日常は彼を追い立てる。


 ある時は責務に追われ、またある時は突発的事件に巻き込まれ。


 それでもどうにかこうにかすべてをこなした彼はようやく眠りにつく。


 だが彼に安息の日常を与えるモノはすでに彼の周りには誰一人として存在していなかった。








 集まれ!キー学園(?) 番外編



「非日常が見る日常は非日常な日常」





 朝。

 今日は日曜日。

「ふぁ……」

 そしてそれは彼、相沢祐一にとっても溜まった疲れを癒す貴重な時間である。

「……九時か、今日は少し寝坊したな」

 無理もない。新学年になってからというもの彼は相当動き回っている。

 新しいクラスは始まった時点ですでにカオスなクラス。しかも拒否権無しに裏生徒会の次期会長に任命され、あげくにこの間は春夏秋冬四姉妹までこの街に集合し、もはや家でも学校でも賑やかな事この上ない。まあそれは以前から似たようなものではあったがここ最近は特にそれが激しい。

「なんだかんだいって疲れてたのかもな」

 そして再びベッドに潜る。

「名雪じゃないが、今日は昼頃までゆっくりと……」

 彼にしては珍しく二度寝に入ろうとしたその時、

「ゆうううぅぅううぅぅぅううういぃぃぃぃちいいいぃぃぃぃぃいいいいぃぃぃぃい!!!!!!!!」

 なにか微妙に裏返ったような感じでどこかでというかほぼ毎日聞いている声が某ガキ大将ばりに近所に響く。

「……浩平か」

 呼ばれている。あの迷惑大王、折原浩平に。

 恐らく行かなければ明日以降疾風怒涛の嫌がらせ合戦が繰り広げられることになるだろう。

 もしそうなったら祐一の疲労は溜まる一方だ。

「仕方がないな」

 祐一は手早く服を着替え、部屋を出る。

「あ〜、祐一〜。出かけるなら今日は外で食べてきてね〜」

 家から出ようとした瞬間、居間から春子の眠そうな声が聞こえる。

「ん? どうしたんだよ」

「昨日は慎也さんとオ〜ルナイトラブラブト〜ク(はぁと)で盛り上がってたから〜。もうあの人ったら声だけでもお母さんを眠らせないん、だ・か・ら♪」

「一生寝テロ」

 徹夜で万年桃色新婚会話を繰り広げていたであろう春子を言葉で一蹴し外に出る。呻き声が聞こえるような気がするが気にしない。

 するとそこには、

「な、なんだこれは!?」

 玄関を出た祐一の目の前にはドでかい脚があった。

 それは決して人間の脚ではなく、無機質な機械。まさしく巨大ロボットの脚だった。

「よう! 起きたか祐一」

 その声は上の方から聞こえてくる。

「浩平……? これに乗っているのか?」

 見上げるとそのロボットは右手に工事現場の杭打ち機のようなものを装備し、左手には三門のガトリング砲、両肩には巨大なハッチがあり、頭には伊達っぽい角を生やしていた。

 どっからどう見ても某古い鉄だが、大きく違うのは全身のカラーが黄色に統一されており、更に雷を模したエンブレムが輝いていることか。

「目ん玉かっぽじってよ〜〜〜く見ろ! その名も俺、折原浩平専用ア○トアイ○ン! どうよ!? この雄姿!!」 

「いや、どうよって言われても……」

 大抵のことでは動じない精神を持つ祐一だが、これまでに無い出来事の上に無理矢理起こされたこともあってか頭が上手く回っていない。

「なんだよその感想は。この日の為に毎晩瑞佳とみさおを催眠術で操り開発を進めていたというのに。ちなみに塗装は名雪担当だ」

「そんなことをしていたのか」

 ひょっとしたら毎朝の遅刻はこれが原因だったのではなかろうか。

「で、なんの用だ」

「何って、この俺の愛機を拝ませてやろうと……」

「そうか、じゃあな」

 祐一はその場で回れ右して玄関の扉に手を掛ける。

