mirage-annal.
  第一章「目覚めのプレリュード」
      一話「担い手の邂逅」





時を遡る事旧西暦2098年
今は人界と呼ばれる地に一つの世界規模の揺れが起こった。
揺れは二度。ほとんど間隔なく起きたその揺れは一つの現象の作用だった。
次元振動。のちに「門穴時元日」と呼ばれた5月1日、人界は他の二つの世界と繋がった。
魔界と天界。それは人ならざる者の世界。
繋がったことにより起こったことは二つ。
一つは魔界と天界からの侵攻行為。人はこのことに対処するため世界的に軍隊を動かした。
しかし戦力に根本的な差がありすぎた。半年で人界の半分近くが占領された。
国連は最終手段の核を使った。しかし、それでも戦力差は埋まらずにいた。
だがその差はもう一つの変化により縮まった。
それは人に芽生えし一つの能力。大気にある魔力を使って行われる力「魔法」。
始めは少しの人たちから、そして全ての人に。対抗するための力として振るわれそれ以降の侵攻は一時停滞した。
そして旧西暦2100年。
人々は魔力を調べ古代の人界にも同じような力があったことを突き止めた。
それは魔法で隠されていた文献より知られた。
各地に多く見つかったが特に日本で多くの文献や遺跡が発見された。
それに伴い人の中に特殊な力も確認され始めた。
それは超能力と呼ばれる者に近くそして強力であった。
これらの力の解析に貢献したのが相沢家と芳野家であった。
そんな中人々は国連に変わるある組織を作り上げた。
―Defence date dimensions―通称DDDと呼ばれる機関である。
本部を日本に置いたこの組織は二つの世界に対する力となり各地で戦いを繰り広げた。
この年より西暦から次元暦と呼び名がかわり、この年を元年としたのだった。
そして歳月は流れ……………

次元暦493年
とある地で5人の少年が一つの意志を受けとった。
彼らはその意志を胸に戦っていく事をきめた。
同じ場所には天使の少女もいた。彼女もまた少年達とともに歩むと誓った。
そして6年が経ち…


    ※



―天界―
燃え上がる部屋の中に4人の姿があった。
そのうち2人が床に書かれた方陣のなかで、方陣の壁を叩きながら外の二人に叫ぶ。
「ミカエル様!ラファエル様!」
「ここを開けて下さい!」
呼ばれている二人にうちラファエルが何か呪式を唱えており、ミカエルは部屋の入り口で戦っていた。
「ラファエル、まだですか?」
ミカエルが外から来る白き翼を持つもの、天使を槍で貫く。足元には既に何十人もが倒れていた。

「――――Mαlω!」

ラファエルが呪式の最後が唱えるのと同時に方陣が輝きだして内の2人の姿を霞ませる。
「――――」
「――――――」
2人が何かを言っていたがその言葉は届かなかった。
ミカエルは外を向き、天使を見据えながら問う。
「行きましたか?」
「あぁ。行ったな。大丈夫だろうか?」
ミカエルの槍を振られまた1人天使が倒れる。
「大丈夫ですよ。信じましょう。私達の信じた少年達を。
 力の担い手を。彼らは必ず誓いを果たしに来てくれますよ。」
 「そうだな。では、後やるべきことは……」
見える範囲にいた最後の天使をミカエルの槍が薙払った。
――すみません
心の中でミカエルは謝る。
その背後で爆発が起こった。方陣が床ごと消滅した音だ。その余波か、はたまた限界だったのか天井も壁も共に崩れる。
上を見れば空が、蒼い空が広がっている。普段のミカエルならば綺麗だと思えるような深い蒼。
しかし今そこには幾つもの白い翼があった。
天使の大軍だ。その数は万に届くかと思える大軍。
ラファエルがそれを確認して腰の剣を抜く。
大天使二人。神界でも最高位の二人とはいえどちらも対単体戦しかできない。いかに大天使の称号を持とうと数の暴力には勝てない。
ミカエルもラファエルもそれはわかっている。それでもやらねばならぬと二人は顔を見合わせる。
ミカエルが槍を天使に向け、
そしてラファエルが剣を構え―――

