Episode V

           【かくもはかなき平和】

 

 ネオジオンの要塞、アクシズ。

 グリプス戦役をほとんど無傷で乗り越えたネオジオンは、しかし予断を許さない。

 今なおこの要塞の中では連邦やエゥーゴに完全勝利するために新しいMSや戦艦が開発、設計、生産されている。

 そのアクシズの中でも随一の広い空間。百メートル四方はあるだろう白い空間を、天井から下がる大きな照明が照らす。

 照明の下、浮かぶは三つの人影。

「まさか、お前たち二人が敗れるとはな」

 そのうち最奥に座る人物―――事実上ネオジオンの総帥であるハマーン=カーンはワインを傾けながらそう言った。

「すみませんでした」

 そう返したのは秋子。特に顔に変化は無い。

「こいつがあそこで引き返さなければ勝てたのですがね」

 皮肉たっぷりにそう言ったのは隣に立つ聖。初めての敗戦だ、人のせいにでもしなければやっていられないのだろう。

 ハマーンはふむ、と呟くと秋子に顔を向け、

「相手はそれほどに強かったのか?」

「はい。艦のクルーといいパイロットといいかなりのものです。倉田少佐と遠野少尉が言うにはそのうち三人はニュータイプのようです。

 まだ若いのでしょう、付け焼刃なところは多々ありましたが、場数を踏めば一流の集団になるといっても過言ではないでしょう」

「ほう、子供のニュータイプか。フフ、最近はよくよく縁があるな」

「ハマーン様?」

「いや、なんでもない」

 ハマーンは台座から立ち上がると、そのまま秋子たちがいる反対の方へと歩いて行く。

 そこにはアクシズ周辺の宇宙が一望できる大きなスクリーンがあった。ハマーンはそこをゆっくりと眺める。

「秋子」

「はい」

「その艦、お前に任せる」

「ハマーン様!?」

 その言葉に驚いたのは聖だった。

「こいつが行くのなら、私が行きます。私なら、必ず吉報を届けられるはずです!」

「聖。お前には私と一緒に地球に降りてもらう」

「地球・・・?」

「では、本格的に地球侵攻作戦を?」

 秋子が冷静に聞き返す。

「ああ。私もサダラーンで出る。ダカールを落としたときさらに士気を上げるためにもな。

 よって聖は私に同行してもらう。エゥーゴの茶々も入ることだろうし、地球のカンナヅキ級同型艦も気になるしな」

「わかりました。そういうことならお供します」

 聖の態度が急に変わった。おそらくハマーンと一緒に地球へ降りることの方が格が上だと考えたのだろう。

 見下すように秋子を見ていることが良い証拠だ。その秋子は特に何も感じていないようだが。

「では、私は地球へ降りる準備をします」

 聖は一礼すると一歩下がり体を反転させる。

「せいぜい頑張ることだな」

 秋子を一瞥し、聖はそのままその部屋を出て行った。

「聖はよほどお前のことが嫌いと見える」

「そうですね」

 ハマーンのその言葉に、しかし秋子は笑顔で答えた。

「すまないな。ああでもしないと聖は納得しなかっただろう」

「そんな、ハマーン様が謝ることではありません。負けたのは事実なのですから」

「いや、お前の状況把握能力は私の信頼するところだ。

 それに、お前を負かすほどの艦長が相手では、たとえ実力で勝っていようとも聖には任せられん」

 ハマーンはゆっくりと秋子のほうへと歩を進めると、その頬に手をやる。

「お前にはいつも迷惑をかける」

「ハマーン様の為、ミネバ様の為を思えばこそ、です」

 秋子の笑みに釣られてだろうか、ハマーンも笑みを浮かべる。

 そしてハマーンは秋子から離れると再び台座に座った。

「倉田少佐と天野中尉はガンダムのデータの引き出しに必要だから、アクシズに残ってもらうことになる」

「しかし、並みのパイロットではあの艦には勝てませんよ?」

「大丈夫だ。屈指のパイロットを四人与える。存分に使ってやってくれ」

「はい。では、私もこれで」

 秋子は一礼すると聖と同様一歩下がってから反転、そのまま部屋を後にした。

 

 

 

「祐一!」

 少女は祐一を見つけると、瞳に涙を浮かべて、一瞬後には走って思いっきり抱きついた。

「祐一、祐一・・・。良かった、無事で・・・」

「ばーか、それはこっちの台詞だ」

 祐一もその少女―――名雪を抱きしめる。

 その温もりに安心したのか、名雪は祐一の胸の中でわんわん泣き出した。

「名雪、良かった・・・」

「ほんっとにもー、心配させて」

「にはは、良かったです」

 そんな名雪に、舞と観鈴は優しい笑顔で安堵したように息を吐き、留美はいまだ祐一の胸で泣く名雪の頭を乱暴に撫で回した。

「ぐす・・・。留美、それに・・・川澄先輩?あと・・・」

「あ、そっか」

 舞と観鈴を見てきょとんとする名雪を見て祐一はそうか、と思い至った。

 どうして舞がここにいるのか、そして観鈴の存在を名雪は知らない。

「まぁ、いろいろあったのさ。それについては後で教えるよ。とりあえず・・・」

 祐一は名雪の頭に手を置くと、

「お帰り、名雪」

「うん、ただいま、祐一!」

 名雪は笑顔で答えた。

 

