颯爽と現れ自慢の蹴りで黒鍵を蹴り飛ばした美しき闘神坂上智代
風になびく髪が月明かりに照らされきらめくその姿に祐一は目を奪われていた。

「いつまで呆けているつもりだ祐一」

そういいながら差し出された手を取り祐一は立ち上がった。





魔法会長祐一 第七話 「誕生!戦女神」 後編



突然の乱入者に場が止まったのを利用し祐一は智代を連れ二人から距離をとる。

「取り敢えず助かった、それで、智代、どうしてここに?」

「ピロとカルラに教えてもらった」

「あいつ等が……」

「さて、これを地面にぶつければいいんだったな」

そういい智代はピロから貰った玉を地面に思いっきり叩き付ける、
すると二人は二重結界の中に包み込まれた。



「結界?どこかで見た事あるような〜、ねえシエル、あの結界ってなんだっけ?」

そういいアルクは首を捻りながらむ〜っと唸る。

「外はただの防御結界ですが内のは……不味いですよ!あれは契約結界です!」

アルクの質問に答えようとして結界を見てシエルは声をあらげる。

「契約結界、そういえばそんな物もあったわね」

「そんな呑気に構えている場合じゃ……ああっ!」

シエルがそう言ってる間にか結界の中から光が溢れ結界が消え去った。

「どうやら終わったようね、それじゃあシエル、行くわよ!」

「ああ、もー!何でこうなるんですか!」

なんだかんだ言いながらもアルクの後についていくあたり結構中の良い二人なのかもしれない。




さて、時間を少し戻って視点を結界内へ

「これは……防御結界に…契約結界!」

「ああそうだ、祐一、私と契約するぞ」

そういい智代は祐一の肩に手を置く。

「ちょっちょっと待て!契約するってどうするか分かってるのか!?」

一番簡単な契約方法を思い出し慌てる祐一とそれに対して淡々と答える智代。

「ああ、祐一とキスすればいいのだろう?」

「分かってるなら何で……」

っと疑問に思う祐一、彼の頭の中では?が大量に浮かんでいるだろう。

「はぁ〜、お前が相当鈍感な事は分かっていたがここまで鈍感だとは、
祐一、私が好きな男以外に唇を許すと思うか?」

祐一の鈍感さに呆れながらも智代は祐一にそう問い返す。

「いや、思わないけど」

「なら、そういう事だ」

っと言われ祐一はその事を理解すると同時に顔を真っ赤に染め上げる。

「えっ?それって、まさか、嘘だろ?」

「こういった事を私は嘘や冗談で言ったりはしない」

じっと祐一の瞳を見続ける智代に祐一は顔をそらす事もできず、ただ自分の今の本当の気持ちを伝える。

「あー、どう言えばいいんだ?智代の事は好きだけど、俺はまだ付き合うとかそういったのは
正直よく分からない、俺はこんな答えしか返せないけど、いいのか?」

「ああ、どうであれ私の事が好きなら問題ない、後は私がお前を惚れさせればいいだけだからな」

と自信たっぷりの表情で微笑む智代。

「お手柔らかに頼む、それじゃあいくぞ?」

「ああ」

「我、相沢祐一の名と魔力に於いて、汝、坂上智代を従者にせし契約を行なわん、
共に助け合い共に歩く為に……智代」

「祐一」

智代の頭と腰に手をあて祐一は己に引き寄せ唇をあわせる。
それと同時に結界内に陣が現れ眩い光を発生させ弾け、結界は消え去った。

「契約完了、改めて、これからよろしくな智代」

「ああ、こちらこそよろしく頼む祐一」

そういい二人は笑みを浮かべあいアルク、シエルの二人方を向く。

「俺は白い方をやる、智代は黒い服の方を頼む、出来るだけ俺から離れるようにしてくれ」

「了解した」

「それじゃあ行くか」

そういう祐一の手には一枚のカードが掴まれていた。
そこには『Battle Goddess 』 戦女神と書かれた文字と両手両足に金属製のグローブとブーツを
装備した智代が描かれていた。