「ま、まてまて! この姿になにか感じるものは無いのか!? お前の魂に言葉ではとても言い表せないモノが、なんかこうガツンと響かないのか!?」

「無い。というかなにが響くっていうだ」

「朝起きたら突然目の前に謎の巨大ロボット! どうだ、このシュチュエーション! ドキがムネキュンで止まらないだろう!!」

 日曜の朝だというのにスピーカーで拡張された大声量があたり一面に響く。

 しかも自分専用と名乗っている時点ですでに謎ではない。

「うるさい。というかお前は何がしたいんだ。そんなに暇なのか?」

「何を言う、俺は常に忙しいぞ。昨日だって某砂漠の国王に全身ドリルを装備させてグ○ンラ○ンと命名しようと考えながら一夜を明かしたところだ」

「F○Yかよ。しかもその名前長すぎて入力できないんじゃないのか?」

「ああ、だからカ○ナにした」

「そうかよ……」

「なんだその顔は! 弟の名は○モンだぞ!? 筋肉だけど」

「知るか」

「そのためだけにわざわざ地下倉庫から超家庭電子頭脳を引っ張り出してきたというのに!!」

 どうやらスー○ーファ○コンのことらしい。

「やっぱり暇なんじゃないか」

 もはや呆れて頭を抱えていたその時、

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!??」

「純一くーん、まて〜〜〜〜〜〜♪」

「二人共止まりなさ―――――――い!!」

 祐一の頭上を突如三つの影が通り過ぎる。

「あれは……?」

「うぉぉぉぉぉぉ!!??? って、せ、先輩!? ちょ、ちょっと助けてくださいぃぃぃ!!」

 そう叫ぶのはどう見てもR−○の変形形態、○−W○NGを駆る純一と、

「そんな助けてだなんて物騒な。わたしはちょっと一緒に合体しようってだけなのにー♪」

 それを追うみさおの○−2パワー○。

「そ、そんな……。今何をしようと!? よりにもよってに、兄さんと……が、がった……。と、とにかく待ちなさ―――――い!!」

 そして最後に音夢の乗るR−○パ○ードが続く。

「あー、一応聞いてやるが何をやっているんだ? 純一」

「こ、こっちが聞きたいくらいですよ! 朝起きたと思ったらもうこれに乗っいて、いきなり発進したと思ったら後ろからみさおと音夢が……」

「もー、純一くんったら。ほら、わたしのほうから前を開いてあげるからここに……」

「な、何を言っているんですか!? こんな大空の下、二人でそんなハレンチなことを……。兄さんの……不潔―――――ッ!!!」

 その言葉と同時に○−3パワ○ドから手持ちのレー○ーキャノ○が発射される。

「うおわぁ! ってあんなのまともに喰らったらシャレんなんねぇぞ!? ていうか音夢、なんか勘違いしてないか?」

 とっさに機体を旋回させてかわすが、今度は目の前にみさおが回り込む。

「きゃはっ、つーかまえたー♪」

「なんとぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 そして今度は一気に急上昇してその手を逃れる。

 とても初めて操縦したとは思えない素晴らしい腕だ。

「うーん、さすがは純一くん。素早いなー」

「あなたも! 毎度毎度いいかげんに兄さんを追いかけるのはやめなさい!」

「あ、でもこれ三体合体だし。なんなら三人一緒に合体する?」

「な!! 兄さんとみさおさんと……さ、三人で……? 兄さんの、兄さんの……、一夫多妻制――――――――ッ!!!」

 そして今度は背中のスト○イクシ○ルドが射出される。

「な!? ね、音夢、やめっ……、誰か、誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 その言葉を残して三機とも更に上空に昇っていく。

