「直枝理樹、先行します」
そう言うと同時にフロイントガンダムは背中のフライングアーマーユニットを可動させて、シールドとドッキングし変形。
そしてその上に鈴のジェガンを乗せて加速し、先に出撃した真人と謙吾を追い越した。
「ミノフスキーセンサー起動、敵機確認。数……６」
「理樹、真ん中のヤツがこっちのでも見えた」
「よし、情報リンク。鈴、このまま突っ込むよ！」
モニターごしにチリンと鈴の音がわずかに響く。
それがイザヨイ隊の戦闘の合図となった。
Ｅｐｉｓｏｄｅ Ⅱ
『火花散る宇宙』
その音と共に理樹は機体を更に加速させる。
そして鈴は理樹の機体から跳躍。
その反動と同時にブースターを点火、いっきに敵機に向かい肉薄する。
「敵さんとらえ……なっ！？」
先頭のギラ・ドーガのセンサーに鈴のジェガンが映った瞬間、その反応は猛スピードで自機に向かい迫っていた。
鈴のジェガンの脚に装備されたヒートクローが高熱を帯びる。
その高速の蹴りは敵のシールドごと左腕をもっていった。
『うあぁぁぁぁぁ！！』
「おいっ、どうした！？」
『なにかが急に横切って……あ、あれは……ガン、ひぃぃぃぃ！？』
「こ、今度はなんだ！」
何かを言いかけて急に爆発音と共に悲鳴に変った仲間に聞き返す別のギラ・ドーガのパイロット。
だが、返ってきたのは別の声。
『強奪犯に告ぎます。今すぐ武装解除して投降してください』
理樹のガンダムは先程鈴が蹴り飛ばした機体を捕獲し接触通信で通信に割り込んでテロリスト達にそう呼びかける。
「くそぉ、こちとらそう簡単に……」
「そうか。それならば容赦はしない」
それでも抵抗をやめない敵機に対し、謙吾のグスタフ・カールがビームマシンガンを掃射しつつ迫る。
そのメガ粒子の雨に対し回避運動をとるが、その先には真人の機体がビームショットガンを構え立ち塞がっていた。
「そらきたぁ！！」
とっさにシールドを構える。
だが距離はすでにクロスレンジに近い。
至近距離で大量のビームがばら撒かれ、防ぎきれずに機体各所に被弾、それでも反撃に移ろうとビームソードアックスに手を伸ばそうとするが、
「やらせるかよぉーーーっ！！」
それよりも速く真人のグスタフ・カールのビームナックルガードによるストレートパンチが敵機の右腕を奪う。
「さあ、大人しくしやがれ」
その時点で相手は機体の武装を解除し投降の意思を示す。
「よっしゃあ！ さぁて次は……」
『随分と遅かったな』
「あ？」
振り返ると謙吾の機体の右手には彼専用の高出力ビームブレードがトーチ状に輝いており、左手は別のギラ・ドーガを拘束していた。
周囲にはそのギラ・ドーガの武装であったろうモノがすべて両断されて漂っている。
「テメェ…、なにが言いたい」
『いや、随分と待ったというだけだが』
「なんだとぉ！ このオレがとろいとでも……」
「くっ、貴様ら。こんなトコで喧嘩しててもいいのか？ いまごろ貴様らの艦は……」
もっともなことを言うテロリストに対し彼らは、
『心配するな』
「着く頃にはもう終わってるだろうよ」
不機嫌そうに答えた。
ちょうどその頃、残り三機のギラ・ドーガは理樹と鈴の機体と交戦していた。
だが、正面にその二機を捉えたと思うとまったく別の方向からの連続砲撃で一機が行動不能に陥る。
レーダーにはその方向に機影は無い。
考えられることは一つ、単純にレーダー範囲外からの狙撃だ。
ミノフスキー粒子下のクロスレンジ戦闘の中でこの距離の狙撃。下手をすると味方に当たる危険な行為。
敵対する者達の正気の沙汰とは思えない行動に、テロリスト達は反撃の糸口すら見出せないでいた。
「理樹君からのデータを照合。一機撃墜確認だよ～」
「残り二機です～」
「理樹君の脳波に異常は無いか？」
「脳波は特に異常無し、サイコフレーム安定、問題なーし」
『各機体も目立った損傷は無いようです』
唯子の言葉に皆いつもの調子で答える。
「いつもどおりみんな絶好調ですねぇ。姉御！」
「ああ、またキミの腕は振るえそうにないな」
「う～ん、そういわれるとなんか複雑なはるちん……」
この部隊の戦い方はかなり特殊なものだ。
理樹のフロイントは索敵に優れた可変機であり試作型の小型高性能ミノフスキーセンサーにより敵の数、位置を探りサイコミュによるミノフスキー通信でそれを母艦に伝達する。
その情報から敵よりも素早く各機体に作戦、指示を伝えるという戦法である。
さらには恭介のユーゲントは理樹の機体からの情報を戦闘濃度のミノフスキー粒子下でもリアルタイムに送受信することができ、さきほどのような敵機のレンジ外からの精密射撃も可能としたのだ。人同士で行うオールレンジ攻撃とでも言おうか。
２機のガンダム共にサイコフレームが装備されているのはこの為だ。
だがこの戦法はニュータイプの存在が必須となる。
現に理樹、恭介はいうまでもなく、艦からその指示を飛ばすオペレーター二人にいたるまでニュータイプで固められている。