 

 名雪の乗った大破したジム・ストライクはネオジオンが撤退しておよそ三十分後に発見された。戦闘のせいでミノフスキー粒子は濃かったが、4バンチコロニーは過去にもこれといった戦闘はなく残骸が少なかったため、肉眼ではすんなりと見つかった。

 気絶していた名雪は医務室に運ばれた。観鈴が見たところ、幸いこれといった怪我もなかった。そしてさらに二時間が経った頃に、ようやく目覚めたというわけだ。

 クルーにここがカンナヅキの中であると聞いた名雪はすぐに医務室を出て館内を走り回り、作戦室へ。そして・・・先に至る。

 

 

「ふーん、そっか。神尾さんがわたしを看てくれたんだ。ありがとう」

 祐一たちの今までの事情を聞いて名雪は開口一番そう言った。

「にはは、当たり前のことですよ。あと観鈴で良いですよ、水瀬さん」

「あ、じゃあわたしも名雪で良いよ、観鈴ちゃん」

「はい、名雪さん」

 ほのぼのとした空気が二人を中心に作戦室を覆っていく。

 そんな光景を見ていた留美は思わず呟いた。

「この二人って雰囲気似てるわね」

「七瀬中尉もそう思うか」

 返してきたのは祐一だ。

「うん。あ、あとできれば私のことは階級をつけずに呼んでほしいの。なんか痒くなるから」

「あぁ、わかった。俺も呼び捨てで良いぞ」

「艦長、あまりそういうのは困ります」

 川口が注意するが、祐一は良いから、と笑顔で返す。川口もそんな雰囲気は嫌いではないらしく、それ以上言ってくることは無かった。

「それで、これからどうするの?」

 今まで黙っていた舞がそう切り出した。その言葉をきっかけに、作戦室から和やかムードが消えていく。

「そうだな・・・。とりあえず、カンナヅキの調整を終わらせないと話にならないよな」

「とすると、月のアナハイムですか?」

 川口が口にする。

「一応、地球の日本基地でもできるだろうが・・・、あまりにも遠いよな」

「この場での調整は無理なんですか?」

 観鈴が『どろり農耕ピーチ味』をちゅーちゅー吸いながら聞いてくる。

「うーん、折原少尉や舞がいるから調整する人間は間に合ってるけど・・・パーツが無いからな」

「いや、パーツがあっても二人じゃきついって」

 浩平は無理無理と手を振る。

「だとしたら、どの道アナハイムに行かないと」

 名雪がそう言ってくる。

「・・・だな」

「では、進路は月でよろしいですね?」

「ああ。そうしよう」

 了解しました、といって作戦室を後にする川口を目で追いながら斉藤が、

「でも確かあそこって今ペズンが反乱起こしてましたよねぇ」

 そう言ってはぁ、とため息を吐いた。

「あれはエアーズ市の方だろ」

「でも同じ月であることに変わりは無い」

 そんなの関係ないと言いたげな浩平に対し、舞は慎重だ。

「ま、どうにかなるさ」

 しかし祐一はいたって楽天的だった。

「祐一〜、そんなのでいいの?」

「巻き込まれなければそれで良し。巻き込まれたら討伐隊と一緒に戦うまでだろう?同じ連邦なんだし」

「そうですね。祐一さんの言うとおりだと思います」

 にこっと笑う観鈴。祐一はそんな観鈴に向かって、「だろう?」と笑って見せた。

 もう、とぼやきつつも名雪も笑顔だ。そこにいるみんなも同じような表情だった。

「さて、月まではざっと四日ってとこか。何もなければ良いがな」

 そう上手くいくかな、なんて考えている祐一だった。

 

 

 

