THE BATTLE SHIP EXCERION  
         
           〜闇を抱えし者の軌跡〜 



   2195年5月中旬……人類は地球という域を越え、戦争を開始した。


  資源開発を目的として設立された木星圏コロニー及び衛星都市が、地球圏か
ら分離・独立を求めてきたこと


  に端を発しそれを地球側が拒否したことにより、そのまま武力抗争へと突入
したのだ。誰もが物量に勝る


  地球側の圧勝と考えていたが木星側は高性能の無人兵器、次々と兵器を送り
出す門等を投入し開戦から半年


  足らずで火星、そしてすでに月周辺まで掌握されていた。そして2196年
8月、とうとう地球に門の到達


  を許し戦火は地球をも巻き込んだ。人々は兵器.銃弾が飛び交う中、不安そ
して絶望を抱え同時に希望も


  抱いていた……
  
  
  
  

  ”平和”という名の希望を………















    第2話   軌跡の始発点(前編)



   〜2196年12月26日 佐世保地下ドッグ〜


   そこには一隻の戦艦が鎮座していた。従来の戦艦とは似ても似つかないそ
の形はどこか力を感じさせるも


  のであり2本のブレードを堂々とかざし、出航の時を静かに待っているかの
ようだ。


   ”巡洋艦エクセリヲン”


