・・」

 このままでは狙い撃ちだ。だから下がろうとして・・・しかし、機体が下がらない。

 ハッとして前を見れば、突き刺したビームサーベルを持つ腕、それをキュベレイがしっかりとホールドしている様が見えた。

「あんた・・・!?」

「肉を切らせて骨を絶つ、だよ! ファンネル!」

 掛け声と同時、ファンネルからビームが撃ち出される。逃げ道は、ない。・・・が、

「こんなとこで、やられるもんですか!」

 ブースターを点火。前に押し出すという形でSガンダムはビームを回避した。

「そんな・・・!?」

「所詮あんたなんてこの程度なのよ! 墜ちなさい!」

 インコムが、今度こそコクピットを狙う。ビームサーベルが突き刺さったこの状況では今度はキュベレイに逃げ場がない。

 死ぬ。そう確信しあゆが目を瞑った刹那、

「これ以上お前に仲間を殺されてたまるかぁぁぁ!」

 叫びと共に直上からのビームが的確にインコムを撃ち抜いた。

「この声は・・・!?」

 ハッとする真希。仰ぎ見るカメラの先からは、雷の如き黄に彩られた機体がビームサーベルを掲げてこちらに迫ってくる。

 見間違うはずもない、その肩に描かれたエンブレム。何度も、何度も、悔しさと憎しみで眺めていたそのエンブレムの意味する相手は、

「折原・・・浩平ぃぃぃ!」

 それだけで真希の意識からあゆは消え失せ、浩平にだけ向けられる。

 彼女の怒りや憎しみに呼応するようにALICEシステムが再び起動する。

 激突するビームサーベル。人の反応速度を半ば越えた動きで繰り出される斬撃を、しかし浩平は受けきっていく。

「機械の力を借りなきゃ俺とは戦えないか!」

「うるさいうるさい! その上から見下す物言いが憎たらしいのよ!」

「お前は自分を過信しすぎなんだ! 誰よりも上にありたいと思うその欲望が、他人を蝕んでいく!」

「ふん! 私以外の人間なんてどうでも良いのよ! 私以外に上に立つのは許さない!」

「人を見下しているのはどっちだ! お前の方がよっぽど傲慢だろう!?」

「私は誰よりも上に立たなきゃいけないのよ!」

 一際強くビームサーベルが打ち付けられ、両者の間が大きく開く。

 互いにビームライフルを撃ち合い牽制しながら、

「なぜそこまで強さを望む! 人を蹴落としてまで、お前はいったい何を!?」

「生きるためよ! 所詮世界は弱肉強食・・・強くなくちゃ生きていけない!」

 浩平がビームの雨を掻い潜り、再び肉薄する。それを再度ビームサーベルで受け止めつつ、

「強くないから私の家族は殺された! 弱者として、ゴミとして汚く死んでいった!」

「!」

「・・・だから、私は生きる。どれだけ憎まれようと、恨まれようと、誰よりも強くなって、逆に弱い奴らを叩き落す側に回る!」

 浩平はオールドタイプ。それでもその言葉の節々から放たれる憎悪は強烈で・・・肌を焦がす。

 捻じ曲げられた感情。そうすることでしか生きることが出来なかった人生。それが、伝わってくる。

「お前も、戦争の被害者だったのか・・・」

「はん、同情なんかしないでくれる? 私はこの生き方を間違っているとは思わないし、家族が死んだのも当然と思ってる。

 だって仕方ないじゃない。弱かったんだもの。だから―――」

 低く呻くように呟き、そしてその表情に狂気を浮かべ、叫ぶ。

「だからあんたをぶち殺して私は生き残るのよ!!」

「・・・勘違いするなよ、広瀬」

 振り降りされる怨念の一撃を受け止め、対する浩平はただ静かに、

「お前の境遇には多少同情もするが、それ以降の道は間違いなくお前が選んだ道なんだ。

 お前がその執着のために手を掛けてきた人を思えば、同情の余地なんかどこにもない・・・!」

 浩平はギュッと操作管を握り締める。

 思い出されるは二人の笑顔。

 それを壊したのは真希であり自分。この相手ばかりを責めるのはお門違いとわかっている。しかし、

「お前はこれからも人を苦しめていく・・・! お前みたいな人間がいるから、世界は憎しみから解放されない!」

「それはあんたのエゴでしょう!? あんた自身の恨み辛みを世界と一緒にしないでくれる!?」

「微塵も無いとは言わないさ! だがお前の生き方はまた俺みたいな存在を生み出す! だから、広瀬真希っ!!」

 切り結んだ形のまま、拡散メガ粒子砲を撃つ。真希が反応するより先にシステムが機体を下がらせるが、それこそ浩平の思う壺だ。