それでも完璧にはほど遠く、ニュータイプではない真人と謙吾には母艦か恭介からの通常通信範囲から指示を受ける事になるし、同じく鈴に対しても理樹から直接の接触通信で指示を出している現状だ。（鈴の場合は理樹機の護衛も兼ねての同時行動であるが）
だが、有視界戦闘が主となるミノフスキー粒子下でのモビルスーツ戦において、敵より一歩行動を先回りできるというとこはかなりのアドバンテージを持つことになる。この戦法こそ単艦で任務をまさせられる所以である。
現に先に位置をさらしてしまった敵は後手にまわるしかなく、確実に追い詰められていっている。
「理樹、無理はするな」
理樹は自機のミノフスキー通信を操作しつつ言葉を返す。
「大丈夫、この程度の敵なら問題ないよ。それにこの数なら」
翻弄され続けている敵を見て、二人とも余裕の表情。
鈴はブースターを噴かし接近戦をしかける。
シュツルムファウストによる反撃も難なくかわし、ハイキックで頭部を砕く。
メインセンサーを失い動きの鈍った敵は理樹のビームライフルから放たれた閃光でその戦闘能力をすべて奪われた。
「あと一機は……、あ！」
残る一機は先ほど砲撃の飛んできた方向、すなわち恭介のいる方向に飛び去る。
「しまった！」
ところかわって恭介機。
「一機流れてきたか。だがこの距離なら」
そう言いつつ右腕に装備された二連装ビームガンを放つ。
それに対し敵はシールドを切り離し、それを囮にしてブースターを噴かし、恭介の懐の中に飛び込む。
「速い！ 高機動型、リーダー機ってトコか」
そしてそのギラ・ドーガはユーゲントの腕を掴み拘束する。
「さっきの腕からするとお前が隊長機だな。だが重装備がアダとなったな！」
掴んだ両腕を更に引き千切ろうとする。
だが恭介に動揺はない。
「そいつはどうかな？」
その時変形したフロイントがジェガンと共にビームライフルを放ちギラ・ドーガの両腕を破壊する。
「恭介！」
『ヒィッ！！』
拘束の解けたユーゲントはビームライフルを相手のコックピットに突きつけた。
「投降しろ。もう仲間も全員取り押さえたぞ」
そのまま敵は降伏の意を示す。
「二人ともナイスタイミング！ 各機へ連絡、テロリストをステーションまで連行しようぜ」
そして、イザヨイと共にステーションに向かった。
ステーションの港口。
「さて、全員降りてもらうぞ」
そう言われたテロリスト達は機体から降りていく。
「じゃあ、謙吾と真人は機体の処理を頼む。自爆でもされたら敵わん」
『了解した』
『はいよ』
二人の機体は壊れたギラ・ドーガを牽引して外に持ち出す。
イザヨイもまだ外で待機したままだ。
「さて、艦長。どうする？」
『ステーションに仕掛けがないか確かめる。作業方法はそいつらに聞き出せばいいだろう』
「了解、聞いたとおりだ。理樹、鈴、手伝ってくれ」
「うん」
二人がテロリスト達の腕を拘束し恭介がマニピュレーターで彼らを誘導する。
「ちっ……、遅ぇな……」
「そろそろ時間のはずなんだが……」
「ん？ お前ら何を話して……」
その時、外の方で何かが光った。
同時にイザヨイから通信が入る。
『み、みんな！ 真人君と謙吾君が！！』
「なんだと！？ 神北、外で何が起きている！」
「ッ！ 真人っ、謙吾！！」
その通信を聞きフロイントに乗り込んだ理樹は外に飛び出す。
「理樹っ！ チッ、お前ら何か知ってるんだろう！」
そういって見たテロリスト達は皆ニヤニヤと笑っている。
「くそっ！ 鈴、こいつらを中にぶちこんだら俺達も出るぞ！」
「わ、わかった！」
とりあえず彼らを管制室に拘束し、それぞれの機体に乗り込む。
そしてユーゲントとジェガンも漆黒の宇宙へと飛び出した。
オリジナル機体紹介
ＲＸＺ－０１
フロイントガンダム
武装
ハイパービームサーベルｘ２
ビームライフル
グレネードランチャーｘ２
肩部バルカンｘ４
特殊装備
シールド
ミノフスキー通信機構
変形時
バルカンｘ４
ビームライフル
ハイパービームガンｘ２
イザヨイ所属の新型ガンダムの一機。搭乗者は直江理樹少尉。
ミノフスキー通信機構を備えたＮＴ専用機であり、この時代でも珍しいサイコフレーム搭載の可変機体。
この装備を活用することで、イザヨイ隊はミノフスキー粒子下においても旧世紀とまではいかなくとも、かなり近い通信状況を得ることが可能となる。
機体の原型はＺ計画の系譜を受け継いでおり、フライングアーマーを装備しているなど形状、装備も酷似している。
武装は標準のものだが高い機動性を持ち、変形時には僚機をのせるサブフライトシステムとしても運用できる。
あとがき
なんだろうか。この出来は……。
大風呂敷広げた割にはガンダムっぽくないｏｒｚ
その上、戦闘の描写が頭では浮かんでも文字にならない。
もう少し本でもゆっくり読める時間があれば……。