 アクシズの宇宙港の一つでは、カンナヅキとの戦闘で傷ついたグワンランの修理が急ピッチで進められていた。

 グワンランブリッジ。秋子は再びカンナヅキを追うため部下に指示を飛ばしていた。

「水瀬大佐。カタパルトの修理完了しました」

「はい、ご苦労様です。格納庫の方はどうですか?」

「あと少しのようです。それで、積むMSは?」

「ガザDで統一してください」

「では、ガザDが十六機でよろしいですね」

「いえ、十二機でお願いします。ハマーン様から四人パイロットが送られてきますので。そのうちその人たちのMSも搬入されると思いますから」

「了解しました」

 兵士はリストに何かを書き込むと一礼して下がっていった。

 それとすれ違うようにブリッジに入ってくる四つの人影。その先頭にいる気の強そうな長い紫髪の少女が秋子と目が合う。

「あなたは?」

 秋子の言葉にその少女は敬礼をしてくる。後ろにいたほかの三人も続いた。

「初めまして、水瀬大佐。このたび水瀬大佐の指揮下に入ることになりました藤林杏中尉です」

 藤林杏と名乗った先頭の少女は、敬礼をしながらもその勝気な笑みを崩さない。

 ―――私のことを探っているのかしら・・・。

 自分に向けられたその笑みの意味を探るが、まだ出会ったばかりではわかるわけも無かった。

「ほら、あんたたちも大佐に自己紹介しなさい」

 杏は後ろにいる三人にそう急かした。

「え、えと・・・」

 杏と同じ紫髪の少女が、緊張したように前に出てくる。

「あ、えっと・・・、あの、私、藤林椋中尉です」

「藤林、ですか?」

「ええ。椋とあたしは双子なんです。似てるでしょう?」

 確かに、よく似ている。せいぜい違うのは髪の長さだけで、それ以外は瓜二つだ。

 けれど、きっと髪形が同じでも二人を間違えることは無いだろう、と秋子は思う。二人から感じる雰囲気はまるで正反対だから。

 そして秋子は残る後ろの二人に目を向けた。

「お名前は?」

 聞かれ、カチューシャをしたかわいらしい少女が一歩前に出てきた。

「ボ、ボクは月宮あゆです。階級は曹長」

 そのあゆの後ろに隠れるように立つ、小柄なあゆと比べてもさらに小さい青い髪の少女。

「・・・志乃さいか。・・・曹長」

 ―――この子がパイロット? ・・・見た目まだ十歳にもなっていないこの子が?

 秋子はかすかな衝撃を覚えた。さいかと名乗ったその少女はどう見ても十歳を下回るような歳だ。最近は十代のパイロットも増えたとは言え、ここまで若いのは初めて見た。

「この二人は新しくできるニュータイプ部隊からここに派遣されてきたんですよ」

 そう言って杏は二人の頭をぽんと叩く。その行為が嬉しいのか、あゆはくすぐったそうに笑みを浮かべる。さいかは子供扱いされたと思っているのか、少しむくれている。

 そんな二人を見ながら、杏は優しい笑顔を浮かべていた。

 どうやら杏は見た目と違い世話好きのようだ。保母さんなんて合っているのでは、と思う。

「それで、水瀬大佐」

「秋子で良いですよ」

「・・・は? いや、でも上官を呼び捨てにするのはちょっと・・・」

「私の指揮下の人にはみんなそう呼んでもらっていますから」

 はぁ、と頷く杏。

 秋子の艦隊はアットホームな雰囲気として有名だった。秋子の隊に所属する人間のほぼ全員が秋子を慕っており、アクシズの中でも随一のチームワークを誇る。

 ―――地位の高さを鼻にかけないところが受けてるのかと思ってたけど・・・それだけじゃないみたいね。

 実は杏はハマーンから秋子の隊へ配属になると聞いたとき、少なからずの期待を持っていた。アクシズでも有名な秋子とはどんな人間なのだろう、と。

「それで、杏ちゃん」

「き、杏ちゃん!?」

 いきなりの呼び捨てに杏は思わず大声を出してしまった。その馴れ馴れしさもそうだが、なによりちゃん付けで呼ばれたことに驚いた。

「あら、その呼び方はいけなかったかしら?」

「あ、いえ、別に構いませんが・・・」

「本当に? 上官だからって気にしなくて良いのよ。嫌なことは嫌と言ってね」

「・・・はい。でも、本当に構いません」

 杏は自分でも気付かずに笑っていた。秋子に会って、直に話をしてみてわかった。どうして秋子はみんなに信頼されるのか。

 母親のようなのだ。そして、ここの雰囲気は家族のように温かい。

「それで、杏ちゃん。今、何か言いかけてなかったかしら?」

「え、あ、はい」

 思考に埋まっていた杏の意識が秋子の言葉に元に戻る。杏は数回頭を振ると、再び秋子に視線をやった。

 そこにさっきまでの笑みは消えていた。そこにあるのは、純粋な戦士の顔だ。

「秋子さん。MSであたしと戦ってほしいんです」

「私と、ですか?」

 ぱちくりと目を動かす秋子。

「はい。秋子さんは今でこそ艦隊指揮しかしていませんが、昔は名を轟かせたMSパイロットだったとハマーン様より聞きました。

 あたしは、自分より弱い指揮官につく気はありません。だから、お願いします」

 言って、杏は頭を下げた。

 後ろから「お姉ちゃん!?」と驚く椋の声が聞こえたがあえて無視をした。

 顔を上げると、秋子は困ったような顔で頬に手を添えていた。

「本気ですか?」

「本気です」

 秋子はしばらく杏の目を見つめ、諦めたように小さなため息を吐いた。

「MSはどうします?」

「戦ってくれるんですね!」

「仕方ありません。杏ちゃんの目を見れば諦めてくれないことはわかりましたから。上には模擬戦をすると連絡しましょう」

「ありがとうございます。まだ私のMSが届いてないので、ガザDでやりましょう。それに同じMSの方が実力差が良くわかりますから」

「了承」

 秋子は副官に模擬戦の申請をさせると、ガザDに乗るべくデッキへと足を進めた。その背中をしばらく見つめ、

「ハマーン様もだいぶ目にかけているようだったし・・・。その力、見せてもらうわ」

 杏も秋子に続いていった。

 

 