「・・・!?」

 一発ビームを放ち、それを回避するためにSガンダムが右に逸れる。それも狙い通り。

 最初の攻撃も、いまの一発も、ただの布石だ。

 システムの動きには、ニュータイプでもない浩平にはついていけない。

 しかし・・・最初からそこに来るとわかっていれば、どうとでも対処は出来る。

 目の前に迫るコクピット。タイミングはドンピシャ。ビームサーベルを掲げ、

「お前はここで―――終われぇぇぇ!!」

 そこへ突き刺した。

「がっ・・・!?」

 ビームは寸分のずれもなくコクピットを貫き、背面から突き出す。

 それで終わりだ。身体は一瞬で蒸発し、なにも残らない。

 ビームサーベルを抜き距離を取れば、数秒の後誘爆を引き起こし閃光へと消えていった。

 ・・・それは生に執着した女の、あっけない最後であった。

「・・・」

 その爆発を、どこか悲しい瞳で眺める浩平。

 ・・・ある意味で、真希の生き方も仕方ないと思える部分もあった。

 こんな世界、こんな情勢、・・・確かに強くなくでは生きていけないという現実がそこにはある。

 けれど、だからって他人を踏み台にしたり蹴落としたりするのは正しいとは言えないはずだ。

 ・・・綺麗ごとかもしれないが、そうだと思いたい。

「浩平さん!」

 声に振り返れば、栞の宇宙用にカスタマイズされたウインドと、風子のビームライフルを搭載したアークレイルがいた。

「あの・・・大丈夫、ですか?」

 栞の心配そうな声に、浩平はあぁ、と返すだけに留めた。

 この二人だけには心配を掛けまいと、そう思う。たとえそれが強がりでも、守ると決めた以上この二人に弱い部分は見せたくなかった。

 だからというわけではないが、破損の激しいあゆのキュベレイを見て、

「月宮。お前は戻れ。その損傷じゃこれ以上の戦闘はできないだろ?」

「え? あ、うん・・・、そうだね」

 シュン、と項垂れるあゆ。また役に立てなかった、とでも思っているのだろう。

「・・・大丈夫、お前はしっかりやってくれてるよ」

「え・・・?」

「実際あゆが真希を抑えていたおかげでクラナドは踏ん張れたんだ。

 広瀬はあれでも二つ名の所持者、腕は確かに他の奴らを軽く凌ぐ。それを止めていられた功績は大きいさ。

 だから落ち込むな。あんまり我武者羅に戦ったって、死んだりしたら祐一が悲しむ」

「・・・うん、ありがとう折原くん。折原くんは、優しいね」

 少しは声が軽くなった。それが救いだと思えるが、こうして直に優しいなどと言われると、照れてしまうもので、おざなりな言葉が出てしまう。

「・・・さっさと戻れ。破損した機体で戦場をうろうろしてるもんじゃない」

「うん、わかった。三人とも、気を付けてね」

 キサラギ、カンナヅキのMS部隊によって盛り返し始めたクラナドへと帰還していくキュベレイ。

 それを眺めていると隣に風子がやって来て、

「素直じゃないですね浩平さん」

「ほっとけ」

 いつものような返し。しかし少し間を置いて・・・つい聞いてしまうことは、

「・・・風子、大丈夫なのか?」

「大丈夫だと言いました。風子、嘘は吐かない子です」

 嘘だろう。

 とはいえ、強がってでもやらなければならないことがある。それは浩平も、風子も、栞だって同じだ。

 だからその嘘を今は真に受けよう。それがきっと、一番相手を『想う』ということだろうから。

「はは、そうだな。良し、いく―――」

 行くか、と言おうとして、しかしその言葉はアラートによって掻き消された。

 なんだと思うより先に、キサラギのオペレーターの焦った声が通信に乗ってやってきた。

『さ、三時の方向より大型の熱源を確認!! 数、十! ・・・ネオジオンです!』

「!?」

 弾かれたようにその方角に視線を向ける。

 そこからは確かに視認出来るか出来ないかくらいの光点が見えた。

「くそ、こんなときに・・・!」

「こ、浩平さん・・・」

「・・・栞?」

 毒吐く浩平だが、その横でどうしたわけか、栞が驚いたように声を震わせている。

 栞はまさか、と呟きながら、声をさらに震わせて、

「あ、あのネオジオン艦隊から、感じるんです・・・」

「なにを?」

「あの人の・・・気配、を」

 あの人? それは誰かと疑問を浮かべれば、栞は泣きそうな声で、

「―――瑞佳さんの、気配を」

 

 

