第二話「永遠神剣」

手元にあるのは、全長がゆうに3メートルを有るのではないかという、長刀だった。
見た感じでは、日本刀に近い形をしている。
それを見ていて、ふと気が付いた。

朝霧「正宗か」
不破「ちょ、ちょっとまてよ!冗談だろ!?」
鳳「そうだよ!なんでそんなものが!?

そういうのも仕方が無いと思う。
手元に握られた刀は、俺達の世界では「妖刀正宗」と恐れられる鬼剣だったからだ。
手にしたものは、半乱狂のうちに三日して必ず死を遂げる、曰く付きの刀だった。
それが目の前にあるなんて信じたくないのも解る。
だが、それよりも・・・
俺だけではまずい。
今武器を持っているのは俺だけだ。
ならば急がないと・・・
そう思い、促そうと思った。

朝霧「おい、お前らもこれを」
鳳「えっ?」
不破「あ、ああ。」

少々恐れを抱いて、剣を握る。
それは怖いのだろう・・・
でも、俺ができるのは、励ます事ぐらいだった。
朝霧「大丈夫だ!やれば分かるし、カバーはする!」
そういっても、何か腑に落ちないと言うそんな表情を浮かべて剣を強く握った。
すると・・・

キュイーーーーーーーーン

鳳「!?」
不破「これは!?」
再び閃光。

朝霧「今の俺ならば・・・・・はっ!」

剣を握った瞬間、自分の何かが変わった気がした。
その変わったものがなんなのかは分からないが、少なくとも、以前の俺ではない力を持っているはずだ。
その証拠に、体全体を包む、暖かい『気』のような物が分かった。
俗に言う、『魔力』と言う奴だろう。
その魔力を駆使し、彼らに魔力弾を放つ。
俺が味わった闇という存在に、取り込まれないためだ。
その後、光がやむ。
特に変化は無かったが、彼らが握った剣は劇的に変わっていた。

刹那が握るのは、全長が約1.2メートルぐらいの細身の剣。
強いて言うなれば、西洋刀に近い形をしていると言える。
一方不破は、片刃の大剣を握っていて、その大きさは有に3メートルぐらいある。
また、横幅共に大きいために重いのか、すぐに地面へと下げていた。

鳳「これは・・・かつてのワルキューレ達が握っていた、『デウテロス』!?」

刹那は、異様に神話などに詳しい。
特に、ニーヴェルン叙事詩を語らせたら右に出るものは居ないだろう。
ちなみにワルキューレと言うのは、ニーヴェルン叙事詩の中で「オーディン」に使えていた眷属たちの事だ。

不破「かぁっ!?重いしでっかいし・・・なんだよこれ!?」

と、不破が泣き言を上げる。
それもそのはず。彼が握っている剣は、半端無い大きさだ。
丁度その剣がどんなものかと思案していると、刹那が注釈した。
鳳「それ・・・もしかすると、かの有名な『ラグナロク』かもよ?」
不破「『ラグナロク』!?あれって確か・・・過去の遠い話の中で、天を切り裂いたと言われる伝説の・・・」
鳳「だろうね。大きさ・長さ共にぴったりだ!」
不破「『ラグナロク』・・・か。」
鳳「まぁ、僕たちは剣を握ったわけだけど・・・なんで剣なんかを?」
不破「そうそう。儀式ったって、剣が出てきて・・・俺たち特に代わってないぞ?」
朝霧「・・・まあ、そういう儀式なんだよ。」

鳳・不破「????」

王「ふ・・・やっと覚醒したか。また、私の力が増大するのだ・・・はっはっはっ!」
と、突然忌々しげな声が響いた。
来た当初はどこか恐れを抱いたが、今は不思議と怖くなかった。
むしろ、その姿が矮小に見えて仕方が無い。