 アクシズから二機のMSが放たれる。

 秋子と杏の乗るガザDである。

 二人は一定の距離をとると、お互い対峙した。

「秋子さん。手加減なんてしないでくださいね」

『はい。そうしましょう』

 しばしそのまま対峙する両機。そしてアクシズの方から模擬戦開始の信号弾が撃たれ―――、

「一気に畳み掛ける!」

 先に仕掛けたのは杏だった。

 杏の乗るガザDのナックルバスター(無論、中身は模擬弾)が吠える。だが、

「え、それた!?」

 杏の放ったナックルバスターはわずかずつだが、ずれて秋子機を通過していった。

 杏はアクシズの中でも射撃の能力ならトップクラスに入る実力の持ち主だ。それが牽制でもない、最初から堕とすつもりで放った攻撃が外れたのだ。

 それでも杏は撃ち続けた。しかし、やはり攻撃は当たらない。

「なに、これ・・・。どういうことよ?」

 いつの間にか杏の顔は青ざめていた。

 最初は整備不良だと思った。射線がずれていて、わずかにそれるのだと。しかし、いくらずれた射線を修正しようとしても、まったく秋子に当たらない。

「違う。射線がずれてるんじゃない。これは・・・」

 杏がその事実に近づいたとき、秋子のガザDが突如こちらに突進してきた。

「くっ!」

 接近を阻止すべくナックルバスターを撃ちまくるが、やはり全弾外れる。いや、そうではない。

「全弾、かわされてる!」

 そう。杏の攻撃は全てかわされていた。

 秋子は必要最低限の動きで杏の攻撃を回避していた。そのあまりの動きの少なさに、傍目から見るとまるで攻撃の方がそれたかのような錯覚を見せるのだ。

「どうやら気付いたようですね」

 秋子はコクピットの中で杏の感情の変化に気付いていた。しかし、だからといって秋子に手を抜くつもりは無い。

「それは失礼なことですから」

 秋子のガザDがさらに加速する。このスピードの中でも秋子の絶妙な操縦は狂わず、杏の必中の攻撃をかわしていく。

「こんな・・・!」

 あまりの実力差を見せ付けられ歯噛みする杏。もう勝敗は見えているが、せめて一矢報いなければ気がすまなかった。

 杏はビームサーベルを抜き放つと、自らも秋子に向かって行く。

「接近戦なら!」

 杏はさほど接近戦が得意なわけではない。が、あのままいくら撃ち続けても当てられるとは思わなかった。二人が接近を始めたことで、距離が詰まるのはほぼ一瞬。杏は秋子にビームサーベルを振り下げようとして、

「え・・・」

 その視界から秋子のガザDが消えていた。

 慌てて秋子機の姿を探すが、見つからない。と、いきなりレーダーが警告音を上げる。それを見、杏は驚愕する。

「上!?」

 急いでそちらを見やり・・・そこで勝負は終わった。

 モノアイの目の前に映るのは秋子の駆るガザDの手。ナックルバスターを撃たれたら間違いなく撃墜される距離だ。

『終わり、ですね』

 声とともにモニターに映る秋子の顔。あれだけの動きをしたのにまるで息を乱していない。

 杏はしばらくボーっとしていたが、そのうち大きく笑い始めた。

 きょとんとする秋子に、さらに杏は笑いを強くする。

「あはははは、秋子さん、強すぎだって。あはは、もう悔しい通り越して清々しいわ!あはは!」

『満足していただけました?』

「満足も満足です」

 やっと笑いが止まり、秋子に顔を向ける。笑いすぎて腹が痛いのか、手で押さえているが。

「秋子さん。あたしはね、パイロットのことを何も知らない指揮官の下で動くのは嫌だったの。そういうやつらに限ってあたしたちパイロットをまるで消耗品のように扱うから。だから、あたしは自分よりパイロットとして優れている人の下でしか働かないと決めたの」

『そうですか』

 優しい秋子の笑顔。それを見て、杏はこれからの日々を楽しみに思った。

『これからよろしく。杏ちゃん』

「任せてください!」

 

 

 

