祐一と巴は明日の仕事に備え来栖川邸の一室で休息を取っている。

 部屋は最高級ホテル並の内装だ。

 敷かれたビロードの絨毯に天蓋つきの巨大な二つベッドとソファーセット。

 バスルームと簡易キッチンまでついている。

 この部屋は祐一と巴専用の部屋なのだ。

「それにしてもBAか。まさか外海にもあるとはなぁ」

「ですねぇ。暗黒城内でも使用していた者もいましたし」

「使っててもお前は瞬殺してたよな」

「祐一さんもじゃないですか」

 ブルルル……ブルルル……

 他愛無い話をしていると、バイブに設定している祐一の携帯が震えた。

 祐一は着信者を確認し、電話に出る。

『あ、相沢? あたし、眞子だけど……』

「お掛けになった電話番号は現在――」

 相手が自分のよく知っている人物なのでボケに走る。

『は?』

「――抹消されています」

『あんたはスパイかッ!!』
「貴方はスパイですかッ!?」

 予想通り、ツッコミを入れてくれた相手――水越眞子に見えていないが親指をビシッと立てて褒め称える。

「流石は眞子。見事なツッコミだ! 褒美にお前にはツッコミ女王の称号をくれてやる!」

『いらないわよそんなモン!』

「つれないな。綾香も拒否したからお前ならって思ったのに……」

『綾香? あんた綾香のトコにいるの?』

「いや、いないぞ。前に拒否られたからそう言っただけだ」

 ――今、まさに来栖川邸にいるじゃないですか、と巴は突っ込んだが、電話の向こうの相手には聞こえなかったようだ。

 ちなみに眞子と綾香は同じ師の下で【最源流・気功闘法術】を学んだ同門でもある。

『じゃあ、今どこにいるのよ?』

「綾香の家だ」

『今いないって言ったじゃない! あんた人をバカにしてんの!』

「そんなつもりはない! ただからかってただけだ」

『あんた今度会ったらブッ殺す……でも、今謝るなら半殺し済ましてあげるわ』

 どんどん祐一のペースに流されていく眞子。

 この程度のことで殺すと言う彼女もある意味凄いが、二人の会話はある意味いつも通りだったりする。

「すーいーまーせーんーでーしーた。反省してまーす。許して下さい。これでいいか?」

 素直に謝るが、全然感情がこもっていない。

 心にもないことは人を不快にするから言ってはならないことを知らないのだろうか?