「ネオジオンだと・・・!?」

 キサラギと艦隊戦を繰り広げていたムツキの中で、潤もその事実に気付いた。

 思考する。いまこの状態でネオジオンに側面を打たれるのはよろしくない。下手をすれば漁夫の利でネオジオンの一人勝ちになってしまう。

「・・・この場は撤退する」

「撤退? 正気ですか? これだけの布陣を敷いていて?」

 撤退の言葉を聞き隆之が不満の声を漏らすが、潤は表情を変えない。

「疲弊したこの状態で挟撃されたらお終いです。それとも、久瀬理事は戦死をお望みですか?」

「・・・まぁ、良いでしょう。この艦の艦長はあなたですし、任せますよ」

「恐縮です」

 心にも無いことを呟きつつ、潤はクルーへ後退の命令を下した。

 

 

「ふふっ・・・」

 聖はアームレストに肘を着きながらその戦場を眺めていた。

 良い光景だ、と思う。戦いが混迷を極めれば極めるほど聖の目標は近付いていく。

 もっとやれ、と愉悦の表情を浮かべていると、モニターの片隅にパイロットスーツを着た少女の姿が映りこんだ。美凪だ。

『各員、モビルスーツ搭乗完了しました。・・・あの人も、ガンダムエターナルで待機してます』

「そうか。では、まずあいつ一人だけを出せ」

『・・・良いのですか?』

「構わん。テストだ。それに、我々が戻る頃にはもうグレミーも動いているだろう。罪にもならんさ」

『・・・了解』

「さて」

 消えるモニターを眺めつつ、聖は席を立つ。

「第九艦隊の部隊は時間をずらして発進させるように言っておけ」

「はっ・・・、いえ、ですが大佐はどちらへ?」

「今回は私も出る。艦は艦隊の最後尾へ。後のことは深山大佐の指示を仰ぐように」

 怪訝そうな表情のクルーたちを無視してそのままブリッジを後にする。

「いよいよ・・・、いよいよだな」

 噛み締めるように笑い、聖はMSデッキへと向かっていった。

 

 