 カンナヅキが月に進路をとって丸一日。

 そんな中、祐一は艦長室でコーヒーをすすっていた。

「平和だな」

 あれからこれといったことは起きていない。あの艦は今頃アクシズに戻って修理の真っ最中なのだろう。

「新しい追っ手が来ないところを見ると、諦めたのか。あるいは、それどころじゃないのか・・・」

 おそらく後者だろうな、と祐一は考える。

 情報では、近々ネオジオンの大々的な降下作戦が始まるらしい。それに伴い戦力を割く余裕がないのだろう。エゥーゴがその作戦を阻止すべく動いているとの話もある。

「とすると、やっぱりあの艦が来るんだろうなぁ・・・」

 4バンチで戦ったあの艦。おそらくあの艦がカンナヅキを追ってくるだろう。

「・・・どう計算しても追いつかれるよな」

 あの艦はサイド6からアクシズに行くまで大体半日程度。そこから修理と補給で半日から丸一日。そこからはずっとカンナヅキを追ってこれる。

 対するカンナヅキはこのまま行ければ逃げ切れるだろうが、そろそろ推進剤が切れる頃合だ。

 よってどこかで補給をしなくてはいけないわけだが、ここら辺のコロニーには連邦を嫌う人間が多い。

 アクシズが近いから仕方なのだが、その交渉で一日からそれ以上。そこから修理と補給を受けてと考えると・・・、間違いなく追いつかれる。

「どうしたもんかな」

 正直、前回勝てたのは偶然だ。奇襲が上手いぐらいに成功し、観鈴という予想外の戦力が加わったおかげで何とか勝てただけだ。

 向こうも次は奇襲になんかかかってくれないだろうし、観鈴や留美の力もわかっている。それを踏まえた戦い方をしてくるだろう。

「腹をくくるしかないか・・・っと!」

 そう言って、勢いよく椅子から立ち上がる。背を伸ばすと、骨が鳴った。疲れてるなー、とぼやくがそうも言っていられないのが艦長の仕事だ。

 艦長室を出ようと扉へ向かったとき、通信が鳴ったのに祐一は気付いた。いったんデスクの方まで戻り通信端末を開く。

「はい?」

『ああ、祐一か?俺だ』

「なんだ浩平か。どうした」

 実にフレンドリーにファーストネームで呼び合う二人。

 実は以前の会議から階級をつけた呼び方をやめた人間が多くいたのだが、この二人もその流れで仲良くなっていた。よくよく考えればカンナヅキの中で数少ない同世代の男子だ。すぐに意気投合できた。

『ああ。観鈴ちゃんが乗ったジムVあっただろう?あれ、改造したんだ。見に来てくれ』

「改造?おいおい、艦長になんの断りもなしに・・・」

『観鈴ちゃん用のカスタマイズだ。どの道観鈴ちゃんを乗せる気だったんだろ?なら、良いじゃねえか』

「まぁ・・・な」

『つーことで、機体の説明するからよろしく』

 浩平は言うだけ言うと一方的に通信を切った。その光景に、祐一は苦笑いする。

「まったく、勝手な奴だ」

 やれやれ、とこぼし祐一は今度こそ艦長室を出た。

 

「遅いぞ、祐一」

 格納庫に入ってきた祐一は、浩平のいきなりの文句に迎えられた。

「今更だけどさ、お前って遠慮ないよな」

「なにが」

「いや、なんでもない」

 名前で呼んでも良いとは言ったものの、一応祐一は上官だ。少しは遠慮してもよさそうなものだが、そこは浩平の性格なのだろう。

 そんな浩平の性格も嫌いではないが。

「それで、観鈴用の機体って?」

「ああ、これだよ」

 浩平は自分の後方を指差す。そこに聳え立つのは黒きMS。

「これ・・・か?」

 祐一が聞き返してしまうのも無理はないだろう。そこにあるMSはどう見ても観鈴のイメージには程遠い機体だ。

「背中につけてある四基の大型スラスターでジム・ストライク以上の機動性を実現させた。武装も極力少なくしてある。機動性を重視したぶん、装甲が薄くなってる。そこは観鈴ちゃんの抜群の回避能力に依存しちまってるが、まぁ、良くも悪くも観鈴ちゃん専用の機体だな」

 その黒いジムの背中から生えた大型スラスターは、見た目二対の翼のようだ。

 祐一の考えを読み取ったように浩平は、

「翼みたいだろ? だからこの機体はジム・クロウと名づけた」

「クロウ・・・? なんでカラスなんだ」

 翼があるからと言うなら、カラスじゃなくても良いはずだが。

「観鈴ちゃんが昔カラスを飼っていたんだと。だから、カラーリングもそれに合わせて黒にした。こういうのは気分がのったほうががいいからな」

「ふーん」

 そんなものなのだろうか。祐一はパイロットではないから、そういうところはよくわからなかった。

「ま、いいさ。だけど、これから機体を改造するときは俺に一度断ってからにしてくれ」

「了解。すまなかったな」

 祐一はもう一度ジム・クロウを見上げると、浩平に手を挙げて格納庫を後にした。

 

 

 

「さー、ちゃっちゃっと支度しちゃう!グワンランの修理はあと小一時間程度で終わるのよ」

 ここはアクシズの中にある居住区である。

 秋子との模擬戦が終了した後、四人はそこで正式にグワンランに乗り込むための支度をしていた。

「うぐぅ、杏さん、秋子さんに負けてからすごくご機嫌だよ」

「おかしいです。お姉ちゃんはすっごく負けず嫌いなのに・・・」

「あまりにも簡単に負けたから壊れちゃったのかも、です」

「ちょっと三人とも、お喋りしてないで手を動かす!」

「「「はーい」」」

 四人の家はアクシズ居住区の中でもほぼ同じ地区にある。

 杏はとっくの昔に準備が終わっているのだが、椋、あゆ、さいかの三人はあれだこれだと荷物が増えていくのであった。やはり女の子である。いや、決して杏が女の子でないと言っているわけではない。

