第23話 「宣戦布告」







































祐一は、明らかに混乱していた。

今、自分たちは何と言われた?

――――危険?

何を今さら。

自分たちが危険な存在である事など、とうに知っている。

そんな部分ではない。

考えろ、混乱している場合ではない。

――――殺しに来る?

誰が、誰を。

『魔族』全体が、自分たち『亜族』を。

簡単に想像できる、3人と『魔族』全体が向かい合っている光景。

描き出される、その光景。

祐一が描いたその光景には、希望の色は何一つ見つからなかった。

――――だと言うのに。

――――満身創痍のはずの晃也は。

――――笑っていた。

「手間が省けたな。 こちらからわざわざ出向く必要がなくなったか。」

弱気な考えしか浮かばない祐一とは、全く逆。

圧倒的な強さを持つ言葉で、晃也はそう答えた。

「…お前らの姫に伝えるといい。 『その意向、こちらも賛成した。 ただし1ヶ月以内に余計な

真似をしてくるのなら、こちらとしても容赦はしない』とな。」

射抜く様な視線と、凍える様な冷たい声。

晃也は、間違いなく本気だった。

『魔族』全軍に攻めてこられても、負ける事なんて全く考えていない。

何処までも、ただ純粋に信じている。

祐一と、お嬢と、それから晃也。

この3人が揃えば、負ける事は無いと言う事を。

――――やっぱり、敵わねぇな…。

祐一は今、心の底から、晃也に勝てないことを悟った。

剣技だけなら、そう劣っていると言うわけじゃない。

ただ、精神(こころ)の強さが違いすぎる。

晃也の本当の強さを実感し、共に戦える事にただ感謝する。

そして、

「あともう1つ。 今此処でお前らを殺しても良いか?」

不安を蹴散らした祐一は、元通りの鋭い眼で、そう言った。

強い意志を秘めた、その眼は間違いなく相沢祐一の眼だった。

強くなる、と。

最強だと認めている晃也に、ずっと掛け続けてもらった、かつては重荷だったはずの言葉を秘めて。

「そんなに戦いたいんじゃ、仕方ないか…。 じゃあ、僕がお相手しよう。」

祐一たちの、考えていた以上に強気な態度に少々驚いていたのも束の間。

カノンがいち早く祐一の言葉に反応した。

手に持った銃が、淡く輝きだす。

火を見るよりも明らかな、一触即発の雰囲気。

「よせ、祐一。」

「やめろ、カノン。」

その雰囲気を破ったのは、他ならぬ味方たちだった。

今という状況が見えているのは、晃也とアイズの2人だった様だ。

「こいつらを殺す事は容易だが、今の状況では『魔族』全体には勝てない。 好きにさせてやれば

いい、所詮自分の為に踊れないような連中のやる事だ、そう警戒しなくても問題ない。」

晃也の言葉は、実に的を射ていた。

傷は塞がったが、体力・魔力共に限界の晃也。

晃也の回復によって、魔力が著しく減っているお嬢。

体力・魔力は余裕があっても、精神(こころ)が疲弊している祐一。

その意図に、祐一も気が付いたらしい。

殺気を込めた視線を解くと、静かに『高月(こうづき)』をしまう。

「…いい判断だ、『亜族』。 では1ヵ月後を楽しみにしている。」

静かな口調で、アイズが言う。

アイズ自身も戦いたい意思があるのか、体は魔力によって淡く輝いている。

それを押し止めている辺り、指揮官として相応しいのだろう。

「それはこちらとしても同意見だ。 お前たちの姫と戦う事は、酷く心引かれる。」
 
暗に、『人形如きでは相手にならない』と告げる晃也。

その意図に気付いているのだろう、3人から殺気が放たれる。

微々たる殺気を体に受けながら、晃也は見下した物に対する笑いを浮かべる。

お前ら如き人形が辿り着ける場所に俺達はいないと言わんばかりに。

「もう互いに用は無い筈だ、早々にこの場から消えろ。 この場は、貴様ら人形如きが立ち入って

良い場所では無い。」

それだけ言うと、晃也はアイズたちに背を向け、歩き出した。

祐一とお嬢もそれに続く。

一瞬呆然とした表情を浮かべる3人だったが、

「…行くぞ。」

晃也と同じ様に、『亜族』とは逆方向に背を向けた。

戦うべき時は今ではない。

それを晃也の背中から、感じ取ったゆえの行動だった。

その後姿の大きさに、祐一はまた1つ溜息を吐いた。

目指している壁の大きさを実感しつつ、その壁に追いつく為の手がかりを手に入れた事への喜びを

隠した表情で。

3人は歩いていく。









































『Kanon』の国が一望できる小高い丘。

名を、ものみの丘。

その場所に、祐一たちはいた。

晃也は学園の広場から、もう動かなくなった香里を連れてきていた。

誇り高き騎士を、もう利用させたくない。

ならば、自分が見取ってやるのが一番良い。

そう考えた結果だった。

美坂香里の死体に手をかける。

ゆっくりとその体が燃えていく。

魔力切れにも等しい晃也だが、発火させる程度は出来た。

5分ほど続けると、香里は完全に灰になってしまう。

その灰を丁寧に土に埋め、墓代わりに香里の長槍を地に突き刺す。

…一瞬の黙祷。

その一連の行動が終わると、静かに祐一たちを見る。

「これから1ヶ月は自由だ。 体を休めるのも、修行に励むのも構わない。」

そして、視線だけで祐一とお嬢に問う。

祐一は一瞬俯き、静かに自分の答えを口にする。

「俺も療養するよ。 1ヶ月手度では、どんなに無理をしても成長は薄い。 だったら、万全な