「えぇい、鬱陶しいのよぉ!」

「ほらほらほらぁ!」

 友里のΩガンダム、真琴のΔガンダムの波状攻撃。それを舞と佐祐理はかわし、佐祐理が銃口をそちらへ向ける。

 メガビームライフルとバスターキャノン、そして展開したファンネルからの一斉射撃。

 真琴のΔガンダムとほぼ同等の火線に思わず二機が飛び退く。

「舞!」

 それを見た佐祐理の言葉に従うように舞のカノンが旋回、遠距離戦仕様と思われるΔガンダムに接近しメガビームセイバーを一閃する。

「くぅ・・・!?」

 回避しきれず、Δガンダムの左腕が切り飛ぶ。それを屈辱と受け取ったのかキッと睨み返し、

「こっのぉぉぉ!」

 ハイメガキャノンが放射される。だが撃つまでに時間が掛かるような大型兵器を舞が受けるはずもない。

「下手くそねぇ」

「うるさいわよっ!」

 茶化しに激昂する真琴。そうして再び攻撃姿勢に入った瞬間、彼女らのコンソロールに一つの命令文が映し出された。それは、

「撤退・・・!? どうしてよ!」

「さてね。大方、あっちから来る大群さんのせいじゃないの?」

「ともかく、命令なら戻るまでです」

 いつの間にか彼女たちの近くへ戻ってきていた茜。しかしその機体を見て友里がへぇ、と囁き、

「少しやられたみたいね。あなた相手にそこまでするなんて、相手はかなり強いの?」

「・・・正直、侮っていました。『白銀の狼』の名は伊達じゃないようです」

「ふ〜ん」

 茜の機体は小破、と言って良いくらいの損傷を受けている。

 当初は茜の方が圧倒的に有利だったのだが、そこはあの『白銀の狼』、坂上智代。何度も受ければ打開策を見つけることのできる頭の持ち主だ。

 智代は的確にΣガンダムの欠点を発見し、そこを利用して茜に迫ったのだ。

 ・・・フェイダルアローはそれ自体が武器であるため、移動は高速でなくてはならない。

 そのため、通常のフェンネルのように鋭角的な動きをしては威力が落ちてしまう。そのため、フェイダルアローは威力を殺さないように円を描くような軌跡で移動する。

 それを見切った智代は、円を描く以上絶対に通れないルートを看破し、そこから茜を攻撃した、というわけだ。

 ―――恐ろしい相手です。

 これこそネオジオンで五指に入ると言われる人物の強さか。とすれば、あの霧島聖や水瀬秋子という存在も相当のものだろう。

 カノンやインフィニティと合流してこちらの出方を伺っている白銀の機体、それを眺めつつ、

「ともかく、我々の機体も無傷ではありません。早々に帰還するとしましょう」

「そうね。つまんないけど、そうしないと怒られちゃうものねぇ」

「真琴はまだやり足りないわよ!」

「あら、じゃあ一人で勝手に残って勝手に死になさいな」

「くっ・・・! あんたねぇ!」

「言い争いは後で存分にどうぞ。いまは下がります」

「はいはい」

「ちっ・・・」

 そうして帰還しようとする三機を、しかし突如強烈なビームが襲い掛かった。

「「「!?」」」

 三機はそれぞれ散開しその攻撃をやり過ごすが、

「誰・・・!?」

 友里の言葉どおり、いまの攻撃はカノンやインフィニティからのものではない。なぜなら、そちらにも同じ攻撃が放たれているからだ。

「ネオジオンの新型のようですね・・・」

 ビームから敵の方向を見出した茜が、呟く。

 それを肯定するようにネオジオン艦隊がある方角からたった一機、ゆらりとこちらに向かってくる灰色の機体がある。

「単機で戦場に突っ込んでくるなんて・・・よっぽどの馬鹿か自信家ねぇ!」

 Ωガンダムが旋回し、そのまま正体不明の機体へ疾駆する。その機体を穿たんと伸びるジェノサイドクロー。だがその機体は回避しようとしない。

 貫く。誰もがそう思った瞬間、

「!」

 四方から放たれたビームがジェノサイドクローを挟み込むように衝突した。しかも完全に同じ部分に、だ。

「くっ・・・!?」

 さすがのジェノサイドクローも同一点に四つものビームを受け破砕する。それと同時に、ブースターが点火、機体がΩガンダムへと迫っていく。

「・・・!」

 茜はすぐさまΣガンダムをバード形態へ移行させΩガンダムへと向かっていく。

 ビームサーベルを抜き放つ謎の機体。それを受け止めようと友里が残っているジェノサイドクローを展開しようとするが、

「下がりなさい!」

「!」

 茜の言葉に反射的に機体を後ろにずらしたΩガンダムの目の前をビームが貫いていった。

 そこへ迫るビームサーベルがΩガンダムを貫く前に、Σガンダムが機体をキャッチし次の瞬間には大きく距離を取っていた。

 正確無比なファンネルの攻撃は先程見たとおり。あのままあそこで受けようとしていれば、Iフィールドがあるとはいえやられていただろう。

「正直、助かったわ。ありがと」

「・・・いえ、別に。・・・真琴、このまま下がります。良いですね?」

「わかってるわよ」

 そのままムツキへと進路を取るΣガンダムの中、後方でカノンらと攻防を繰り広げる一機のガンダムを見つつ、茜は思った。

 ―――あれは、この場にいる誰よりも強い。

 それはもはや確信だった。

 

 

「良い調子だな」

 モニターに映し出されるその攻防を眺めて、聖は自らの実験の成功を悟る。

 業は回る。

 これであの三つの研究を自分は全てモノにしたことになる。

「はは、完璧じゃないか」

 全て計画通り。全ての終わりまでもうすぐそこだ。これはもう最後の仕上げとも言えるだろう。

「アクセントがあった方が舞台はより盛り上がるかな・・・?」

 ならば、そのアクセントにはあの三隻になってもらおう。それに、

「あそこには川澄舞と相沢祐一もいるしな」

 都合の良いように進む世界。まるで全てが聖を後押ししているようで。

「では・・・行こうか」

 正式採用型のドーベン・ウルフに乗り、聖はカタパルトへと移動していく。接続し、デッキから見えるあの懐かしきコロニーを眺めながら、

「霧島聖だ。ドーベン・ウルフ・・・出るぞ」

 発進する。それを皮切りに次々と発進されていくネオジオンのMS。

 それらを従えて、霧島聖は己が道を行く。

 

 

「くっ・・・!」

 舞はいきなり乱入してきた新型を相手に苦戦していた。

 これは智代とMSを奪った際に、失敗した残りの一機だ。同型である舞のカノンには、この機体の認識データがしっかりと入っている。

 名をガンダムエターナル。数こそ少ないが強力な武装を積んだ機体だ。

 だが、機体だけではない。このパイロットは腕も尋常じゃない。

 射撃の腕と、ファンネルの扱いが極端に上手い。かと言って接近戦が苦手というわけでもなさそうだ。

 ロシアで智代と戦ったとき以上のプレッシャーを感じる。あの頃よりも腕は上がっただろうし、いまは佐祐理や智代もいるはずなのに、

 ―――これで互角!?