  これがこの船の名前である。いままでの戦艦のように核パルスエンジンでは
なく相転移エンジンという全く


  新しい技術を用いたネルガルの誇る最新鋭艦である。その出力は核とは一線
を凌駕し、それを利用した


  ”グラビティブラスト”が主砲として装備されバリアの役目をもつ”ディス
トーション・フィールド”も


  搭載されている。そして、今まさにこの戦艦はその役目を果たすため飛びた
たんとしていた……





     〜エクセリヲンブリッジ〜  


  「分かりました。全乗組員搭乗完了ですね」


   プロスがブリッジ上層で連絡員からの報告をうけそう言った。コミュニケ
を閉じると、少し前にいる女性


  に”お願いします”と目線を送った。


  「それでは各員、マニュアルに従い発進シークエンスをたちあげてください
」


   凛とした声で指令をだすその姿は、女性とは思えないほど堂々としており
また歴戦の将を感じさせるには


  十分なものだった。


  −水瀬秋子−劣勢な兵力の中、その類まれな戦略術をもって数々の成果をあ
げ、若くして地球連合軍大佐に


  抜擢された。ネルガルが私的な戦艦を作ると軍に報告したさい、軍人を数名
同行させることを条件にして


  きたため提示された人選の中でネルガルが彼女を選んだのだ。そして結果的
に3名の軍人が乗り込むことに


  なったのだが、それがある人物の運命的な出会いに繋がるとは誰も予想して
いなかっただろう。
  

   さて、指示から少し時間がたつと次々と準備完了の報告がブリッジ中層か
ら聞こえてきた。


  「通信・情報管理異常ありません!」


  「レーダー各種オッケーです!」


  「運航も問題なしです〜♪」


  「各兵装、及びディストーション・フィールド異常なし!」


  「各乗組員所定の位置にて待機完了!」


  「「発進準備完了です!!」」
 

   オペレーターと操舵士の声が重なり、上層にいる艦長に準備完了の報告を
する。艦長は閉じていた瞳を


  ゆっくりと開け、すぐ隣にいる副官らしき人物に目を向けた。艦長を少し若
くしたような容姿をもつその


  女性(少女と言ってもいいだろうが)はゆっくりと頷くとブリッジを一通り
見回し決意を込めた瞳で


  声を上げ、発進を


  「それでは!巡洋艦エクセリヲン発し"ドォォオオオン!!"………ん??」


  ……宣言しようとした所でドッグに衝撃がはしり無理やりにそれを中断させ
た。


  「えぇぇえええ!!なに!?何があったの〜?(泣」


  「まってください……!ドッグ上空に木連軍無人兵器を確認!!」


  「そんなぁ…なにもこんな時に来なくてもいいのにぃ……」


   彼女がそう言うのも無理はない。なんといっても今まさに飛び立とうとし
て出鼻をくじかれたのだから。


  まあ、今は戦争中であり何時いかなるときも戦闘に巻き込まれる可能性を秘
めているのだから幾分か甘えの


  入った発言ともとれるが、戦闘経験のない彼女にそれを求めるのは酷という
ものかもしれない。


  「名雪、落ち着きなさい。あなたはこの艦の副官なんだからこの程度で動じ
てはだめですよ。上官の動揺は

  クルーに無用の不安を与えてしまいますからね」


  「あ……分かったよ、お母さん」


   副官の少女−水瀬名雪はすぐに立ち直るとこれから自分がどういう行動を
するべきか過去に習ったことを


  駆使して考え出した。彼女は連合軍士官学校を主席で卒業したいわばエリー
トである。先ほどの発言で分か


  るように秋子の娘であり、母親の才能を十分に引き継いでいる。学校卒業と
同時に軍に入隊する予定だった


  が秋子がネルガルの要請を受けると言うので、それに着いていくことになっ
たのだ。


  「栞ちゃん、地上の様子はどうなってる?」


   考えをまとめた名雪はオペレーターの美坂栞に指示を出し、今の状況を見
極めようとしていた。秋子は


  その様子を期待を込めた眼差しで見守っていた。さすがは母親といったとこ
ろであろうか。


  「えっと…現在無人兵器約200をドッグ周辺に確認。佐世保駐留軍と交戦
中ですが長くは持ちそうに

  ありません」


  「…艦の発進システムに問題は?」


  「先ほどの衝撃での被害は格納庫の荷物が崩れた程度です。問題ありません
!」


  「それじゃあ、すぐにに再発進の準備をお願い。それからエステバリスの発
進準備を格納庫に連絡してくだ

  さい」


   支持をだし終え名雪は秋子のほうを見た。秋子はその意図を理解すると”
上出来ですよ”とニッコリ笑み


  を浮かべた。名雪は照れたような笑みを浮かべると再び視線を引き締め、再
び口を開いた。


  「エステは準備完了しだいエレベーターで地上に出し、エクセリヲンが発進
するまで敵を引き付けてもらい

  ます。このままだとここも何時まで持つかわかりません!……香里、一弥君
お願いできる?」


   下層にいる2人、美坂香里と倉田一弥にそういうと2人は了承の意を持っ
て頷いた。


  美坂香里−彼女は学校にいかず、直接軍にはいったいわば叩き上げのパイロ
ットである。才能があったのか


  1年経たないうちにエースと呼ばれるほどの腕前をもつようになり多数の無
人兵器を掃討している。


  ちなみに、名前から分かるようにオペレーターの栞とは姉妹である。また、
倉田一弥は軍人ではないが


  ネルガルのテストパイロットとして活動しており、その腕前は軍のパイロッ
トにも引けをとらないといわれ


  ている。実際はただのテストパイロットではないのだが、後々分かることな
ので伏せておく。ちなみに、


  彼も身内が乗っており操舵士の倉田佐祐理が姉にあたる。


  「まったく…出航前から戦闘なんて、幸先がいいのかしら?」


  「まあ今は戦時中ですからね。それにここは戦艦ですからこれからの予行演
習ができたと思えば儲けもの

  ですよ」


   緊張があまり見られないのはさすがはパイロットといったところだろうか
。2人は格納庫へつづく


  シューターへ降りようとして、


  「「お姉ちゃん(一弥)、気をつけてくださいね!」」


   と、声をかけられた。黙って笑顔で返事をし、シューターに向かおうとし