朝霧「ざけんな!誰があんな力がほしいといった?心を奪っておいて、どうせ体の良い駒にするつもりだったんだろう?生憎と、そんな力を押しのけさせてもらった。」

王「な・・・なんと!?ばかな!!」
朝霧「大体、お前みたいな暴君なんかで、誰が付くかっつーの!」
そうやって、皮肉や侮蔑を込めてけなした瞬間、


王女「・・・・!」


横に座っていた、年齢16位に取れる王女が怒鳴った。
言葉が全く解らなかったが、父親(?)をけなされたように感じ取ったのだろう。
だが、俺たちも言葉が分からないのは同じ事だった。
朝霧「・・・・・全くわからん。こいつら、何言ってんだ?」
鳳「聞いたところ、英語や他の外国語とは違うようだけど?」
朝霧「だろうな。まあいい。おい、王とやら。あんた見た感じ、悪に支配されているな?目を見れば解るぜ?その澱んだ瞳が。」
王「ふん!だったらどうするきだ?」
朝霧「知れたことを。元に戻すまでだ。解除呪文でもすれば元に戻るだろうさ。」
鳳「解除呪文?」
不破「ゲームみたいに、魔法なんか使えるのか?」
朝霧「まぁ、いいから。」
王「はっはっはっはっ・・・私がそのような事を、ただで許すと思うのか?」
そういうと、指を鳴らした。
その後に横から出てきたのは、一人の女性だった。
緑の服に包まれ、なぜか表情は虚ろだったが・・・

王「従わぬのなら・・・死んでもらう!」

そういうと、その女性に合図を送った。
その女性は、俺たちの目の前に立つと、どこから出したか解らない斧みたいなものを出し構えた。

?「・・・・・、・・・・・・!」

彼女が何かを言い、刀身をこちらに向ける。
鳳「ちょ、ちょっと!なんかやばいよ!?」
不破「ピンチ到来・・・だな。」
鳳「くっ・・・どうする?この場合は交渉といきたいところだけど・・・生憎と言葉は通じないしね。くそっ、手詰まりじゃないか!」
不破「どうする!?あんまり時間無いが、ありきたりの順番でも決めるか?」

朝霧「わかった・・・・俺が行こう。」
鳳・不破「・・・え!?」

鳳「ちょ、ちょっと!雄一!?」
不破「おいおい!いくらなんでも無茶苦茶だぞ!?下がれ!」
心配してくれるのは大変ありがたかったが、そんなことを言ってられる状況じゃないので、礼を言うのは辞めておいた。
だから、二人の意見は一蹴して彼女の前に出た。

朝霧「このまま戦う・・・か。でも、このままじゃ何かと不便だな・・・・・そうだ。いい事思いついたぜ!」

先程剣を握ったときに、不意に頭に入ってきた言葉があった。
それらの言葉自体は分からなかったが、意味は不思議とわかった。


「我を召喚するのだ」


そういっていた気がする。
だから、その言葉を繰り返してみようと思った。

朝霧「我は呼び出す。刀の主を、刀のマナを。今ここに降臨し、我を主と認めん!」

一字一句間違わずに叫ぶと、閃光が爆発した。
その閃光の少し後、目の前に現れたのは黒い動物のようなものだった。
形は、目は黄色・胴体は黒・羽が二対・尻尾があり、小さくて黒い。
この異質のものを見た時、誰もが息を呑んだのが見えたが、俺はなんとなく正体という物が分かっていた。


朝霧「現れたな。俺の正宗に現存する精霊、名を『シェイド』とか言ったな。」


問いかけると、意外にも中性的な声で話しかけてきた。
シェイド「汝か・・・我がマスターは。やけに若いな?」
朝霧「当たり前だ。今を生きる、17歳のピチピチな高校生だ」
鳳・不破「ピチピチって死語だろΣ(゚Д゚)」
朝霧「・・・・・無視してくれ。」
シェイド「ああ・・・・ふむ。見たところによると、この世界のことを少しは解っている様に見える。この世界がどこなのか、ということを。」
朝霧「まぁ知っている。まぁ、お前はいろいろ分かるか?ここの言葉とか」
シェイド「分かる・・・否、マスターしている」
朝霧「なら話が早い。俺がしゃべった言葉の翻訳。それと、魔力の制御、よろしく!」
シェイド「ふむ・・・了解した、我がマスターよ。しかし・・・おもしろそうだな、マスター?」
朝霧「言ってなかったな。俺の性格は、現状をより楽しむために全力で励む、だ。覚えておけ。」
シェイド「存外変わったマスターだ。これからよろしく頼むぞ、マイマスター」
朝霧「ああ。気が向いたら相手してやるよ」
シェイド「ふむ。了解した。」
鳳「雄一、なんだよそれ!?」
朝霧「かったりいから、気が向いたときに説明する。」
不破「うんな無茶苦茶な!?」
無視した。
朝霧「さて・・・と。」
目の前を見る。女性が構えていたが、俺は特に構えず、あることを言い放つ。

朝霧「緑のマナを持つ『エスペリア=グリーンスピリット』。その能力は主に回復・防御系を主とし、攻撃力もそこそこある。前線に出してもそれなりの活動が可能。神剣名『献身』。」
エスペリア「なっ!?」