 智代は機体の破損が大きいので動きが鈍く、舞や佐祐理も先程の連中との戦いで幾分疲れが残っているとはいえ、この三人で互角。

 くっ、と歯噛みした口から声が漏れる。

 連邦艦隊は撤退したようだが、それでもネオジオン艦隊の方が数は多い。

 連邦との戦いで戦力も減っているはず。いまここで自分たちが一機に抑えられているわけにはいかないのだ。

 そうでなければクラナドやキサラギが危ないのだから・・・!

「舞!?」

「っ!?」

 一瞬意識が思考に持っていかれたその隙に、三基のファンネルに囲まれた。

 コースはコクピット。回避、不可能。フェアリーファンネルの展開も間に合わない。

 こんなところで、という思いも虚しくファンネルはビームを―――、

「させるか!」

 放つ前に破壊された。

 そうして舞の前に三機の機体が流れ込んでくる。それは、

「浩平、風子、栞・・・?」

「川澄、ここは俺たちに任せて他を頼む。・・・栞が言うには、どうもこいつは俺たちの知り合いらしい」

 何かを堪えたような・・・そんな苦しい言葉のように感じた。

 どういう理由があるかはわからないしどういう相手なのかも知らないが、いまはそうするべきだろう、と判断する。

 きっとこの相手が浩平にとって重要な相手なのだろう、と。それだけはいまの言葉から汲み取れたから。

「佐祐理、智代、私たちは他のところに行こう」

「わかりました」

「あぁ、わかった」

「・・・気を付けて」

 舞たちはそうして、それぞれクラナドやキサラギを守るために散っていく。

 浩平たちがエターナルに向かって突貫していくのを、視界の隅に収めながら。

 

 

 聖を先頭とする部隊はクラナドへ向けて直進していた。

 イブキ製と思われるMSの性能は大したものだと思うが、いかんせん数が圧倒的に違う。

 どれだけ性能が良くとも、一機で五機や十機を相手にできる者などそうはいない。迎撃に来るMSを撃破しながら、ただ進む。

 だが、そこにその波を止めんとする三機のMSがやってきた。二機のガンダムタイプと、ネオジオンのパイロットには見慣れた白銀の機体だ。

 それらが散開し、こちらの流れを断ち切るように攻撃を開始する。

 あれだけの勢いを持ったMS部隊がそれで止まる。それだけ三機の強さは他を圧倒していた。

「良い腕だな。さて・・・、ん?」

 それをたいして気にもしない風の聖は、そのまま二振りのビームセイバーを振るうカノンを見ると眉をわずかに傾かせ、

「この感覚・・・、そうか、あのときの」

 思い出す。それは―――ガンダムの強奪のためにサイド6の4バンチへ向かったとき。そこで戦った、あのガンダムのパイロットの気配であり、 

 ―――佐祐理の親友だという、相手。

「ははっ」

 思わず笑いがこぼれる。

 まったく、世界はどうしてこうも皮肉が好きなのだろうか。これではまるで、世界が自分を後押ししているようではないか。

 そうとまで思えてしまう、この偶然。いや、必然。

「そうだな、これは必然だ」

 呟き、聖はその機体に向けてメガランチャーを放つ。適当に撃った一撃、はなから当てる気も無い。

 ただあちらがこちらに気付きさえすれば良いのだから。

「・・・君が、川澄舞・・・かな?」

「!?」

 舞の驚きの気配に、聖は確信を得る。そうして、

「私は霧島聖という。はじめまして・・・と、とりあえずは言っておこうか」

 くくっ、と聖から漏れる笑いに、舞は眉を傾ける。

 その様子を見て、それはそうだろう、と頷く。確かになにも知らなければいまの自分の態度はおかしなものに映るだろう。

 ならば、

 ―――少しずつ教えてやろうじゃないか。

「とはいえ、あれだね? はじめまして、というのもおかしな話だとは思わないか?」

 自分から言っておいてなにを、と舞は思うが、そんな話をしながらでも聖の動きに鈍りはない。

 こうして話している間も舞の攻撃を回避し、隙を見ては攻撃を入れてくる。

 それに注意しつつ聖の不可思議な言葉に耳を傾けていると、

「なぜなら―――私と君は八年前、出会っているのだからな」

「!?」

 瞠目する舞。それを嬉しそうに眺めながら、

「驚くのも無理はない。これは確信に近い予想だが、君は八年前のことを全くと言って良いほど覚えてないだろうしね?」

「・・・!」

「くくく・・・ははは! 面白い、実に面白いな君は。まるっきり予想通りの表情をしてくれる」

「なにを・・・!」

 その笑いに薄ら寒いものを感じ、舞は彼女らしくない突っかかるような言葉を発する。

 だがそれすらも楽しいと言わんばかりに聖は口元を歪め、

「知りたくないか? 君の過去、君の全てを。そして君の存在の危うさを」

「・・・?」

「―――ついて来ると良い。そうすれば、全てを教えよう。この世の闇と・・・君の全てを」

「!」

 言うと、聖は機体をこちらの正面から外すように移動させ、そのまま・・・・コロニーへと向かっていく。

 ―――コロニーには祐一が!?

