君との誓いに夜空を見上げて
〜Starry Night〜



閑話
ルナの勉強



私はクウさんが帰ったあとに書を読み始めました

“炎術応用上級書”という難しい書です

応用でも――基礎でもそうですが――凄さのランクが決まっています

下から最下級、下級、中級、上級、最上級、特級です

炎を氷に見せる≪氷似の炎≫は応用中級

火を出すことは基礎最下級、炎を出すのは応用最下級

火と炎の違いは規模、火力の違いと言われていて

火は摂氏300度から1000度、煙草の火からボール程度

炎はそれこそ摂氏5000度や10000度、火事や平野ほど

平野なんて私たち、“今”の人の魔力では無理ですけど

“昔”の人は詠唱のみで荒野に変えたそうです

そういう場所が教科書に載っていて、1度見に行ったことがありました

“炎荒の変異”と呼ばれる“南の国”の東部にありました

元々は“碧海”と呼ばれていたそうで、とても綺麗だったそうです

“碧海”という名は“北の国”の山から下りて来られた人が

『こ、これが海なのか……』

と言った事で決まったという話です

そのくらい草木が青々と茂り、広大だったからなのでしょう

「ふぅ……」

私が書を読み耽っているのは他でもありません

クウさんのあの魔術

≪否炎≫と言いましたか

聞いたことがありませんでした

だから私が読んだことない上級書を読んでいたのですが

「ありませんねぇ……」

勉強にはなるんですけど……

けれど余り勉強が好きとは言えない私の頭には少ししか吸収されません

無駄な知恵を使ってしまったかもしれませんね……

「試しにっと」

部屋から鍛錬場に移動する

鍛錬場の中央に座って魔術円を描いていく

「えっと……」

五芒星を描き終えた後に、紋様を書き入れる

大抵、どこかの言語を筆記体で綴る

時折ルーンとか刻みますけど

「炎の打ち消し、か……」

五芒星の右、火の位置に『ᚲ』、そこから『fiamma』と綴っていく

ぐるっと魔術円の周りに書き込んで、円で囲む

“二重の円”といい、これがないとちゃんと効果が出ない

それ知らずにやって、大失敗して怒られた事もあったなぁ……

「炎よ」

ぼわっと魔術陣の中央に現れる炎

見た目じゃ炎って分かんないよ

“二重の円”で熱さは防がれてるし

「えっと、次は……」

少し離れて“立体魔術陣”を描く

要領は平面魔術陣と同じで、魔術円から描いていく

魔術円を描き終え、五芒星へ

五芒星を描き終えたら紋様を書く

五芒星の上、水の位置から『ᛚ』、そこから逆時計廻りに『dinegare』と綴っていく

そして最後に魔術円を描いてっと

「出来た」

炎なんだから水を使えばいい

水剋火、これ相剋の基本

「では……」

私は魔術円に魔力を込めながら、詠唱をし始める

Ich stelle diese Flamme ab私は炎を消す ――Wegen dieser Energieそのために力を

炎と氷の属性しか持っていない私でも、魔術陣と詠唱を使えば出来る

ただ魔力の消費量が多いけれど

Erlöschen Sie!消えなさいっ!

イメージは雨

炎の上で降る、そういう感じ

立体魔術陣が仄かに光り始めた

水気が集まり始め、炎の上に雨雲を作る

そして


ざぁーっ!


炎がある場所にのみ、雨を降らす

ん、成功したっと

「けど、これじゃないよね……」

クウさんは水を頼らずに炎を消した

無という属性で消したと思うけど……

「……あーっ! 分かんないよっ!」

無い頭で考えても、無理だった

「……戻ろう」

使ったものを片付け、部屋に戻る

「これって、どこだっけ……」

手に持っていたのは書

ちゃんと元の場所に戻さなきゃ

蝋燭の火を使って、本棚の開いてる場所を探す

「あった。 よいっしょっと」

ちょっと高い位置にあり、背伸びをして入れる

「さて……」

ベッドにもぞもぞと入る

「おやすみなさい」

お父さんはいない

結界士の仕事が忙しいらしいのだ

この地方じゃ余り見かけないし

そんなお父さんに、聞こえないと思うけど

そうして私は眠りに堕ちた……




あとがき

閑話

大体4話と5話の間の話

そしてルナ一人称

そんでもって、解説が長い

気にしないで読んでくださった方を

称えましょう

私なら読む気が失せますよ?(ぉぃ