「……で、あれもお前の仕業なのか? 浩……」

「みさおぉぉぉぉぉぉぉぉ!! お兄ちゃんの目の前で他の男と合体などと! しかも三体合体だと!? そんな事……、そんな事ぉ……。俺も混ぜろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ちょっとまて」

 なにやら危険な発言に思わずツッコミを入れる祐一。

「なんだ、お前も入りたいのか? なら五人で戦隊ができるな。何レンジャーがいい?」

「入らん。で、お前は結局そのロボットで何がしたいんだ?」

「おう、そうだった。祐一、さっそくだが俺と勝負しろ」

「は?」

 唖然としている祐一を無視して浩平は構わず話を続ける。

「こないだの野球の時はうやむやになったからな。こうして白黒ハッキリさせる為に俺はこの力を用意したというわけだ。さあ、いざ尋常に勝負!」

 そういって自信満々に構える。

「ちょっとまて、そんなモノに生身でどうやって……」

『その勝負、この佐祐理が預かりました』

 突如、空から声が響く。

「むむ! 何奴、名を名乗れぃ!!」

「いや、思いっきり名乗ってるから。って、今度はなんだ……?」

 そして声の聞こえた方を向くと、

『あははー。みなさん、ごきげんよう』

 そこには空いっぱいに映しだされた巨大な佐祐理の姿があった。

 ただ普段と違うのは正体を隠したつもりなのか、舞踏会ででもつけるような仮面を身につけていることだ。

 そしてその映像は空中に浮かぶ巨大な戦艦から映し出されている。

 ついでにその戦艦も例に漏れずハ○ネとか○ロガ○といった戦艦にとてもよく似ていた。

『フッフッフ。どうやらこの艦首超大型映像投影装置によって映し出された謎の佐祐理にお二人共驚かれているようですね』

「謎のって……。佐祐理さん、そんな格好で一体何を……」

「謎の佐祐理……。一体何者なんだ!?」

 浩平は真顔で映像に向かって叫ぶ。

「いや、だから……」

『そうですね。佐祐理はこの宇宙箱舟級倉田カスタム、オカネの超艦長、キャプテンさゆりんとでも名乗っておきましょう』

「キャ、キャプテンさゆりん!?」

「……もういい」

 一連のやりとりに祐一は呆れを通り越しもはや無関心を決め込もうとしている。

『祐一さん、さすがに今のままでは分が悪いでしょう』

「え? あー、そうですねぇ」

『ということで、このキャプテンさゆりんがあなたに新たな力を貸し与えましょう。さあ、受け取ってください!』

 そう言うと同時に戦艦のカタパルトから何かが射出される。

 ズゥゥゥゥン!!

「これは……」

 祐一の目の前に降り立った機体は、

「○クだな」

 まんま某ザ○Uだった。見たところ機体に目立った特徴は全く無い。

「佐祐理さん。貰っておいてなんですが、もうちょっとまともな機体は無かったんですか?」

『心配無用です。その○クは20段階フル改造が施されています。そんじょそこらの敵なんか一捻りですよ』

「なにぃ、俺のは塗装に金使ったから無改造だぞ!?」

「それも浩平じゃなくて名雪がやったんじゃない」

「おー、リアルジオラマだおー」

 二人の家からそれぞれ瑞佳と名雪が顔を出す。

「二人共すまんな、朝っぱらから騒がせて」

「いいんだよ。それより祐くん、浩平をボコボコにしちゃって。聞いてたら最近の寝不足は浩平が原因みたいだし」

 顔こそ笑っているが目は全く笑っていない。

 しかももともと整った顔でやるものだからかえって怖い。

「あ、でも手加減はしておいてね。とどめは私が刺すもん」

「なるべく善処しよう」

「ちょっ、二人で恐ろしいことを言うな!」

 叫ぶ浩平を尻目に祐一は○クに乗り込もうとする。

「だめだよ。祐一……」

「なんだよ名雪。止めるな、面倒だがこの状況はもうやるしか……」

「そのザ○素組みだよ。せめて墨入れぐらいしないとだおー」

「……」

 寝ぼけた従姉妹を無視してハッチを閉める。

「ふっ、準備は整ったようだな。祐一」

「なぁ、浩平。今更だがやめないか? 実は俺は今激しく眠くて……」

「この千載一遇のチャンス! 俺は今野望を完遂する時!」

 と、容赦無く砲身を向ける。

「喰らえ! 咆哮する三つの雷撃(三連○シンキャ○ン)!」

 バリバリバリバリ!