 それを追いかけるようにして舞もブースターを展開する。

 追ってくる舞を横目に聖はやはり笑い、

「ほうら、全ての答えはそのコロニーの中にある。・・・懐かしいだろう? なぜならここは私と君の故郷なのだからな」

「えっ・・・?」

 驚きに思わず機体の動きを止めた舞を残し、聖はそのままコロニーへと進入していく。

 それを見て慌てて舞もその後を追う。

 ・・・二人は、始まりの地へと赴いていく。

 

 

 

 祐一と郁未はその画面を見て・・・動けなかった。

 それだけそこに映された事実は驚愕的であったのだ。

 だが、郁未と祐一が驚いているのは意味合いが違った。

 ・・・画面に映されていたのは、この研究所で行われていた三つの研究のプランであった。

 一番上、Aプランと書かれている研究―――内容は、強化。

 郁未が驚きに目を見開いているのはこのプランの最高責任者の名前だった。そこに記された名は、

「・・・高槻和幸、ですって・・・!?」

 それは、郁未が連邦で強化処理を受けさせられたときの最高責任者の名だったはずだ。

 それがここに載っているということは、

 ―――あいつ、元はジオンの人間だったってこと!?

「祐一、ちょっとこれって―――」

 言葉をかけようとして、しかし郁未の言葉はそこで止まった。

 祐一の驚き方が尋常ではなかったからだ。

 驚いて動きが止まっている、というだけではない。冷や汗・・・というか脂汗のようなものを浮かべ、しかも顔色が悪いのだ。

「ちょっと、祐一・・・大丈夫?」

 しかし返事はない。ただ愕然と・・・というより呆然と画面を凝視している。

 仕方なく、郁未ももう一度画面に視線を向けた。いったい祐一が驚いたのはどこなのだろうか、と。

 Aプランの下には、Bプランというものが書いてある。内容は、複製・・・クローンの研究だったようだ。その最高研究者の名は、霧島武。

「霧島・・・?」

 もしかして佳乃と関係あるのだろうか。確かに驚くべき部分ではあるだろうが、これでここまでにはならにないだろう。

 そうして最後のCプランというものに目を向ける。その研究内容は、

「・・・生産?」

 なんのこと、と疑問思いつつ、いままでと同じく横に記された最高責任者の名を見る。

「えっ・・・?!」

 そこでわかった。祐一は、これを見てここまで呆然としていたのだ。

 無理もない。なぜならそこに記されていた名は、

「・・・相沢、慎也」

 それは、

「・・・俺の、親父の名だ」

 呻くように吐き出された言葉。

 ・・・つまり祐一の父親は・・・そして祐一は、元々ジオンの人間ということになる。

「どういう・・・ことなんだ? どうして、親父の名前が・・・ジオンの研究施設に・・・? しかも生産って、一体なにを―――」

 バァンバァン!!

「!」

 唐突に施設内に響いた強烈な音。それは間違いなく、

「銃声!?」

 反射の動きですぐに銃を取り出す郁未だが、その横では未だに祐一が動きを見せない。

「ちょっと祐一! 敵よ、動いて!」

 しかし呼んでも揺すっても祐一は呆然としているばかりだ。

「あぁ、もう!」

 がしがしと頭を掻いた郁未は、祐一の腕を強引に取る。

 こっちとて混乱しているのに、これではおちおち考え事もしていられない。

 だが、祐一のほうがショックが大きいこともわかるし、いまの自分たちにとって彼の存在が欠かせないこともわかっている。だから、

 ―――いまは私が守らないと!

 そう強く思い、銃のセーフティを外した。

 祐一と共に近くの物陰に隠れ、突然の侵入者に対して構える。

 階下では、いまだに銃声が鳴り響いている。きっと自分たちと一緒に入った兵士たちだろう。

 ―――相手は・・・一人?

 感覚を研ぎ澄ませ、気配を辿る。感じたことのない気配はただ一つ。それを行く先で兵士の者と思われる命が次々と消えていく。

「痛っ・・・」

 人の死を感じ取ることは、ニュータイプであろうと強化人間であろうと、等しく苦痛となる。

 その鋭敏な感覚が、人の死すら認識してしまうからだ。だが、いまはそれも甘んじて受け入れよう。

 と、研究所の入り口付近からまた新たな気配。侵入者の増援か、とも思ったが、違う。この気配は、

『やはり追ってきたか、川澄舞!』

 その最初の侵入者の喜悦のような台詞のとおり、それは川澄舞のものだ。

 いったいどういう状況からこんなことになっているのか。郁未には全然わからない。ただわかることは、舞がこの何者かを追ってここに来た、ということだ。

「・・・」

 息を殺して経緯を探っていれば、舞の追う相手は何回かの銃撃の後、ここへと通じる階段に差し掛かった。

 ―――来る!