「なんか今さらりとむかついたわ」

「お姉ちゃん?」

「独り言よ。それより終わったの?」

「私とさいかちゃんは終わったけど、あゆちゃんが・・・」

 椋の振り向く先に、おたおたするあゆの姿があった。

「どうしたの?」

「うぐぅ、どこにも無いんだよ」

「ない?」

「うぐぅ〜、おかしいな。ちゃんと買っておいたのに」

「なにを」

「鯛焼き」

 杏が固まる。研究所の関係で付き合いの長いさいかはあゆの好物を知っているからわかるが、杏や椋からすれば鯛焼きを鞄に入れようとするあゆの思考が理解できなかった。

「そんなの・・・しばらく我慢すれば良いじゃない」

「うぐぅ、なに言ってるの杏さん! ボクにとっては切実な問題なんだよ!」

 さいかにはわかる。鯛焼きがあるのと無いのであゆのテンションはがらりと変わる。研究所でもあゆのテンションを上げるがために鯛焼きを大量購入したほどだ。

 しかし、そんなことを杏たちが知るわけも無い。

「ほら、さっさと行くわよ」

「うぐぅ、待ってよ! 確かに買ってここに置いたんだよ。あっ、杏さん、首根っこ掴んでどうする気? 

 ね、なにその笑みは? うぐっ! 引っ張らないで、引きずらないで! ボクの鯛焼きが、うぐうぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・」

 と、言うわけであゆは杏にずるずると引きずられて部屋から消えていった。

「・・・私たちも行こうか、さいかちゃん」

「はい。そうしましょう」

 あきれたように息を吐くと、椋とさいかも二人に続いていった。

 ちなみに鯛焼き消失事件の犯人はさいかである。この数時間前にさいかが完食していたのであった。

 

 

 アクシズの街を異様な四つの人影(特に前の二人)が歩いていく。

「ねぇ、お姉ちゃん・・・」

「ん、なに、椋」

 自分たちの家を出てからおよそ十分。それまでは話しかけなかった椋だったが、もはや他人のふりも限界だった。

「そろそろさ、あゆちゃん引きずるのやめない?」

「これ?」

 杏の指差した先。そこには小さな声で「うぐぅぅぅ・・・」と呻きながら引きずられているあゆの姿があった。

「だって離すと鯛焼きー、とか叫んで走り出しちゃうじゃない」

「でもね、お姉ちゃん・・・」

 もともと目立つのが好きじゃない椋にとって、道行く人に指をさされ、ひそひそ話をされるのはたまらなく恥ずかしいことだった。さいかは気にしてない、と言うか最初から我関せずといった風に距離を置いている。

 そうやって椋が杏を何とか説得しようと試行錯誤していると、不意に見たことのある少女の姿が視界をよぎった。

「あ、宮沢さん」

 椋の声に少女は一瞬ビクリと反応し、こちらに振り向いた。

「椋さんに、杏さん・・・。こんにちは」

「こ、こんにちは」

「こんにちは、宮沢さん」

 二人がそういって挨拶した人物、その少女の名は宮沢有紀寧。ネオジオンのアイドル的存在である。

 有紀寧の父はネオジオンの官僚で、戦争反対の意思を貫き通している数少ない人間のひとりである。有紀寧自身も戦争の無い世界を、をテーマに芸能人として活動していて、その温かな笑顔のファンはかなり多い。

 が、皮肉なことにその人気は兵士の士気を上げることになっており、戦闘の苛烈さは日に日に増加の一歩をたどっている。

「今日はお散歩ですか?」

「ええ、まぁ・・・」

 たずねる椋に、有紀寧は曖昧な笑顔で返した。

「どうしたの、宮沢さん?」

 その様子に、怪訝な表情でたずねる杏。

「いえ、なんでも無いですよ」

 杏と椋、有紀寧は昔同じ高校に通っていた。あまり深い付き合いでもなかったが、それなりに話をしたこともあった。そんな杏でもわかるほど、有紀寧は元気が無かった。

「これから、出撃ですか?」

 有紀寧がたずねてくる。

「うん。連邦の新造戦艦を叩く任務に就いたの」

「そう・・・ですか」

 有紀寧は見た目に落胆する。

 杏の知る有紀寧は、いつも笑顔を絶やさない人間だった。それが、どうしたと言うのだろう。

「ねぇ、宮沢さん。本当に大丈夫?」

「・・・いえ、戦いはいつまでたっても終わらないのかと思いまして」

 有紀寧は戦争がまだ続いていることに悲しみを覚えているのかもしれない。

「・・・そうね。だから早くこんな戦争を終わらせるためにもあたしたちは戦う」

 だから杏はそう言って親指を立てた。安心させるために。

「・・・・・・」

 それでも有紀寧の顔にいつもの笑顔は浮かんでこない。今は何を言っても無駄かな、と思う。

「さ、行くわよみんな。そんなにのんびりしている暇も無いからね。それじゃ、宮沢さん。また」

 最後に杏は有紀寧に笑顔を向けると、一応有紀寧も笑顔を返してくれた。それは、まだどこかぎこちなかったが、やはり宮沢さんは笑っているのが一番だな、と杏は感じた。

 

 