『ぐっ……あんた、ねぇ……はぁ、あんたと会話してると、ホント疲れるわ』

 怒鳴り散らしたいのをなんとか精神で無理やり抑え込む。

 だが――

「ほぅ、そりゃ大変だ。早く休んだ方がいいぞ」

『ええ、そうさせてもら……って違うでしょーが! 仕事を頼みたくて電話してんのよ! し・ご・と・を!!』

 抑え込んだ再び感情は爆発した。

 電話の向こうで眞子が『はぁはぁ』と荒い息を吐いている。

「何か、そんな風に息してると変態みたいだぞ?」

『………相沢、これ以上あたしを怒らさない方が身の為よ』

「一つ質問だ。怒らせたらどうなるんだ?」

『そうね。音夢の手料理をお腹一杯食わせて、その後、あたしの拳で地獄を見せて冥らせてあげるわ』

 祐一にとって前者の方が地獄に思えてくる。

 いや、実際地獄だ。

 音夢の料理を想像したのか、祐一の顔色がかなり悪い。

 音夢の料理の腕は下手さ加減で巴と1,2を争うほどの腕前だ。

 恐らくだが、電話の向こうで言った眞子本人も気分が悪くなっているだろう。

「……分かった。真面目に話そう」

 祐一は眞子の話に集中することにしたのだが、

『まぁこぉ〜。今のはどういう意味か説明してもらいたいのですが〜?』

 電話の向こうから地獄の亡者のような声が聞こえてきた。

「ヒッ! ね、音夢!? お、おおお落ち着いて!』

「いや、お前が落ち着けよ」

 電話の向こうで慌てている眞子に対し、祐一のツッコミが入る。

 しかし、自分でその無意識の行動に気付き祐一は頭を抱えた。

 そして小声で、何かを呟いているのに気づいた巴はそれに耳を傾ける。


  「俺はツッコミ役じゃない、俺はボケ担当なんだ。ツッコミ役は巴なんだ」

 と何やら自己暗示を掛けている最中であった。

 とりあえず巴は顔を引き攣らせながらも聞かなかったことにした。

 ちなみに電話の向こうでは、話が終わったらツラ貸して下さいね、という天使のような悪魔の声が聞こえていた。





FenrisWolf's


ACT.8 襲撃者・迎撃者





『綾香の所にいるって言ってたけど、そこにいるのは仕事でなの?』

「ああ、そうだ」

『いつ終わるか分かる?』

「うーん。明後日には終わると思うぞ」

『そう。それじゃあ、その仕事が終わったらサーカスに来てくれない?』

『……あのよ、別に俺達が行かなくても眞子やことり達なら何とかなるだろう?」

 祐一がそう言うのも当然だ。

 チームは水越眞子、水越萌、白河ことり、天枷美春、朝倉音夢を含めた五人で構成されている。

 女性だけのチームだがその実力は本物だ。

 何度か一緒に仕事をしたコトがあるので、祐一と巴は彼女らの実力を認めている。

『ちょっとね。暦さんが言うにはかなり大きな仕事らしいのよ』

「暦さんが?」

 暦というのは白河ことりの姉で、祐一達のような裏の仕事をしている者と依頼人との間を取り持つ仲介屋だ。

『そ。だから、できるだけ腕のたつメンバーを集めてるのよ』

「集めてるって……どうせお前ら五人と俺と巴の二人だけだろう?」

『ううん。あと三人。さわむぐっ!』

 誰かの名前を言おうとした眞子の声が何かに遮られたように途切れ、受話器が床に落ちた音が聞えてきた。

 その音に驚き、一瞬受話器を耳から遠ざける。

「……おい、どうした眞子。おーい、眞子」

『お久しぶり、祐一君』

「おっ。その声は音夢か? 久しぶりだな……で、眞子のヤツどうしたんだ」

『え、えーっと』

 言葉を濁す音夢。

『ち、ちょっと、大変なことに……お願いだから気にしないで下さい。気にしたら私の身も危ないですから』

「眞子なら別にいいが、音夢が危ない目に遭うのは避けたいな。分かった、気にしないでおこう」

 眞子が聞いたら、ブチのめされそうなことを平気でサラッと言う祐一は凄いと誰もが思うであろう。

「で、眞子との話の続きなんだがよ、その大きな仕事ってのはなんだ?」

『暗黒城がらみなんです』

 そう聞いた途端、祐一の雰囲気ががらりと変わる。

 ある程度の緊張感を張り巡らせた空間を身の回りに纏った。

 それを訝しげに見る巴。

「暗黒城、だと……」

 それを聞いた途端、巴の雰囲気も祐一と同じモノに変わった。

『祐一君? どうかしたんですか?』

「あ……いや。何でもない。にしても暗黒城、か。それって大きな仕事っていうよりかなりヤベェ仕事って言った方が正しいな」

『そうなんです。で、引き受けてくれますか?』

「ああ、オッケーだ。こっちの仕事が終わり次第そっちに行くわ」

『それじゃあ、暦さんにそう伝えておきますね。あと、詳しい仕事の内容は私も知らないんで教えられませんから』

「ま、暗黒城がらみなら依頼人も慎重にならざるおえんだろーからな」

『そうですね。それじゃ、お休みなさい、祐一君』

「おう、おやすみ、音夢」

 祐一は音夢との会話を終え電源を切ると、腰を上げ、テラスに出る。

 巴もそれに続くようにテラスに出た。

 月明かりと外灯で照らされた町を見つめ、視線を星空へと向ける。

「……暗黒城、か」

「……まさか、またあそこに舞い戻ることになるなんて思いませんでしたね」

「ああ」

 この世の地獄と言われる、ヘルシティ暗黒城。

 短い間とはいえ、祐一――巴はそこで生まれ育った――は暗黒城に棲む住人であり、最大勢力の一つだった『FenrisWolf's』のメンバー。

 FenrisWolf'sの名を、相沢祐一、御巫巴の名を知らない者は暗黒城にはいない。

 それだけに一度、暗黒城を出た二人が、そこに舞い戻ること自体がすでに命がけになる。

 暗黒城とは、そういう場所だ。

「――輝夜」

 誰に言うでもなく蚊の鳴くような声で祐一はそう呟いた。

 その表情はどこか痛々しく、悲しみに染まっていた。

(祐一さん……まだ吹っ切れていないのですね)

