「ねぇあゆちゃん、ちょっと来てくれるかな?」
時は昼下がり、場所は水瀬家。
「どうしたの名雪さん?」
「うん、ちょっと・・・ね・・・」
祐一の知らないところに陰謀が渦巻いていた・・・・・
「触らぬ神に・・・・・」
「それで、一体どうしたって言うの?」
日曜日の午後、水瀬家には祐一ラバーズ(北川命名)の面々が集められていた。
「私や栞だけならともかく、倉田先輩と川澄先輩、天野さんまで呼んでるってことは相沢君のことなんでしょ?」
「さすが香里、よく分かってるね〜」
「分かって当然じゃない、それに相沢君がいて問題ない内容なら百花屋に行くんでしょ?」
現在、祐一は買いたい物があるということで百花屋という喫茶店でアルバイトをしている。
・・・まぁ、そこで稼いだお金のほとんどはイチゴサンデーやたい焼きなどを奢らされるのに使ってしまうのだが・・・
・・・・・・・報われない祐一に合掌・・・・・・・
「確かにそうだけど・・・今日はここじゃないといけないんだよ〜」
ちなみに現在この場にいるのは、水瀬名雪・月宮あゆ・沢渡真琴・天野美汐・美坂香里・美坂栞・倉田佐祐理・川澄舞の8人である。
「???、どういうこと?」
本当にわからない、といった感じで首を傾げる香里。
「ちょっと待っててね、すぐに持ってくるから・・・」
「じゃあ、ボクはお茶をいれるね」
「「「「「「「!!!!!!!」」」」」」」
瞬間、場に緊張がはしる。
「あっ、あゆさん、私も手伝いますね」
「さっ、佐祐理もお手伝いしますよ〜」
慌ててそう申し出る栞と佐祐理。
「えっ、でも悪いよ、呼んだのはこっちなんだから・・・」
「「でも・・・」」
最悪の事態を防ぐために食い下がる2人。その時。
「あゆちゃん、人の好意は素直に受けたほうがいいよ?」
・・・この瞬間、栞達には名雪が天使のように感じられたという・・・
「・・・うん、分かったよ・・・2人とも手伝ってもらっていい?」
「「はい♪」」
「うぐぅ・・・なんか騙されてるような・・・」
笑顔の2人と対照的にどこか釈然としないあゆであった。
「皆おまたせ〜」
そういって名雪が入った部屋には1つの混沌があった・・・・・
「あれ?あゆちゃんどうしたの?」
部屋の片隅にあった混沌の名前は月宮あゆ、そしてその横にいた栞が問いに答えた。
「えっと・・・さっきお茶を淹れようとして失敗してからずっと・・・・・」
「・・・うぐぅ、皆分かってたからボクに1人でやらせてくれなかったんだね・・・」
そういって負のオーラを撒き散らす彼女はまさしく混沌だった・・・・・
「ほら、そんなこと言ってないでこっちに来てよ・・・今日は話しもあるんだしさ・・・ね?」
小さい子供に言い聞かせるように名雪が優しく呼びかける。
「・・・そうだね・・・うん、わかったよ・・・ごめんね、皆」
申し訳なさそうに謝るあゆ。
「・・・別に問題ない」
「私たちが悪かったんですから謝らないでください」
それに答えたのは舞と美汐だった。
「うん、とりあえずこの話しはおしまい!本題に移るよ〜」
名雪はそういって全員を集めた。
「それで、結局話しってなんなの?」
「それは・・・・・まず、これを見て」
そういって名雪が取り出したのは『週刊 コスプレ娘』という雑誌だった。
「・・・何ですか、これ・・・」
「こっ、コスプレ?」
名雪の突然取り出した雑誌には全員を怯ませるだけの威力があった。
「そう・・・コスプレなんだよ・・・」
意味深につぶやく名雪。
「こっ、これがどうかしたの?」
そんな名雪になにかを感じたのか真琴が話しをふる。
「これがね・・・祐一の部屋にあったの・・・・・」
「祐一さんの・・・ですか?」
「そう・・・あれは昨日のことだった・・・」
「名雪さんいきなりどうしたの?」
それまで黙っていたあゆが突っ込む。
「あゆちゃん、こういうのは雰囲気が大事だと思わない?」
真面目な顔でそう話す名雪。
「もう、雰囲気とかはいいから早く内容を話して!」
「わっ、お姉ちゃん、落ち着いて」
そう言って香里をなだめようとする栞。
「こほん・・・とにかく、この前私が祐一の部屋を掃除した時のことなんだけど・・・」