 さすがは四天王の一人。その射撃は正確に祐一の○クを捉える。

「聞く耳持たずかよ。って、損傷率50%オーバー!? 佐祐理さん、これ改造されてるんじゃないんですか?」

 コックピットの中はアラームが鳴り左腕は機能停止、他に当たった場所も火を噴いている。

『おかしいですね。一弥、どうなってるの?』

『え、だって姉ちゃんが、まずは自分の機体をフル改造ですよねーって、この艦と姉ちゃんのインフィニティに資金全部つぎ込んだからもう残らなかったんだよ』

『……』

『一応改造はしとけって言われたから安かったENだけは最大まで改造しといたよ。あの機体には意味無さそうだったけど、無意味な事にも情熱を燃やす姉ちゃんも素敵……』

 そして妄想にトリップしてゆく。

「で、その話からするとこの機体は素のままってことですか」

『あははー』

「あははー、じゃないですよ」

「フッ、残念だったな祐一。これでとどめだ! 襲いかかる烈火の豪雨(ス○エア・クレイ○ア)!!」

 開いたハッチから大量の弾幕が降り注ぐ。

「くっ、万事休すか」

『いえ、まだですよ祐一さん。いまこそ秘められた心の力を解放する時です!』

「心の……?」

 祐一は心を静かに自分を見つめる。

「見えた!」

 それがピークに差し掛かった瞬間、祐一の頭に新人類の人達がなんかあった時に出そうな白いやつが輝く。

「なにぃ!? あの弾幕をすべてマト○ックス避けだとぉ!?」

「これが俺の……、俺の力か!」(雰囲気に酔ってきた)