状態で挑むだけだ。 無論、最低限は動くけどな。」

「…そうか、ではお嬢は?」

「ボクも祐一と同じ意見。 やるべき事が決まっているんだから、今さらあたふたしたって

しょうがないしね。 かじってた魔術をもう一回構成しようとは思うけど。」

あっけらかんと答えるお嬢。

晃也は、少しだけ微笑った。

自分の教え子に向ける、師匠のような面持ちで。

「ああ、その選択がベストだろうな。 この場面で無茶な修行をしたいと言う奴はただの馬鹿でしかない。

 己の状況を正しく判断できているな、2人とも。」

珍しく、真っ直ぐな言葉で2人を誉める晃也。

「………。」

祐一はその言葉にただ驚いた表情をし、

「えへへ…。」

お嬢は照れくさそうに笑った。

そんな微笑ましい光景に、もう一度微笑する。

それを最後、晃也は再び無表情に戻った。

「…行くぞ。 休める時に休んでおかなくては、次の戦いは勝ち残れない。」

そう言って、静かに歩き出した。

3つの漆黒の影が、その場から消えていく。

復讐の第一幕は、今此処で終わりを告げた。

第二幕の舞台は、もう整いつつある。

ただそれを目指し、自分のやるべき事をするだけ。

3人の後姿は、まるでそう言っている様に『覚悟』の色が見えた。












































キャラ設定

アイズ=ラザフォード

17歳

168cm  54kg

武器

洋刀 (主)

洋刀なので、銘の概念はない。

一応アイズは『月(ムーン)』と呼んでいる。


ナイフ (副)

投げる為だけの武器。

殺傷能力に関しては低いが、相手を怯ませる効果はあるので、時折使用している。



魔力 C

作られた存在ゆえ、『魔族』側に位置してはいるが魔力を持っている。

だが、どれだけ訓練を重ねてもこれ以上の魔力は手に入れる事は出来ない。

作られた存在ゆえの、欠陥でもある。



戦闘スタイル

洋刀による近接戦闘



能力値のパラメーター

筋力B 敏捷B 耐久B 魔力C 幸運C 切り札C

均等ではあるが、それ程強いと言うわけでもない。

晃也が『人形』と称したのは、特筆できる部分がない事も関係している。



補足説明

Blade Children(刃となるべき子供たち)の1人。

『亜族』のデータを元にして『魔族』に作られた存在。 

なお、カノンとは双子(アイズが弟)である。

能力が全く一緒なのはその為。

コンセプトは『亜族』を超える、最強の傭兵を作る事だったのだが、どれもこれもを強化しようと

しすぎて、結局中途半端な能力しか手に入らなかった。

アイズは冷静沈着で、どちらかと言うとまとめ役でもある。

その辺りは『亜族』で言う、晃也の立場に似ている。

得意なのは近接戦闘、苦手なのは中距離戦。











カノン=ヒルベルト

17歳   

173cm  59kg



武器

銃 (2丁)

両方とも実弾ではなく、魔力銃。

魔力銃とは、自身の魔力を銃に込める事が出来る銃の事。

属性にこだわらない攻撃が出来るので使いやすい。

反面、強力な魔力を込めると発射までに時間がかかる。

名はそれぞれ「フォルトゥナ」、「セルシウス」。

またカノンの武器は銃のみである。



魔力 C

魔力説明は、アイズと同じである。
 


戦闘スタイル

魔銃による中距離戦闘




能力地のパラメーター

筋力B 敏捷B 耐久B 魔力C 幸運C 切り札C

アイズと全く同じ能力値。

理由はアイズの所で述べたとおりである。




補足説明

Blade Childrenの1人。

性格はアイズに比べると軽い性格。

『亜族』で言う祐一のような存在。

能力値は至って普通。

だが銃技に関しては『Gun with Wing(翼ある銃)』とまで呼ばれるほど、卓越した銃技を

持っている。

得意なのは中距離戦闘、苦手なのは遠距離戦。










竹内 理緒

17歳

144cm  33kg



武器

特筆すべき武器は無し。

一応ナイフを持っている程度。

実力はそれなり。




魔力 A

アイズ・カノンの実験の失敗を礎とし、作られたのが理緒。

理緒は魔術にやや特化されている。

その代わり、筋力などがやや低くなっている。




戦闘スタイル

魔術による遠距離戦




能力値のパラメーター

筋力C 敏捷B 魔力A 耐久B 幸運C 切り札C

能力値が他の2人と異なるのは、魔力の欄で述べた通り。

強さのランクとしては、人間の中の上〜上の下程度。





補足説明

Blade Children(刃となるべき子供たち)の1人。

性格は、2人よりも陽気で能天気。

ただ、頭の回転は非常に速い。

『亜族』側で言う、お嬢のような感じ。

アイズたちとは異なるコンセプトで作られた為、魔術に特化した性能として作られている。

得意魔術は炎系統。

遠距離戦が得意で、近距離戦が苦手。













祐一たちのパラメーター変更点

相沢祐一 (半覚醒)

筋力A+ 敏捷A+ 耐久A 魔力B+ 幸運B 切り札S



月宮晃也 (半覚醒)

筋力A+ 敏捷S 耐久A 魔力A+ 幸運A 切り札S+



お嬢=水夏 (半覚醒)

筋力C 敏捷A 耐久A 魔力EX 幸運A++ 切り札S 


祐一の成長量がやや低く、お嬢の成長量が高い。

これは半覚醒というまだ中途半端な位置にいる為に、能力の上がり方にバラツキが出ている

のである。

ランキングとしては晃也>お嬢≧祐一といった所。