そういって名雪が静かに語り始める。
「私は昨日、初めて祐一の部屋を掃除したから色々探してみたの」
「えっ?初めてなんですか?」
そう言って全員が驚く。
「そうなんだよ。いつもはお母さんが掃除するし、お母さんがいないと祐一は自分でやって私にはさせてくれないんだよ・・・。
だけどね、昨日は違った。祐一は用事でいなくて私がお母さんに掃除を頼まれたんだよ。・・・そして、私は見つけてしまった・・・」
全員が名雪の言葉に引き込まれていく。
「まず私は机を探したんだよ・・・だけどそこには何もなかった・・・・・」
名雪も調子が出てきたのかみんなの反応を見て楽しんでいる。
「そこで私は考えたの・・・あの祐一が普通のところに隠す訳がないって・・・」
「それで・・・一体どこにあったの?」
我慢できなくなったのか香里が名雪に訊ねる、すると・・・・・
「実はね・・・ベッドの下に・・・」
「ベッドの下に?」
「地下(?)倉庫があったの・・・・・」
「「「「「「「・・・・・・・はあっ?」」」」」」」
全員が呆れた表情をしてそう言った。
「祐一さんの部屋って2階ですよね?」
「・・・・・2階の床下には倉庫を作ったりしない」
全員を代表して舞と佐祐理がそう言う。しかし・・・・・
「嘘じゃないよ・・・ねぇ、あゆちゃん・・・」
「そうなんだよ・・・本当なんだよ・・・」
はっきりとそう言う2人。
「えっ?・・・でもそれって可能なんですか?」
そう美汐が言った瞬間。
「それは企業秘密です♪」
音も無く秋子が立っていた。
「「「「「「「「!!!!!!!!」」」」」」」」
「それと・・・名雪には少しおしおきが必要ですね・・・」
そう言って近づいて来る秋子の手には『オレンジの悪夢』があった・・・・・
「いっ、嫌だよお母さん!そっ、それは人間としてノーサンキュー!」
「なっ、名雪さん・・・なんかキャラが違うよ?」
恐怖のあまり錯乱する名雪と冷静に突っ込むあゆ。
「ふふふふ・・・悪い子にはおしおきをしないとね・・・」
そう言ってにじり寄って来る秋子・・・そして・・・
「さあ・・・もう逃げられないわよ?名雪・・・」
「やっ、やめて・・・お母さんやめて!」
必死に懇願する名雪。しかし・・・
「問答・・・無用!」
神は無慈悲だった・・・
「だっ、だおぉぉぉぉぉぉ〜!」
名雪は悲鳴をあげながら意識を手放した。
「・・・さて、次は皆さんの番ですね・・・」
それを聞いて青ざめる一同。
「なっ、なんで私たちまで!?」
かろうじて香里がその一言を絞り出した。しかし・・・
「この子の話しに聞き入って止めなかったでしょ?それが理由ですよ」
この瞬間、全員が後悔をした。
しかし、時は有限。流れを戻すことも出来ない訳で・・・・・
「「「「「「「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!」」」」」」」
水瀬家に絶叫がこだました。
「さて、これでもう懲りたでしょうか?」
「さあ?でもしばらくは大人しいでしょう」
全員が気絶している中、庭から祐一が入ってくる。
「それにしても・・・よくわかりましたね・・・」
呆れたようにそう言う秋子さん。
「んっ、毎日綺麗に整理している結果ですよ」
そう、祐一は名雪が部屋を漁ったことに気づいて罠を張っていたのだ。
「それじゃあ秋子さん、今日はありがとうございました」
「いえいえ、私はこの子が悪いことをしたから罰しただけですよ」
『祐一さんも気をつけてくださいね?』と付け加える秋子さん。
「ははは、わかってますよ」
ともあれ、これで名雪の計画は失敗に終わったのだった・・・・・
その後、8人ともあまりのショックでそのことについての記憶がなくなっており、今も普通に暮らしているという・・・
後書き
ど〜も久しぶり(?)です作者のイルファです〜
とりあえず短編は私がどのジャンルが苦手でどのジャンルが得意か調べるために書いてるんでジャンルがばらばらになります。
後はもしかしたら次回からここは対話形式しなるかも〜っといったところですかね〜。
それでは読んでくれている方は次回もよろしくお願いします!
それでは〜、るー☆