 祐一を見つめる巴も同様に悲しみに染まっている。

「さて、明日にそなえて寝るか」

「……はい」





































 ――翌日 榊邸前――

 祐一達が仕事で受けた榊十蔵の館の前に二人の女がいた。

「ここが、今回の仕事のターゲットがいる所?」

 金髪の小さな少女が訊く。

 少女の服装はレースやフリル、シェイプシルエットのアームウォーマー付きのゴシックアンティーク調のようなドレス、胸元には十字架がついている。

「そうよ」

 金髪の少女の問いに隣りにいる青のツインテールの少女はそう返した。

 青のツインテールの少女は着古したジーンズに白のシャツ、その上から革のジャケットを羽織っている。

「1,500万ウェルの賞金首。久々の大物ね」

 嬉しそうに腰に佩いている鞘から太刀・天月を抜刀する。

 刀の柄部分は朴木を白鮫皮で包み、菱糸巻を施している。

 天月もそれは同じだが、形は丸みは一切無く、長方形だ。

「それじゃあ、派手に行くわよ!!」

 ポケットから手榴弾を出し、門投げた。

 大爆発を起こし、門が吹き飛び辺りに爆煙が立ち込める。

「な、何だ!?」

 門の爆発に庭にいた男達が目を向ける。

「女とガキ」

 爆煙の中から姿を現した二人を見て男の一人がそう呟いた。

「んだ、テメェら!!」

「掃除屋よ! アンタらのボスの首にかかった賞金を貰いに来たのよ!!」

「フザケやがって……殺っちまえ!!」

「行くわよ!」

 ツインテールの少女の言葉に金髪の少女が頷き、男達に向って走った。





































 ――同刻――

 祐一は十蔵の館の周りをぐるりと歩く。

「それにしても、なんて場所に建ってるんですか、この屋敷は……」

 館は断崖絶壁のような場所に建っていてその周りには大海原が広がっている。

 といっても、屋敷を囲んでる塀から5メートルぐらい離れているが。

「落ちなきゃ大丈夫だろ……それとも試しに落ちてみるか? 背中を押すぐらい簡単だぞ」

「さらりと恐ろしい事を言わないで下さい! というか、そんな行動を起せば祐一さん、貴方が落ちる事になりますから」

 ツッコミをいれた後、にこやかな笑顔で言い返した。

 祐一は冗談で言ったつもりなのだが、巴の言葉には冗談などは全く含まれていなかったりする。

「……それで、祐一さん。今回は二手に分かれますか?」 

「そうだな。琴音ちゃんの父親にコレを届けるのと、母親を助け出すのに分れるか」

「祐一さんはどっちに行きますか?」 

「そうだな……」

 祐一達は館の周りを一周しある一点で立ち止まった。

「監視カメラの死角はここだけだな。取り合えず侵入しようぜ」

「それじゃあ、ここから侵入します?」

「ああ。手榴弾を使って門を吹っ飛ばすのもいいが……これが爆発したらシャレにならねェからな。ま、大丈夫だと思うけど念には念をってな」

 祐一は手に持っているジェラルミンケースを指で叩く。

 爆弾と言うと、落したり火をつけたりするとすぐに爆発するように思われるが、実際はかなりタフな代物だ。

 不良品を除いて、銃弾を打ち込んでも爆発しないモノが殆どであり、爆発させる為には相当の打撃・熱を必要とする。

 ただ、エクスプロ―ダーと呼ばれる炸裂弾やハイドラショックなどの弾頭形状の場合は爆発する可能性がある。

「そんじゃ、さっさと行くか」

「はい」

 脚に力を入れ、二人が塀を飛び越えようとした刹那、何かを爆発させる爆発音が祐一達の耳に届いた。

「爆発?」

 辺りを見渡し、煙が上がっている所を発見する。

「あそこは……門の方角のようですね」

「ああ。俺達以外にもここに用がある奴がいるみたいだな」

「どうします?」

「あの騒ぎで館にいる警備どもの注意が向こうに向っているだろうからな。今のうちに行くぞ」

「はい」

 足に力を入れ塀を飛び越え中に侵入する。

「うげっ!!」

 着地した地面から声が聞こえた。

 祐一の足元には館の周りを見回っていた警備が倒れていた。

「げっ!?」

「な、何だ貴様ら!」

 倒された男とは別の男が祐一達を確認し携帯の緊急連絡ボタンを押す。

「ヤッベェ」

「新たな侵入者だ!!」