 有紀寧は去っていく杏たちの背中を見つめている。その顔から笑みは消えていき、その瞳に宿るは、悲しさ。

 ―――違う。

 違う。有紀寧の考えている平和はそうではない。杏の言うようなどちらかが勝利し、敗北するといった戦争の終結では意味が無い。それでは、いつか再び戦争の火蓋は切って落とされるだろう。

 有紀寧の望む平和は、真の戦争終結。スペースノイドだとかアースノイドだとかいった隔たりを失くし、同じ人間として、誰もが手を取り合える世界。

「そうだよね、お兄ちゃん」

 自分と、そして今は亡き兄との決約。

 だから、わたしは笑っていよう。諦めず、真の平和に向かって。

「わたしは頑張りますよ。朋也さん」

 そして有紀寧は再び歩き出す。今は、動くときだから。

 

 

「あれは・・・、有紀寧さん」

 ガラスの向こうを歩いていく少女。間違いない。あれは宮沢有紀寧だ。

「どうしました、佐祐理さん?」

「いえ、あそこに有紀寧さんが歩いていたので」

 ここはアクシズ居住区にある洒落た喫茶店。そこで佐祐理は美汐と紅茶を飲んでいた。お気に入りの窓際の席。外の風景が見えるこの席が佐祐理は好きだった。ふと、佐祐理が外に視線を向けたとき、そこを有紀寧が通り過ぎたのだ。

「有紀寧さんとは・・・、あの宮沢有紀寧さんのことですか?」

「ええ。多分、美汐さんの考えているとおりの有紀寧さんですよ」

 美汐も佐祐理の視線を追って外を眺めてみる。すると、確かにそこによくテレビで見る姿があった。そして建物の角を曲がり、やがてここからは見えなくなった。

「確かに宮沢さんでしたね。佐祐理さん、知り合いなのですか?」

「はい。ネオジオンの官僚同士が開いたパーティーでお会いしたのがきっかけで、仲良くさせてもらってます」

「そうなのですか」

 佐祐理にとって、ネオジオンの中で数少ない心休まる相手だ。話も合うし、何より有紀寧はすごく良い人だ。

「あの人の掲げる戦争終結による平和は私たち兵士の励みになりますからね」

「そう・・・ですね」

 美汐の言葉に、佐祐理は苦笑いを浮かべる。

 有紀寧が言っている平和の意味はそうではない。だが、戦場で戦う兵士はそのほとんどがそういう受け取り方をする。かく言う佐祐理も有紀寧と話をするまではそうだと思っていた。

 有紀寧の提唱する平和は確かにすばらしい。だが、有紀寧の言うことは理想の空想論に等しい。それができたなら、自分たちは今頃戦ってはいないはずだ。

 ―――でも、有紀寧さんの言う平和が実現すれば、佐祐理は舞と戦わなくてすむ・・・。

 佐祐理はハッとして、頭を大きく振った。

 ―――何を考えているの、佐祐理。ついこの前舞を撃つと心に決めたのに!

「佐祐理さん・・・、どうしました?」

 佐祐理が視線を上げると、怪訝そうな美汐の顔が見えた。無理もないだろう、いきなり頭を振り出したのだから。

「あはは、なんでもないですよ。なんでも、ね」

「・・・そうですか。なら、良いのです」

 美汐はそう言うと、目をつぶり紅茶に口をつけた。

 気を使わせてしまったかもしれない。それでも、そうやって信頼してくれる美汐が佐祐理は好きだった。

「さ、美汐さん。ショッピングに行きましょう」

「ショッピング、ですか?いや、しかし・・・」

「ほーら!」

 そう言って佐祐理は美汐の腕を引いて立ち上がらせた。佐祐理の顔に浮かぶは笑顔。その笑顔を見て、美汐もいつのまにかつられて笑っていた。

 

 

 その頃、杏たちはグワンランのある宇宙港についていた。見たところ、外で作業をしている者はいない。どうやら外壁の修理作業は終わっているようだ。

「予定より早く行けそうだね、お姉ちゃん」

「そうね」

 四人はそのままグワンランに搭乗すると、MSの格納庫へと向かった。

「あ、あたしたちのMSも来てるわね」

 杏の見上げた先には、ハンガーにつながった四機のMS。

 真ん中にある二機は杏と椋の機体で、名をジャムル・フィンと言う。接近武器は持っていないが、腹部にあるハイメガキャノンの威力は現段階でのビーム兵器ではトップクラスをいっており、二人の射撃の腕と併せると脅威となる。

 そして両端にあるのは、あゆとさいかの機体であるキュベレイMkUだ。オレンジ色の機体ががあゆで、青いカラーリングの方はさいかのものだ。

 こちらの調整ももう終わっているようだ。

 四人は自分たちのMSを確認すると、秋子がいるはずのブリッジへと向かった。

 

 