朝霧「悪いが、ある程度の事は知っている。悪いことは言わない・・・引け!」
とりあえず、無駄だとわかっていても言っておく事にした。そして、
エスペリア「できません。これは我らの王の意思。断じて従うことなど!」

朝霧「・・・やっと言葉通じたし。まぁいい。引かないなら力ずく、と言いたいんだが。生憎と俺は女性を傷つける趣味は無い。だから・・・・どうしよう?」
鳳「なぜ尋ねる!?」

エスペリア「戦わないのなら、どうなされます?この状況を」
朝霧「簡単だ。神剣の主として命ずる。闇よ、その力を鋼の糸へと変え、敵を捕縛せよ!『アトラック=ナチャ』!」


『アトラック=ナチャ』
朝霧達が持つ神剣の力はとてつもなく強い。
その強さは普通の神剣の比ではなく、イメージしただけで、その物質界に働きを掛ける事ができるほどだ。
この『アトラック=ナチャ』は、虚空より無数の糸を出し、相手をクモの巣状にしてからめとってしまう捕縛魔法。
特にダメージとかは無いが、その魔力の糸で捕まってしまえば、容易に抜け出す事は不可能になる。


唱えると、虚空からクモの巣の形をした糸が、彼女をぐるぐる巻きにする。

エスペリア「!?」

鳳「これは・・・いや、これが・・・魔法?」
不破「しかし・・・なんか表現しにくいエロスな感じが漂うのだが・・・案外お前はその手の趣味があるのか?」
朝霧「そんなのあるか!俺はいたって普通だ!」
そんな会話の中も、彼女はもがく。
王「何をしている!?早くその糸を解かぬか!」
エスペリア「は、はい!」
というが、
エスペリア「くっ!?な、なんできれないの!?」
朝霧「捕縛式魔法『アトラック=ナチャ』。相手の動きを封印する魔法さ。」
エスペリア「くっ!」
さらにもがく彼女。
すると・・・

?「エスペリア、魔法で壊す。」
!?

いきなり王の横より現れたのは、青髪の少女だった。
エスペリア「アセリア!?・・・・わかりました。」
その声にこたえて・・・

エスペリア「『献身』の主が命ずる。風よ、その怒りを刃に変えよ。『ウインドスラッシュ』!」

大気の魔法を唱えたようだ。
すると何も無い虚空に、緑色状の回転ノコギリの様な物がでてきて、『アトラック=ナチャ』に切りかかった。
だが・・・

朝霧「無駄だ。」
パリーン

『アトラック=ナチャ』に切りかかった直後、その魔法が鏡のように割れた。
魔力の差で負けたため、その場で自壊した様だった。
エスペリア「なっ・・・そんな!?」
朝霧「言っておくが、その『アトラック=ナチャ』は打撃においても魔術的においても防御力があるんだ。並みの魔力じゃ解けやしないさ・・・・・そうだな。それをもし解けるとすれば、恐らくこいつだけだぜ」

といって指差した方向には・・・
鳳「ぼ、僕!?って先ほどからおっしゃっている言葉の意味が全くわかりませんが!?それにおいての説明をプリーズ!」
朝霧「あ〜、かったりいんでパス。」
鳳「ウワァァァァァァヽ(`Д´)ノァァァァァァン!」
朝霧「まぁ、よく聞け。この永遠神剣を持ったときに感じたんだが、どうやら魔力なる物が相当あると思えたのが、お前だった。それにだ・・・」
鳳「・・・ゴクッ」

朝霧「不破の方が、なんか危ない方向でトリップしてるし、何話しかけても無駄な気がして・・・つか、神剣握ったときからこんな調子になってるし」

不破「(゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ(゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ(゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ」