 男が大声を上げ辺りに聞こえる様に叫ぶが、祐一がその男の腹に肘を叩き込み気絶させる。

「どうします。私達の事完全にバレましたよ?」

 巴の問いに答える様に祐一は目の前にある裏口用の出入口のドアを蹴っ飛ばす。

「急ぐぞ」





































 ――同刻――

「綾香お嬢様」

 リビングのソファーで寛ぎながらテレビを見ている綾香に窓の外を見ながらセリオが声をかける。

「侵入者です。数は10人」

「10人ねぇ。思ったより少ないわね。姉さん、マルチ。琴音ちゃんを安全な所に避難させて。それと念の為にセバスをガードにつけて」


  「はい。綾香ちゃんも気をつけて下さい」

 芹香は綾香にそう言って琴音を連れて部屋から出ていった。

 侵入者の目的は姫川幸助が裏切らない為の保険として琴音を攫う事。

 そして、そんな奴らから琴音を護るのが護り屋・来栖川綾香の仕事だ。

 ちなみに、ここ来栖川邸には侵入者防犯装置などは設置していない。

 祐一が以前綾香にその事を訊いたら

 ――あら、そんなのつけたら闘う楽しみが減るじゃない、とこんな返答が返ってきた。

 結局は闘いたいだけなのだ。

「セリオ。侵入は正面だけ?」

 綾香が愛用の手甲・烈火と足甲・麒麟を装備しながらセリオに訊く。

「はい」

「ナメられたものね、私も。まぁ、楽しませてもらいましょうか」

 ぺろりと唇を舐めあげながら窓を開け庭に出る。

「あんた達。たかが10人で私と戦うつもりなの?」

「いや、戦うのは俺達だけだ」

 二人の男が前に歩み出る。

「貴様が、護り屋……来栖川綾香か? 俺は始末屋の黒部司だ。コイツらが、姫川琴音を探している間に姫川琴音に関わった者を一人残らず始末するのが我々の仕事だ」 

 眼鏡をかけた長髪の男が八人の男を指差しながらそう言ってきた。

「あんたも始末屋?」

 綾香が短髪の男を見ながら訊く。

「ああ、俺は葛城祥二だ。大人しく死ね。そうすれば、苦しまずに済む」

 葛城が咥えていたタバコを地に落とし足で潰しながら答える。

「ク……フフッ」

 男達の言葉に綾香が口を押え苦笑する。

「何がおかしい?」

「相手と自分の実力の差も見極められない奴らが私に勝てると思ってるの?」

「さて……それはどっちかな」

 黒部が懐から素早く銃を抜き、銃口が綾香の方に向くと同時に発砲する。

 小手調べか、撃ったのは一発だけだ。

 弾丸が綾香に向って一直線に飛んで行く。

 だが、綾香は弾道を完璧に見切り、弾丸を拳で殴りつけ撃ってきた男に弾き返した。

 ちょっとやそっと訓練したぐらいでできる技術ではない。

 弾丸は黒部の頬を掠め後方にある壁に着弾する。

「た、弾を殴り返した……だと」

「これぐらいで、驚いてどうするのよ。こんなことができる奴は世界中探せば、ごまんといるんじゃない」

 拳をぶつけ、独特の金属音を辺りに響かせながら拳法の構えを取った。

「あんた達は私に勝てない。それを教えてあげるわ」

 その言葉を聞いて男達の中の何かがキレた。

「ナ……ナメんなァァァ!」

 葛城が綾香と同じく拳法の構えを取り、黒部ももう一丁銃を取り出し構えた。

「さぁ。楽しませてもらうわよ」





































 綾香が二人の始末屋と対峙している一方で、残りの八人が屋敷内に侵入しようとしていた。

 だが、綾香は心配していない。

 なぜなら、ここには、綾香同様戦闘のエキスパートがいるからだ。

「今の内に中に侵入するぞ」

 男達は開いたままの窓に向って走るが、男達の目の前の地面に銃弾が突き刺さる。

 銃弾が飛んで来た方を見るとコルト・ガバメントを左手に持ったセリオが立っていた。

 今の彼女は来栖川に仕えるメイドロボではない。

 侵入者を始末する対人戦闘ロボのセリオだ。

 セリオはメンテナンス室で対人戦闘モードへと換装して来たのだ。

「ここから先は行かせません」

 コルト・ガバメントの弾倉を45ACPで満たしながら、男達に見渡す。

 ACPとは“Automatic Colt Pistol”の略。

 コルト・ガバメントは直径11.43mm、重量15gと大きくて重たい弾丸を発射できるため、人体に対するストッピング・パワーは高いが、初速は低いので貫通力はさほどではない。