「我と従者の契約の証よ、我らの絆を証たる魔具と化し我が従者に力を与えよ!」

        ゴッドデスアームズ
魔具召喚 女神の武具


「これは?」

「アーティファクト、俺と智代の契約の証であり俺達の絆みたいなもんだ」

「そうか、絆か、暖かい、心地良い力だ、これなら誰が相手でも負ける気はしないな」

「それじゃあそっちは頼むぜ智代」

「ああ、任せろ」

        フォースシューティング  クイックショット
風の魔弾 四つの狙撃弾 二連高速撃ち

智代の返事を聞き祐一はシエルとアルクを二分する為二人の間に魔弾を打ち出し
祐一はアルクと、智代はシエルとの距離を詰める。





「相沢君ではなくあなたが私の相手ですか」

対峙する黒と銀。

「ああ、もう一度自己紹介をしておこう、私の名は坂上智代、将来祐一の伴侶となる事を夢見る乙女だ」

かたや弓と呼ばれる投擲の名手、かたや未来において戦女神と恐れられる神脚の持ち主。

「臆する事もなくいけしゃあしゃあよくそんな事が言えますね……」

「本当の事をありのままに言っているだけだ、それに祐一相手だとライバルが多いのでな」

そんな二人の戦いの火蓋が……

「そうですか、そうそう忘れてましたが私の名前はシエルといいます、よろしくお願い……しますね!」

切って落とされた。

「ふっ!」


最初の攻撃はシエルによるナイフでの斬撃、それを智代はグローブで受け止める。

「この速度を見切りますか」

というシエルに智代は

「この程度なら問題ない」

と不敵に答える。

「ならもっと速度を上げるまでです!」

「面白い、今の私の限界、シエル、あなたで確かめさせてもらおう」

そして二人の戦いは徐々にその速度を上げていき目にも留まらぬ高速戦闘へと発展していく。




「へぇ〜祐一がわたしの相手をするんだ」

此方で対峙するは白き姫君と古き血の魔術師。

「ああ、俺のとっておきを見せてやるよ」

片方は幻想種でも高位の真祖の吸血鬼、対するは相沢の祖ユウイチの名を持つ天才青年。

「祐一のとっておき?面白そうね」

そして此方でもまた戦いの火蓋が……

「そうか?なら楽しみにしててくれ、それが今日、お前を倒す技だ」

「そう、なら、それを証明してみせなさい!」

切って落とされた。

「俺も接近戦は得意だって言っただろ?」


此方もアルクからの攻撃により始まり祐一はその振り下ろされた爪を仙氣で被った腕で受け止めた。

「そうだったわね、でも本来魔術師のあなたがいつもで持つかしら?」

「そう思うなら試してみろよ?」

そういい不敵に笑ってみせる祐一、智代と同様の行動をとるあたり、
二人は何処か似ているのかもしれない。

「ふふ、祐一って面白い」

「そうか?」

「うん、だから精一杯……抗ってみせて」

そうアルクが呟いた瞬間祐一の視界からアルクの姿が消え去った。

「なっ!ぐぅ!」

攻撃が当たる直前でなんとか気付きとっさに腕で防御し直撃は防ぐ。

「くそっ」

「この速度についてこられないなら死ぬわよ」

今度は見失わないように集中するも、アルクの姿は目の前から消え去り。

「祐一」

すぐ真後ろに立たれその爪を振るわれる。

「がぁっ!」

「どうしたの祐一?このまま何もしないで終わるの?」

「安心しろ、これから楽しませて……やるよ!」

腕を体を抱え込む感じで絞りそして左右におもいっきり開く。

せんけんしょうは
仙拳衝波 (全方位)

祐一を中心に全方位への地を這う衝撃波が放たれる。

「これなら確かに後ろをとられる事はないわね、でもまだ甘い」

「だろうな!」

そう叫びながら祐一は魔力を集め腕を振るい体を旋回させる。

我が腕に集まりし魔力よ!四性の魔弾と化し全てを撃ち貫け!