「今度こそ当てる、すべてを貫く鋼の撃鉄(○ボルビング・ス○ーク)!」

「甘い!」

 浩平の右の一撃をまたもかわす。

 その動きはもはや初めから当たる確率が0%だと言わんばかりに見事だ。

 そしてそこにすかさず反撃の12○mmマシンガンを叩きこむ。

「ぎゃああああ!」

「ちょっと待て。さっきの伏せ字は近年稀に見る意味の無さじゃあなかったか?」

 そんなことは誰も気にせずそんな感じで攻防は続く。

 そして、

「ぜぇぜぇ……、さすがは祐一。この俺の攻撃をこうもやすやすとかわすとは、やはり我がライバルに相応しい」

「はぁはぁ……、黙れ。さっさと倒れろ」

 祐一はすべての攻撃をかわして逆にすべての攻撃を当て続けている。

 そのせいで浩平の機体はもうボロボロだ。

「だが、最後に勝つのは俺だぁ! 受けろ、熱き漢の魂の証(○ートホ○ン)!」

「懲りないヤツだな」

 またも確率論を操作してかわそうと心に念じ……、

「!?」

 だが、その行動は不発に終わる。

「もらったぁ!」

 ガシャァァァン

 そして浩平もその隙を逃す男ではない。

 ザ○の右腕が今度こそ焼き斬られる。

「ハッハッハッ! どうした祐一、動きにさっきまでの切れが無いぞ」

「くっ、一体どうしたっていうんだ」

『どうやら力を使いきってしまったようですねぇ』

「くそっ、ここまで来て」

『あきらめるには早いですよ、祐一さん。こんなこともあろうかとその機体にはパイロット用強化パーツが搭載されています』

「強化パーツ?」

『そうです。さあ、そこのボタンを押してそれを使うのです!』

「これか?」

 言われたとおりにボタンを押すと手元に何かが出てくる。

 そこに現れたのは購買部の悪魔飲料、どろり濃厚ピーチ味。

『それを飲めばあなたの精神はたちどころに回復を……』

「いや、それ以前に飲めませんから」

 いくらドリンク系とはいえこれは無理がある。

『ふえ〜、しかしその機体には三つのパーツが積んであります。どれかを使う事ができればきっと勝機が見えるはずです!』

「なんか嫌だなぁ」

 そう言いつつも二つ目のボタンを押す。

 次に出て来たのは古河パンでお馴染み、早苗特製レインボーパン。

「……」

『今度こそそれを食べればあなたの精神は……』

「崩壊します。だからそれ以前に食べられませんってば」

 もう諦めて三つ目にボタンを、

「だが、この流れからいくと……」

 押すと出てきたのはやはり瓶に詰まったオレンジ色の物体。

「くそっ! ちょっとは捻れよ!!」

「何を悩む祐一、パンにジャムをつけてジュースで飲み込む。優雅な朝食じゃないか。朝はちゃんと食べないと健康に悪いぞ?」

 そんな朝食はもはや人外魔境の領域だ。

「黙れ、お前が食ってろ」

 その声は怒りでワナワナと震えている。

「だがそれを食べなかったことで、お前は完全に勝機を失ったのだよ!」

「はっ! しまった!」

「はああああ! 熱き血とともに必ずドまん中にまっ直ぐ撃つと気が迫りつつ幸せな運がおこるようにと努める力をこの俺にぃぃぃぃぃぃ!!」

 その言葉とともに機体が忙しく光ったり燃えたりする。

「おい、お前なんでそんなに色々と使えるんだ?」

「はっ! 戦場を駆ける白衣の美男子兼、最前線の配膳星王子の名は伊達じゃないぜ!」

『だからレベルだけは高いんですねー』

「そんなことはどうでもいい! それより喰らえ、我が最終奥義! 今解き放たれる逆転の手札(『切○札』)!!」

 浩平は機体のブースターをすべて使って突撃。

 そして全身の火器を開放する。

 哀れザ○の両腕は完全に吹っ飛び、脚は穴だらけ頭は壊れ胴体もズタボロになる。

「ゆ、祐くーん!?」

「おー、リアルウェザリングだおー」

「おい、浩平。ちょっとシャレになら……」

「とどめだぁぁぁぁぁ!!」

 そして更に右腕の杭打ち機を全弾お見舞いする。

「うおおおおおぉぉぉぉ!?」

 その猛攻に原型を無くした○クはついに爆散する。

「……フフフ、勝った。祐一討ち取ったりぃぃぃぃぃ!」

 うぉぉぉぉぉ、と自らの勝利に勝ち名乗りを挙げる。

『あははー、さすがに祐一さんでも無理でしたか。ところで折原さん』

「撃墜数1ゲットォォォォォ!! なんですか倉田先輩」

『い、いつの間に佐祐理の正体に!? まぁそれはともかく、急にロボットなんか作って一体どうしたんですか?』

「その件ですが祐一にはああ言いましたけど、実はある目的があって」

 なぜかここで深刻な声になる。

『ふぇ〜、なんですか、それは?』

「実は……」

『実は……?』

 さすがの佐祐理も真剣に聞き入る。

「必殺技を叫びたかったんですよ」

『ふぇ?』

「いやー、俺って今のところここじゃあ必殺技って叫んだことなくて、ずっとあれいいなーって思ってたんスよねー。あと専用のワンオフ機にも乗ってみたかったし。あー、すっきりしたぜ〜」