 カンカンカンと響く、軽く早い音はその相手が階段を上ってきている証明だ。

 故に郁未は壁から半身を乗り出し銃を構え、

「む!」

 相手の姿が見えた瞬間に撃った。しかし、相手はそれより刹那早くこちらの存在に気付き、こちらとは別の区画の研究室へと身を投げていった。

「ちっ!」

「上にもまだいたか!」

 もちろん弾は当たっていない。だがこちらの存在に気付かれた以上、もうこれ以上声を殺す必要もない。

「舞!」

「郁未!?」

 次に入ってきた舞を援護するように射撃し、自分たちの方へと舞を誘導する。

 しかし飛び交う銃弾にさすがにこちらには来れないらしく、階段からややこちら寄りの一室の影に身を潜めた。

「郁未、祐一は!?」

 祐一の姿が見えないのが気懸かりだったのだろう。だから郁未は安心させるような口調でしっかりと、

「大丈夫、無事よ。私の隣にいるわ」

「そう、良かった・・・」

 心底から安堵の息を漏らす舞だったが、その向こうから思わぬ声が飛んできた。

「祐一・・・? 相沢祐一か?」

「「!」」

 なぜその名を敵が知っているのか。だがそんな二人の疑問など知らぬという風に奥からは噛み締めるような笑いが聞こえ、

「くく、そうか。相沢祐一までいるのか。・・・どうやら神という存在は、私なんかよりよっぽど邪悪で底意地が悪いらしい。

 川澄舞、相沢祐一。そして私・・・。ここに全ての役者は揃ったわけだ」

 台詞の端々から滲み出る悪意。それに思わず身震いさせた郁未は横目で舞を見る。

「ちょっと、舞。あいついったい何者よ?」

「霧島聖、って名乗ってた」

「霧島聖って―――まさかネオジオンのあの『黒い天使』!?」

 とすれば、相手はネオジオンでも五指に入る最高ランクの敵ということになる。その事実に舌打ちし、しかし、

「・・・あれ?」

 そこでふと気付くことがあった。

「『霧島』・・・?」

 その姓。それを自分はついさっき見たばっかりで・・・、

「そうだ、その苗字・・・Bプランの最高責任者と同じ・・・!?」

「・・・なるほど。どうやらここのデータバンクを少しは覗いたようだな。

 ということは、相沢祐一の姿が見えないのはショックで打ち震えているからかな?」

「あんた・・・、やっぱりここの関係者なのね!」

 しかし一人事情のわからない舞はただ首を傾げ、

「・・・どういうこと?」

「良いさ、全て教えてあげよう。そう言って君にもついて来てもらったわけだしね、川澄舞?」

 そうして聖はまるで謳うように言い放った。

「では、呪われしパンドラの箱を開こう。そうすれば、君たちは全てを知ることとなるだろう。

 なぜならば―――ここには人の夢と絶望と業と愚かさ・・・そして私や君たちの過去が詰まっているのだからなぁ!」

 

 

 

 浩平、栞、風子の三人は件のガンダムの周囲を飛び回っていた。

 というのも、攻撃のあまりの鋭さに近づけないのだ。

「くそ・・・!」

 ―――あれには本当に長森が乗ってるのか・・・!?

 栞が言うには、この相手から瑞佳の気配がするというのだが・・・。

 そんなことあるはずはない。長森瑞佳は確か死んだ。死に逝く様をこの目で見て、この腕で感じたのだ。間違いは無い。

 だが、栞の感覚を信じていないわけでもない。彼女のニュータイプとしての力は信じるところだし、栞と瑞佳の仲も知っている。

 だからこそ、確かめたい。乗っているのが一体何者なのかを。

「くっ・・・!」

 一撃当たれば終わりとわかる強力なビームをかわし、ファンネルの怒濤のようなビームの嵐を掻い潜って浩平は徐々にその機体へと近付く。

 さすがと言うべきか。あの栞と風子ですら回避するので精一杯という状況の中で進めるというだけで『雷神』の恐ろしさがわかるというもの。

 距離は十分。浩平は近距離通信を開き、・・・複雑な心境のままにその名を呼んだ。

「長森・・・、そこにいるのは長森なのか!?」

 だが、返事はない。そのまま何度呼んでも声すら返ってこなかった。

 ―――やっぱり、長森じゃない・・・?