た所で格納庫からの連絡に全員


  が驚愕の顔をうかべた。


  「ブリッジ!エステは出せねぇ!!さっきの衝撃でエレベーターのシャフト
が曲がっちまったらしい。これ

  から修理しようにも時間かかっちまうぞ!」


   整備班長の報告を聞いた秋子と名雪は事態を把握すると、すぐにこれから
どうすべきか?どうすればこの


  危機を脱せるか頭をフル回転さてていた。そして秋子はおもむろに後ろの人
物、提督であるムネタケ


  サダアキを見やり提督が頷いたのを確認すると


  「総員退艦の準備を。このままでは出航前に生き埋めになってしまいます。
エクセリヲンは無事ではすまな

  いかもしれませんが皆さんが生きていれば次のチャンスもきっとあるでしょ
う…」


   出航せずの退艦…軍人としてはやりきれない気持ちかもしれないが、エク
セリヲンは軍艦ではない。民間


  の船であり民間人も多数乗船しているのだ。そのことを考えるとこの判断は
英断といってよいだろう。


  そして提督も秋子の判断を支持したところを見ると営利出世のみを目的とし
た軍人ではないことが分かる。


  秋子に続き、提督として退艦の指示を出そうとしたところで、


  「連合軍提督として艦長の指示をみとめるわ。総員ただちに『お待ちくださ
い!』……何?プロス」


   プロスが提督の発言を無理やり止めに入った。秋子もめずらしく憮然とし
た表情でプロスの方をみていた


  。まさかとは思ったがネルガルとしてこの艦を放棄するのを止めるのではな
いかと思ったのだ。一方、


  プロスはコミュニケを操作していた所をみるとどこかと連絡を取っていたよ
うである。


  「お待ちください。たった今本社から連絡がありまして搭乗予定だったパイ
ロットが本社からこちらに向か

  っています。少し前に出発したらしいので、あと5分もすれば到着するとの
ことです。皆さんはこのまま

  出航の準備を続けてください」


   プロスは自信ありげにその報告をして、提督の方に視線を向けた。


  「プロス…まさかあの子がくるのかしら?」

  
  「その"まさか"ですよ。本来なら大気圏を抜けた所で合流予定だったのです
がドッグ襲撃の報告を聞いて

  予定を変更したそうです」


  「そう……また助けられるわね。いいわ、こちらも直ちに発進準備を再開!
!一刻も早くこの穴倉を

  出る!!各員急いで作業を再開してちょうだい」


   提督が声を張り上げ作業再開の指示をだした。しかし秋子はそれに対し、


  「ま、待ってください!ネルガル本社からここまでどうやって来るんですか
?エステにしても戦闘機にして

  もあと5分というのはどう考えても無理があるように思えますが……」


   たしかに秋子のいうことは最もである。佐世保とネルガル本社は直線距離
にしてもそうとう離れている。


  少し前に出た、ということをふまえると5分で到着するとは考えにくい。


  「大丈夫ですよ。彼は時間に正確ですし、何より自分で”する”と言ったこ
とは必ずやりとげますから」


  「そうよ艦長。そのことについては私も保証するから安心して頂戴。それに
あの子のことだから、どうせ

  またとんでもない方法でやってくるんでしょうねぇ……。ま、それはさて置
き発進準備どうなっている

  のかしら?」


  「あ、はい!現在シークエンス76%終了。発進まであと8分42秒予定で
す!」


  「なんとかなりそうね…」


   栞からの報告に、提督は安心したように息を大きく吐き出した。


  「あの…提督はこちらに向かっているパイロットと面識があるのですか?」


   先ほどの会話から、その人物と提督が知り合いであると予想した秋子はそ
の人物について聞こうとした。


  「えぇ…よく知ってるわよ。なんせ彼は”ドゴォォオオン"…っつ、状況は?
」


  「地上の連合軍被害多数!!撤退を開始しました!!それに伴い、無人兵器
の攻撃対象がこちらに!!」


   ブリッジにいる面々は顔を青ざめさせ、さすがの秋子もこの状況に焦りを
表せないことはできなかった。


  しかし、このような状況下で平然としている人物達もいた。プロス、ムネタ
ケ、そしてなぜか一弥である。



    〜ブリッジ中層〜

  「ふぇぇえ!!ど、どうしよう〜?一弥!」

  「大丈夫だから落ち着いて、姉さん。慌てると発進のときにミスしかねない
よ」

  「大丈夫、ってよくこの状況でそんなこと言ってられるわね!!」

  「そうですよ〜(泣)。一弥さん怖くないんですかぁ?」  

  「えぇ…信じてますから…」


    〜ブリッジ上層〜
  
  「……お母さん」

  「…提督、やはり退艦したほうがよろしいのでは?」

  「大丈夫よ。私の判断を信じなさい…。それに、そろそろ時間でしょ?プロ
ス」

  「はい。もう到着すると思いますよ」



   と、無人兵器の攻撃で揺れる中、このような会話がなされていたがどちら
も似たようなものだった。


  この現状に恐怖を抱くものと、その恐怖を遥かにしのぐ信頼を持って恐怖を
打ち崩すもの………


  これは、ある人物のことを知るか知らないかによる所が大きいのだが。





   ……そして唐突に新たなる舞台の幕開けの合図がなされた




     主役の登場に伴い物語りは進んでいく



     
     いや、主役かどうかはわからない




     彼は光というものを求めない




     なぜなら彼は闇に生きることを望んでいるのだから………











      第2話 前編   FIN







    〜あとがき〜

  どうも^^カズです。

  長ぁぁああああい!!!…1話で終わらんかった(;;

  テスト期間中ちょくちょく書いていたので構成がまとまらんし…ま、いっか(
オイ!

  さて、今回はエクセリヲン発進前編です。そして祐一でてないし…

  次回はしょっぱなから出していきますんで今回はごめんなさい^^:

  あと、アドアイスにあった地の文多めにしてみました〜

  分かりにくいかもしれませんが、皆さんの意見は大切にしようとおもうので^^

  でわ、次回後編もよろしくで〜すw