朝霧「はぁ・・・なんでこんなけったいな奴と友情なんて育んだんだろう。」
鳳「ま、言わないお約束でしょ?」
朝霧「だな。おい、起きろ。おい・・・・・起きろや!」

朝霧→(=゚ω゚)つ)゚∀゚)グァ←不破

不破「痛ててて・・・・・は!?電車か!?そうなんだな!?」
朝霧「うんなわけあるかい!?」
不破「そりゃ知ってる。つかね、俺個人として飽きたねこの『電車』発言。 ま、俺としての見解が、たくあんが食べたい今日この頃という具合に」
朝霧「わけわかんねぇよ!っていうか、刹那?」
鳳「なんだい?用件は的確スマートに」
朝霧「じゃ、簡潔に言う。あの『アトラック=ナチャ』を解いてみろ。否、解け」
鳳「命令かい!?ってちょっと待った!そんなことしたら、敵解放しちゃうじゃん!」
朝霧「まぁ、習うより慣れろってやつさ。魔力・・・っていうものがどんなのかを知るのに絶好の機会じゃないか?」
鳳「でも・・・仮にやるとしても、だ。僕はやり方知らないよ?」
朝霧「う〜ん・・・ま、安直に行こう。『ファイナルファンタジー』なるRPGで出てくる解呪の呪文といえば?」
不破「『ディスペル』か?」
朝霧「先に答えたのが烈火だと・・・なんか癪だな?」
不破「ほっとけ!」
鳳「『ディスペル』ね。できるのかな?」
朝霧「やればわかるさ。さ、とりあえずは・・・」

エスペリア「貴方たち・・・人が動けないのいいことに、練習台にしようとしていませんか!?」

朝霧「あ、ばれた。」
鳳・不破「?」
朝霧「あ・・・そういえばお前ら言葉分からなかったな。彼女、練習台にしようとしているのが分かったから、少なからず反論してるだよ。」
鳳「あ、そういえばたしかにそうだね。」

エスペリア「少なからずじゃありません!多大にです!!」

朝霧「・・・勝手に言葉が翻訳されるから、日本語しゃべってるのにあっちにも分かるように変換されてるんだった。今頃気がついた俺に100点を挙げよう!」
鳳「意味が分かりませんが!?」
朝霧「とりあえずやってみなって。敵、解放したってまた俺がすればいいんだから、さ?」
鳳「う〜ん・・・どうにも納得できないけど・・・ま、いっか!」
朝霧「決心ついたか?」
鳳「まぁ、中ほどに」
不破「値で言うなら、どれくらいだよその決意・・・」
鳳「ま、気にしない。さて・・・普通ならば唱えるだけで効果が出るはず・・・だよね?」
朝霧「まぁ、俗に言う低級魔法だしな。」
鳳「低級?」
朝霧「いや、いい。やってみ。」
鳳「それではお言葉に甘えまして・・・」
エスペリア「くっ・・・」
刹那が構えると同時に、彼女も構えた。
これからの事に耐えるつもりなんだろう。
でも、言いたいことが一つだけ・・・

ダメージ0で痛くねぇし、『ディスペル』Σ(゚Д゚)
と、切実に思っていたら、やっと行動を開始した。

鳳「『ディスペル』!」

と唱えると、目の前の『アトラック=ナチャ』がいとも簡単に壊れた。
エスペリア「えっ!?」
鳳「効果は・・・出たようだね。」
朝霧「ほらな、言ったとおりだろ?」
不破「ふむ。効果は出て、刹那の魔力とやらも相当のものと判明したが・・・結論から言おう。何度も言うけど解呪していいのか?」

朝霧「いや、実際かなり悪い。」
鳳「なんですと!?」
不破「やっぱ悪いんじゃねぇか!」
朝霧「まあ、なんとかなる。俺の悪運はこういう時に発揮されるしな。」
鳳・不破「結局運任せ!?と、いうよりかあんた、アホ!?」

朝霧「うん。」
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鳳・不破「アゼーン、ってなんだこの右上のカウンターは!?」
朝霧「知るか!」

エスペリア「貴方たち・・・遊ぶのもいい加減にしてください!」
朝霧「あ?」
鳳「い?」
不破「う?」

朝霧・鳳・不破「工エエェ(´Д`)ェエエ工」

エスペリア「あ・な・た・方・と・い・う・方・は〜〜〜〜〜!」
やけにむきになって刃を構える彼女、エスペリア。
カルシウム足りてないんじゃ無いのか?

エスペリア「貴方たちが怒らしているのでしょうが!」

朝霧「声に出していたか・・・くそっ!」
エスペリア「あなた方の茶番にもあきました!もう行きます!」
と言って、刃を突状にして突っ込んでくるエスペリア。
朝霧「・・・・・一つ言うぞ?」
エスペリア「でやぁぁぁぁぁぁ!」

朝霧「刃、逆だぞ?」
エスペリア「!?」

言い放った瞬間に、エスペリアが確認のために急制動をかけ止まってしまう。
その瞬間、俺は一気に駆け出した。
今の俺の速度は、はっきり言って肉視できないだろう。
その目に見えない速度で相手の背後に回り、彼女が気づいたときには遅かった。