 反面、射撃時の反動が大きい、装弾数が8発と少ないといった欠点がある。

 装填が終わると、ポケットから25cmほどのグリップを取り出す。

 ソレを勢いよく振ると65cmほどのロッドに変わった。

 グリップ部分に付いているスイッチを入れるとバチバチッ、と電気が迸る。

 ソレの正体はスタンロッドだ。

「来栖川のメイドロボか。面白い。スクラップにしてやる!」

 男の1人がナイフを片手にセリオに向って行く。

 セリオの足に装備されたブースターが唸りを上げ、一気にトップスピードまで加速し逆に男に接近する。

 すれ違い様、スタンロッドの一撃を男の延髄に叩き込む。

 スタンロッドの高圧電流で男は昏倒した。

 威力は押さえているので気絶しただけだ。

 始末するとは言ったが殺すのがセリオの仕事ではない。

 ここを護るのが今のセリオの仕事だ。

 セリオは足下の男をチラリと見て、残りの七人に目をやる。

「次は、どなたですか?」

 来栖川の攻防は一気に加速する。





































 祐一と巴は薄暗い通路を走って行く。

「居場所までバレなかったらいいと思うんですけど、無駄でしょうね」

「ああ。そうだな」

 二人はチラリと壁側を見ると、そこには添え付けられた監視カメラ。

 よくみれば、あちらこちらに仕掛けてある。

「 用心深いねェ。ん?」

 二人が足を止める。


  「祐一さん」

  「ああ、誰かいる」


 祐一はこの先の十字路に誰かいるのに気づき、それぞれの武器を装備する。

  「息をひそめてますし、向こうもこっちに気づいたみたいですね」

  「ああ。ここの警備どもじゃねェ。多分、さっき門を爆破した奴だろうな。しかもそこそこ強ェ」

  「祐一さん、どうしますか?」

  「行くしか……
ない!!」

 祐一はラグナロクを構え十字路にまで走る。

 そして両者がまったく同時に武器を振うが、祐一はトリガーを引かず、ツインテールの少女も天月が祐一に当る寸前で止めた。

 両者の顔に浮かんでいるのは驚き。

「お、お前は……」

「あ、あんたは……」

 二人が互いを指差しその名前を口にする。

「留美!」
「祐一!」

 再会に驚く二人だったが、祐一の脳天にハンマーが振り下ろされた。

「あれ? 祐一?」

 祐一を殴り倒した少女は祐一の顔を見て自分が殴ったのが誰なのかに気づいた。

「どうして、祐一がここに?」

 再会としては、最悪な再会だった。





































 ――十蔵の部屋――

「侵入者か」

 男は電話を切り送られてきた写真を見る。

 男の名は榊十蔵。

 脂ぎったデブ男で、髪はバーコードハゲ、高そうなアクセサリーを沢山していた。

「来栖川家の方はあの始末屋二人に任せるとして。侵入者は君達に相手をしてもらう」

 榊は部屋の中に立っている体格がよく、髪をオールバックにしサングラスをかけた大男とコートを羽織り、帽子を目深く被った五人に目をやる。

 榊はコピーされ送られてきた写真を四人に見せる。

「君達のターゲットになる者達の写真だ。男を殺す場合は頭を潰してくれ。内臓はいい金になるんでね。女共は痛めつけてもいいが、出来れば生かしておいてくれ。いいね?」

「はい」

「これほどの美少女達だ。たっぷりと調教して立派な性欲処理玩具に仕上げて金持ち連中にでも売れば、一人軽く一千万は超えそうだ。いや、それとも闇オークションにでも出品するか……」

 侵入者の三人の少女をどうするか考えながら唇を舐め上げる。

 その顔はこれからの調教を愉しみにしている顔だった。