エレメンタルブレッド   サウザンドシューティング

 四性魔弾  千の狙撃弾

「衝撃波と魔弾による二段階の全方位攻撃だ、流石のお前でも防ぎきれないだろ?」

「そうでもないわよ?鎖よ!」

衝撃波と魔弾が向かってくる前方に腕を突き出し行なう真祖の必殺

マーブルファンタズム
空想具現化

により千年城の鎖を具現化、身を守る盾とする。

「鎖!あそこか!」

神経を集中させアルクの居場所を探っていた祐一は、
世界への働きかけを感じ振り向くと、鎖の壁を目にする。
そしてそれと同時に魔力を集めながらそちらに向かって走り出した。

我が腕に集まりし魔力よ、渦巻く風と化し全てを通さぬ壁と化せ!

せんぷうけっかい
旋風結界

祐一が魔術を発生させると竜巻が起こりその中に祐一とアルクを閉じ込めてしまう。




何度となく仕掛けあい共に防ぎあう攻防を続けていた二人は一度距離をとり対峙していた。
すると祐一達がいる方向に竜巻が生まれる。

「あれは……風の結界?」

「どうやら祐一は勝負を決めにかかるようだな、こちらはどうする?」

「そうですね、元々試すべき相手は相沢君のみ、私達は結果を見守りましょか?」

「ああ、私もそれで構わない」

こうして智代の初陣は幕を閉じた。





祐一が作り出した竜巻の中、二人は対峙し終幕へと時を進める。

「風の結界?こんなもので動きを封じたつもり?」

「ああ、それにさっき言ったとっておきに必要だったからな」

「ちょっとがっかりね、なら終わらせてあげる」

「それはこっちの台詞だ、風の鎖よ!」

祐一がそういうと周りの竜巻から風が飛び出しアルクの動きを封じる枷となる。

「何これ!動けない?!」

アルクは両手両足に絡みつく風の鎖を外そうともがくも全く動じるない。

「この竜巻止めない限りその鎖が千切れることはない、さあ終わりだアルクェイド」

そういいながら祐一は右手を頭の前に左手を腰の前に持ってくる。

「天魔地仙」

円を描くようにして手の位置を反転させ、左右に開く。

「はぁー!!!」

叫びと同時に右手の魔力と左手の仙氣を具現化、胸の前で手を合わせ融合していく。

「相沢に伝わる奥義、獅子の拳、食らえぇー!!!」

今にも爆発してしまいそうな力を腕に留まらせながら、祐一はアルクへ向かって駆ける
この戦いを終わらせる為に。

          しこうおうけん
相沢流 奥義 獅哮王拳

「こいつで、終わりだぁーーー!!!」

アルクの腹部に突き刺さる両拳は、その手に留まりし力を解放させ爆ぜる。
その力はアルクを拘束していた風の鎖を引き千切り竜巻をも貫くほどアルクを吹き飛ばした。

「はぁはぁ、どうだ?」

今もてる最強の一撃を放った祐一は、息を整えながらアルクが吹き飛んだ方向を見つめていた。

「くっ、痛い、最高に痛かったわよ祐一!」

「うげっ、まだやれるのかよ」

「やれない事もないけど止めとくわ、痛いし、もう家に帰って休むわ、
再生したから分からないにだろうけど誇っていいわよ祐一、私のお腹に風穴開けたんだから」

そう言葉を残すとアルクは祐一の前から姿を消した。

「はは、取りあえず勝ったのか?」

「ああ、私達の勝利だ祐一」

「智代」

「お疲れ様です相沢君、今回の事はわたしの方から報告しときますから、
今日は帰ってゆっくり休んでください」

「ああ、はい、ああ〜それじゃあ帰るか智代」

「ああ、帰ろうか祐一、こんな時間だ、遅くなった言い訳を両親にしてもらわないといけないな」

ふふ、と笑いながらさらっと爆弾発言を言う智代とそれにびびりまくる祐一。

「なっ!それはあれか?お前のご両親に挨拶でもしろって事なのか!」

「ああ、それもいいな、それじゃあ早く帰ろう祐一」

「ちょっちょっと待て!待ってください!って智代聞いてるのか!?」

「何も聞こえないぞ祐一」

「ってか聞こえてるだろ!智代!智代ー!」

ってな感じで尻に敷かれる祐一なのだった。