 そう考えた矢先、

『あう!?』

 通信越しに聞こえた悲鳴。それは、

「風子!?」

 どうやら左足に被弾したらしい。いつもの彼女ならかわしきれぬほどではないはずなのだが、精神的ショックが抜け切れてないのか、はたまた乗り慣れてない機体のせいか、わずかに当たってしまったようだ。

 だが、直撃でないことにホッとする浩平の目の前を、強烈な光の放流が通り過ぎていった。

「!」

 わずかに動きを止めた風子を仕留めるために放たれた躊躇いのない一撃。それは一直線に風子へと突き奔り、

「風子!?」

「風子ちゃん!」

 しかし直撃の寸前に栞に引き寄せられ事なきを得た。

 それに安堵するのも一瞬、浩平はキッとそのガンダムを見やり、

「やっぱりお前は長森なんかじゃない。長森は・・・あんなにあっさりと人を殺そうとなんてしない!」

 ビームサーベルを抜いて肉薄する。

 相手もメガビームサーベルを抜いてこれに応戦するが、わずかに反応が遅い。どうやら射撃に比べて接近戦の方が苦手なようだ。

 とはいえ、決して弱いというわけではない。それでも浩平とほぼ互角といったところだ。

 だが、相手は現在ファンネルを展開している。こちらよりも集中力を要しているだけ、ここではこちらが上手のはずだ。

 いけると判断した浩平はそのままラッシュ。数度の斬り合いの後、受けきれず浮いたビームサーベルの間を、浩平は見逃さない。

「貰った・・・!」

 勝機と見て、一気にビームサーベルを振るう。

 だが相手もやるもので、そこからの一撃をブースターを駆使してかする程度に抑え込んだ。

「さすがにガンダムのパイロットに選ばれるだけあって、一筋縄じゃいかないな。だが―――!?」

 そこからさらに追い討ちをかけようとビームサーベルを振り上げた浩平が、いきなり動きを止めた。

 表情は、驚きに包まれたまま止まっている。

「そ・・・んな・・・!?」

 呻く浩平の前方、そこにはいまの一撃によりコクピットの上部がわずかに裂かれたガンダムエターナルがあり、そこから見えるパイロットは、

「・・・なが、もり・・・?」

 パイロットスーツを着ていようが、ヘルメットをしていようが、折原浩平が彼女を見間違うはずがない。

 そこにいるのは、・・・間違いなく長森瑞佳だった。

 だがその少女は感情を思わせない無機質な瞳のままにこちらを見て、

「浩平さん!」

 栞の言葉も遅い。

 その頃には、浩平の機体をファンネルが貫いていたのだから―――。

 

 

 

オリジナル機体紹介

 

RX−90−0−A

ガンダムアークレイル・カスタム

武装:ハンドビームカッター×2

   ビーム型ブーメラン×2

   集束ビームライフル×2

   ビームサーベル

   超大型大出力ビームブレード

特殊装備:大機動用補助ブースター

     シールド

<説明>

 射撃もそれなりにこなせる風子のためにヒートダガーを取り外し、代わりにリアンダー・ゼオン用の集束ビームライフルを搭載したタイプ。

 その他は反応速度が若干向上したくらいで、あとは同じである。

 主なパイロットは伊吹風子。

 

RX−90−4−W

ガンダムウインド・カスタム(宇宙適用タイプ)

武装:ビームサーベル×2

   ビームライフル×2

   ガトリングガン×2

   頭部バルカン

特殊装備:変形

     プロペラントタンク×2

<説明>

 宇宙で活動できるように改造されたウインド。

 その他には若干機動性が上がった程度の差しかない。

 主なパイロットは美坂栞。

 

AMX−G−003

ガンダムエターナル

武装:メガビームサーベル×2

   ハンドビームガン

   ハイパーメガランチャー

   ファンネル

   頭部バルカン

<説明>

 ネオジオンが製作したガンダム三機のうちの一機。

 他の二体にも劣らない機動性とエネルギーを持っている。

 武装は量より質といった感じで、一つ一つが強力。

 主なパイロットは長森瑞佳。

 

 

 

 あとがき

 はい、神無月です。

 すいません、あれだけ今回全部の謎が明らかに、とか言っておきながらあまりの長さに前編後編に分けるという体たらくになってしまいました。

 でも、ここまで来ると妥協したくないんでお許しください〜(泣

 というわけで、今回はどちらかと言うと浩平大活躍? あとお一人お亡くなりになられました、合掌。

 さて、なんだかんだ言いながら、次回こそ本物です。謎が解かれます。今度こそ! だってもう王手ジャン!(ぇ

 こほん。というわけで、また次回に。

 

 

 

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