ラファエルの剣がミカエルの胸を突き刺した。

何故とは問われない。ミカエルの消え行く意識が見たのは天使に大群と彼らに何かを叫ぶラファエルの姿だった。
それを最後にミカエルは意識を落とした。
――あゆ、神奈…頼みましたよ………


    ※


―人界―
日本の北端、北海道にある街「雪華」。その街の東には森が広がっている。
その中心と言えるであろう場所に少し開けた広場があった。
そこでは今2人の少年が戦っていた。
片方は剣を振るい、もう片方がその剣を左手の斧で受け止め右手の槍を突き出す。
剣を持つ少年は剣を横にして槍を受け止めた。だが、直後に左側から斧が迫る。
剣は槍を受け止めているので防御はできない。かといって避ければ槍が再び繰り出されるだろう。
――なら後残った方法は……!
思考と同時に剣から手を離した。槍を受け止める力がなくなり相手の体が前へと流れる。
それにより斧の軌道がずれる。その隙間に体を入れた。姿勢を低くして前にでると頭の上を斧が通過した。
そしてそのまま相手の右腕を掴んで、
「くらえ!」
相手を地面へと叩きつけた。一本背負いだ。
そしてすばやく剣を拾い首に突きつけた。
「北川、俺の勝ちだな。」
「18戦全敗………相沢、お前ランクいくつだっけ?」
「Dランク。学年最低ランクだが?」
「嘘つけ!Sランクにも勝てる時がある俺に対して余裕だろ。SSはいくだろうが…」
確かに今の祐一の強さならばSSは取れるだろう。だが、
「ランク上げると面倒だからな。」
剣を引きながら答えるのは半分本当のこと。茶色の髪に黒の瞳、何の変哲もない顏だが上手くまとまっている。
祐一は名門相沢の直系である。そのため世界状況にも詳しい。
だからこそ今の人界が綱渡りで平穏を保っている事も知っている。
この平和を崩すのは簡単だ。何か一つ、たった一つ何か騒動が起きればそれで崩れるだろう。それは戦いにむかって動き始めることになる。
「………どれくらい持つか。」
後少しで平和が壊れるような事が起こると知っているだけに今が寂しい。
「平和が一番だな。」
心を読んだような台詞。見れば北川は寝転んで空を見上げている。
「そうだな。今が一番だな。………何だ!?」
そう言って空を見上げた祐一は突然魔力の流れを感じ、それに伴い時空が揺れた。魔力の中心は上の方向。祐一の横で北川が起き上がって槍を構える
しばらくすると突然魔力の流れが止まった。同時に時空が大きく揺れ、そして空間が割れた。そして割れ目から一つの影が落ちてきた。
それは少女であり、そしてその背には一対の白い翼があった。それは、
「天使?」
北川が呟くと直後に天使が雪の上に落ちた。それも頭から。
何か嫌な音が響いた。鳴ってはいけないような音だと思いながら恐る恐る2人近づくと、
「うぐぅ」
「は?うぐぅ?」
謎の声が聞こえた。その台詞は何かわからない。しかし祐一はその声と言葉に覚えがあった。天使でうぐぅ。そんな奴は1人しかいない。
「あゆ?」
「うぐぅ?」
「あゆだろ?」
祐一が尋ねると少女が顏をあげた。
「祐一…くん?」
「おう、祐一だぞ。久しぶりだな。」
「祐一君!」
ここにかつての担い手達の再度の出会いがなった。




To be continue…



※後書き※
何となくネタが溜まったので書き出した作品です。
7作品クロスの長編ですがなにぶん処女作なので至らぬ点も多いかもしれません。
もし気が向いたら付き合ってください。
目標はとりあえず第一部完結です。