 ブリッジに入った杏たちの目に映ったのは、せわしなく動き回るクルーの姿。そしてそれに指示を飛ばす秋子だった。

 杏たちはクルーたちの邪魔にならないように秋子に近づいていった。

「秋子さん。グワンランの出港準備、どうですか?」

「あ、杏ちゃん。ええ、そろそろ出航できますよ」

 秋子は杏たちの方へと振り向いて笑顔を見せた。秋子も疲れているだろうに、そんなそぶりは微塵も見えない。

 そんな秋子に心の中で敬意を称し、杏は当面の動きについて尋ねた。

「連邦の新造戦艦の居場所はわかってるんですか?」

「あの戦艦はまだ調整が終わっていません。おそらくは月に向かってアナハイムで最終調整を受けるでしょう」

「と言うことは進路は月ですか?」

「そういうことになりますね」

「・・・追いつけるんですか? 向こうはもう月に向かっているんですよね?」

「私は、追いつけると思うよ」

 杏の疑問に答えたのは以外にも椋だった。

「どういうこと?」

「さっき、秋子さんはその艦の調整が終わってないって言ってたよね。そんな艦にサイド6から月に行くまでの推進剤は無いと思うの」

「あっ、なるほど」

 ぽん、と手を打つ杏。あゆとさいかも感心したようにしきりに頷いている。

「椋ちゃんは着眼点が良いわね」

「え、あ、っと、あ、ありがとう・・・ございます」

 しどろもどろな椋。顔は真っ赤だ。

「それでは、これから連邦の艦はどうすると思いますか?」

「は、はい。えっと、おそらくどこかのコロニーで補給活動をすると思います。ですが、サイド6から月までのルートにあるコロニーはそのほとんどがネオジオンよりですから、ここで時間をとられるはずです」

 おおー、と声を上げて拍手する三人。秋子は満点です、と満足そうな笑顔を浮かべた。無論、椋は照れて赤くなっている。

「水瀬大佐。艦の調整、全て整いました」

「はい。ご苦労様です」

 作業員の言葉を聞き、秋子は四人の方を見やる。四人は黙って頷いた。

 秋子は船首の方へと向き直ると、片手を挙げ、勢いよく降り下げた。

「グワンラン発進。目標、月、アナハイムです」

 

 

 

「艦長。補給をしてくれると言うコロニーが見つかりました」

「やっとか・・・」

 艦長のシートに深く寄りかかり、祐一は思わず大きなため息を吐いた。

 あれからさらに一日がたっていた。推進剤の量はもはや風前の灯となっており、今では節約のため慣性の法則を利用した自由航行に身を任せていた。

「それで、どこのコロニーだ?」

 川口ははいと頷くと、コンソロールを操作して、

「・・・はい、確認取れました。サイド3。第12番コロニー、通称アルペロンコロニーです」

 そう言った。

 

 

 

オリジナル機体紹介

 

RGM−86R−C

ジム・クロウ

武装:ビームライフル

   ビームサーベル

<説明>

 浩平が観鈴用に設計、製作したMS。

 基本はジムVだが、外壁はもはやまったくの別物。何よりもスピードを重視した設計になっており、ニュータイプでもないと反応ができない。

 四基の羽のようなスラスターからなる超スピードを実現させるため、ジェネレーターはそのままスラスターに直結。装甲も薄く、武装も少なくし重量を抑えているので、火力は弱い。

 黒き四基のスラスターから火花を飛び散らし、捕捉できないスピードで戦場を駆ける姿から「漆黒の翼」と呼ばれるようになる。

 主なパイロットは神尾観鈴、霧島佳乃。

 

AMX−004−5

キュベレイMkU[あゆ仕様]

武装:ビームサーベル

   連装ハンドランチャー×2

   ファンネル

<説明>

 ハマーンの乗るキュベレイの後期発展型として作られたMkUのうちの一機。

 カラーリングはオレンジ色になっている。

 主なパイロットは月宮あゆ。

 

AMX−004−6

キュベレイMkU[さいか仕様]

武装:ビームサーベル

   連装ハンドランチャー×2

   ファンネル

<説明>

 同じくMkUのうちの一機。

 カラーリングは青色になっている。

 主なパイロットは志乃さいか。

 

 

 

 あとがき

 ども、神無月です。

 第三章。今回は主にネオジオンの方にスポットが当たっています。終わり方でわかると思いますが、次回は連邦(祐一たち)よりの話になります。

 CLLANADの面々もちらほらと見えはじめ、これで残るはMOONのメンバーのみとなりました。が、この人たちはまだもうしばらく出番はありません。そんなこと言ったら不可視の力で滅殺されそうですが、こればっかりは話しの流れがあるので。MOONファンの皆様、もうしばらくお待ちください。

 ところでみなさんは今回出てきた「志乃さいか」をご存知でしょうか?

 Air本編(観鈴ルート)に出てきた、あの迷子の少女です。本編では立ちCGがなく、あげく名前は「しのさいか」とひらがなでしか紹介されなかった彼女です。この作品中で「青い髪」と記しましたが、あれは、さる同人ゲームでそういうCGがありましたのでそのまま使わせていただきました。

 あと、名字の漢字ですが、あれも作品の関係上ひらがなではおかしいと思ったので勝手につけさせていただきました。「誰やねんこいつ」と思った方。そういうわけです。そして彼女はこれからメインヒロインばりの活躍をする予定です。ふふふ、乞うご期待。

 さて、次回はあの人とあの人が登場します。えっ、わからないって?

 ではヒント。魔法とヒトデです(笑)。

 

 

 

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