ある門番の一日

私は門番だ。
名前?そんなの無い。
ふっ、なぜなら私は少しの出番しかないような脇役だからだ。
だが、私はこの門番という職業に誇りを持っている。
だから私は今日も一日、城の門であやしい者がいないか見張っている。





ふむ、今日はあやしい者はいなく、平和だな。
だがこの前は、盗賊に入られてしまったからな、前より身を引き締めて仕事をしなければならぬな。

「あの・・・」

私がそんなことを考えていると、声が聞こえてきた。
私はなんだろう、と思い声の聞こえる方を向くとそこには少女が花束を持って立っていた。

「なにかようかな、お嬢ちゃん。」

私はその子に声をかけながらなぜ私に声を掛けてきたのだろう、と考えていた。
む、もしや迷子か。
それなら、ぜひこの子の親を探してあげなければ門番の名がすたるではないか!、と少々壊れた思考でそんなことを考えていると。

「あの、私さくら先生が学校をお休みしたからのお見舞いに来たんですけど、さくら先生に会わせてくれませんか」

少女はそう言った。
ふむ、どうやら迷子ではないようだ。
私は少々ぶっ壊れた思考を元に戻した。
しかし、少女の言うさくら先生と言うのは芳野さくら様のことなのだろう。
だが、この間のエアとの一戦でさくら様は原初の呪具により負傷して、今は確かその呪具のせいで封印させられているらしい。
だがその事を、この少女に伝えるのは少々問題がある。
はて、どうしたものか。

「おい、どうするんだよ。この子にあの事を伝えるのはさすがにやばいぞ。」

何時来たのか知らないが、同僚が私の近くに来てそう言った。
そんなこと、わかっている。
だが、どうこの少女に説明したものか、と私は唸っていると。

「どうした。何かあったのか?」

いきなり後ろから声をかけられた。
私はを後ろを向くとそこにはこの国の王相沢祐一様と見知らぬ女性がそこにいた。

「え・・・・・・とぉッ!?へ、陛下!?」

私は慌てて敬礼をした。
隣の同僚も同じように慌てて敬礼する。

「その子がどうかしたのか?」
陛下は私達を見た後、近くにいた少女に目を向けて私達に聞いてきた。

「はっ! 実はこの少女は学園の生徒らしくて。教師である芳野さくら様のお見舞いをしたい、と」
私はそう陛下に言った。
陛下は私の言葉を聞きなるほど、頷き少女を見た。

「あの、王様ですか?」

少女がそういうと陛下は腰を折り少女と視線を合わせた。
その後少女は陛下と話しをして、陛下に花束を渡して去っていった。
私と同僚は邪魔にならないように、少し離れた場所に立っていた。
去っていった少女と見ながら陛下の下に近づくと、陛下はいきなり花束を差し出して

「これを、私の執務室にいる香里に渡しておいてくれないか。」

そう言った。

「わかりました。」

「では、仕事に戻ってくれ。」

陛下はそう言い、私に花束を渡して女性と共に去っていった。

「しかし、ほんと陛下が来てくれて助かったな。」

確かに、あのまま誰もこなかったらあの少女にどう対応して言いかわからなかったからな。

「そうだな、では私はこの花束を執務室に持っていくことにしよう」

「わかった、ささっと帰ってこいよ。」

「わかっている。」

私はそういうと城に向けて歩き出した。
しかし、花束か。
相当、生徒に好かれているのだろうな、さくら様は。
城にいる人たちは本当にいい人ばかりだ。
陛下も私達のことを見下さず平等に見てくれる。
だからこそ、私は志願して兵士となり門番をしている。
そして私はいつもこう思う。




「この国は本当に、すばらしい国だ。」







おわり












あとがき
初めまして、亜月と言います。
なんと言うか衝動的に書いてしまいました。九十二話の門番視点になります。
本当に「神魔」を読み返しているときに、ふと、このアイディアが浮んできてなんか書いてしまって作品です。しかし、文才がないなーとあらためて確認したような作品です。
では、またいずれ。