『はぁ……』

 そのあっけらかんとしたどうでもいい理由に呆然としていると、

「ふっ、そうか……。そんな下らん理由で」

 瓦礫の中からまるで地の底から響くような声が聞こえてくる。

「!?」

 慌てて声のするほうを見る。

「じゃあ、お前はただ必殺技を叫びたかったから俺をこんな朝っぱらから叩き起こしたと。そういうわけだな?」

「ゆ、祐一……!?」

 浩平が驚くのも無理はない。

 それは確かに祐一だったがそれはいつも彼が知る祐一ではなかった。

 全身から魔力っぽいオーラを放っているし、瞳は黄金に輝いているし、背中には白と黒の対象的な翼が生えているし、なにより普段の彼からは想像もつかないくらいの無表情な怒り顔でこっちを睨んでいた。

『倒されたはずの祐一さんの反応が……。まさか、ここで起こすつもりなのですか!?』

「祐くん、綺麗……。」

「祐一に発光ギミック? LED内臓?」

 その光景に外野の反応も様々だ。

「そうか、そうだよな。大声で叫んだら気持ちいいもんな」

 そういうと同時に何かやばそうなものがドンドン集約していく。

「ま、待て。祐一! 話せば解る!」

「俺もちょっと一発派手に叫ぼうか……。」

 そして両目が輝き、翼の光も激しくなる。

「わ、我が人生に一遍の悔いな……」

「“光と闇の二重奏(アルティメット・デュエット)”!!!」

 その一撃ですべては無へと帰っていった。












「……ハッ!」

 祐一は目を覚ます。
 
「パパ、どうかしたの?」

「……リリス、か?」

「うん。大丈夫? 苦しそうだった……」

 思い出す。

 ここはカノン王国の王城。

 確か自分は政務を終えて、リリスから学園での話を聞いていて……。

「ああ、心配するとこはない」

「よかった」

 そういって膝の上に戻る。

(夢か……)

 なにやら妙な夢を見ていたような気がする。

 とても遠く、ありえないような。

 しかしいつも見ているような夢。

「それで、亜衣とマリーシアがなのはと……」

 ああ。

 それでか。

 このリリスの、自分の娘の学園での楽しそうな話。

 これを聞いていたから自分の願望のような、平和な学園生活を夢みていたのかもしれない。

(あちらでは家族もいたな。名雪どころか秋子すらも普通の親類で、仲間にも囲まれて……)

 ふとそれを思い出すが、

(俺は凄く疲れていたな……)

 なにか物凄い毎日だったような気がする。

 賑やかなことは悪いことではないのだが……。

(まぁ、学園なんてそんなもの……)

「それでアウルシュトゥスや彗輪を見せたらみんな羨ましがって、試し撃ちをしようってことになったのを亜衣が止めに入って男子と喧嘩になっちゃたから思わずディトライク出しちゃって、それをクラウで止めようとしたらなのはがレイジングハートで……」

「学園に武器を持って行っちゃいけません」

 なんで学園と名のつくものはこうも慌しいのだろう。

 祐一は明日朝会を開くことを伝え、増やす校則を書き記して明日の予定を繰り上げる為に再び机に向かった。

 どうやらどんな世界だろうと彼は忙しいらしい。












 一方、ワン自治領では、

「ああ! 光が、光がひろがってゆくぅぅぅぅぅぅ!!」

「寝ている時まで騒がないでください」

 安眠妨害の罪により、今日も王室は水没していた。











あとがき

 ども、壱式です。
 まあ、今回の話はなんというか、自分なりに神魔とキー学がこんな感じで繋がってたらいいなーとか思ったりして、結構勢いだけで書いてしまいました。
 っていうか伏字多すぎです。
 あと、ネタが解かり辛かったらすみませんw
 本来この作品は第二回宴のために書いたのですが、書き方変えただけでほとんど似せることは出来ませんでした。申し訳ありませんです。
 でも少しでも面白いと思っていただけたら幸いです。
 いい修行にもなりました。
 でわ、また。