アセリア「エスペリア!」
エスペリア「な!?」

朝霧「おっと動くな。動くと死ぬぞ?」
相手の首に正宗を突きつけ、動きを拘束する。
エスペリア「なっ!?ひ、卑怯な!汚いです!」

朝霧「なに!?汚いんだな、そうなんだな!?おい、なんとかはっきり言ってくれ!俺は臭うのか!?それほどまでに汚い格好をしているのかどうなんですかそこら辺!?」
エスペリア「は、はあ?」
鳳「いや、激しく趣旨間違ってるし!?」
不破「その前に論点ずれてるぞ!それに・・・・・何をした?」
鳳「そ、そうだった。一体何をしたの!?」
朝霧「ん・・・早く動いただけだ。まあ、そのうち見えるようになる。それとだ、二人とも」

鳳「なにさ?」
不破「なんだ?」
朝霧「趣旨間違えたのは・・・俺のオチャッピーな冗談だ。」
鳳・不破「武器突きつけた状態で言う冗談かよ!?」
朝霧「いや〜シリアスな展開苦手で、ちょっと場を和まそうとしただけなんだけどな〜」
不破「つか、あんた。手に持ってる刀を人に向けといて、場を和ますも無いと思いますが!?」
朝霧「気にするな、些細な欠点だ。」
鳳・不破「どこが些細だ!」

エスペリア「っく、放して!」

朝霧「嫌」
『突っ込みカウンター:0.03秒をHIT!記録更新!』

鳳・不破「いい加減ウザイわ!」
朝霧「・・・・・まあ、冗談はここまでにして、そろそろ本題に入ろうか。王とやらよ、このスピリットがどうなってもいいのか?今ならまだ間に合うぜ・・・・・降伏しろ!」
王「ふん!所詮スピリットは我らの奴隷だ。誰が降伏すると?貴様か?はっはっはっはっ・・・」

朝霧「・・・・・下衆が。いや、今のアンタが下衆だ!」

王「今の・・・だと?ふん。私は以前からこうだったさ!さぁアセリアよ!そこにいるエスペリア共々、敵を叩き切ってしまえ!これは最重要任務だ!」
アセリア「ん!・・・でも・・・私は・・・」
一瞬、青の髪の少女が苦悶の表情を浮かべる。
が、どうやら決心したらしく、自分の持っていた剣をこちらに向ける。
エスペリア「アセリア、こうなれば仕方ありません!私共々、殺して!」
アセリア「ん・・・エスペリア・・・御免!」

その発言は・・・
俺がもっとも聞きたくないセリフだった・・・

朝霧「ふざけるな!」

鳳「雄一・・・」
不破「おまえ・・・」


朝霧「『私共々切れ』だと?ふざけるのもいい加減にしろ!お前らは、その一つ一つの命を何だと思ってるんだ!味方が危険な状態で・・・それで助からないからと言う理不尽な理由で殺す・・・そんな事は間違ってんだよ!俺は・・・そうやって命を粗末にする奴らが一番我慢ならない!戦争で傷つき・・・泣きたい人だってたくさんいる。それでも、守りたい人のため・・・帰る人達を待ち続ける人だっているんだ!その思いを・・・お前らは今否定したんだ!お前らにどれだけの覚悟がある!?それらの人々の思いを裏切るだけの覚悟がどれだけある!?・・・・・ムカついた。ああ!こんなことはたくさんだ!!」


今は遠い昔・・・
俺には、幼き頃に父親が居た。
今は、居ない。
なぜならば、離婚をして、彼は刑務所に入っているからだ。
母親を働かせておくだけ働かせて、自分は何もしなかった。
さらには文句や暴力を振るっていた。
俺はそれが、幼き子供心にとって我慢ならないものだった。
そして、彼の言うセリフ・・・それが一番・・・
今の俺にとって・・・
過去の俺にとって・・・
未来の俺にとって・・・
一生、許せない言葉だった。


父「この世界には強者が居る。お前ら弱者を虐げて生きる強者が、だ!強者のやることは全てだ!理だ!運命だ!私はその強者になったのだ!それなのにお前らは・・・俺のような強者がすることに対していちいち歯向かって来る!?なんだその様は!?なんだその態度は!?お前らは下等な生物だ!お前らの矮小なる命など、・・ゴミ程度でしかないんだ!」


ゴミ・・・命を命と思わない行為・・・そして繰り返した挙句の果てが、自滅。
因果応報・・・・・原因とは結果となり、『流転』する。
彼はそれを言うだけ言って、外に出て行った。
その後には・・・一人の女性を殺し、捕まっていた。
だが、結果的にそれが奇跡へと?がった。
「DV法」の助けもあり、俺たち家族・・・
母と兄と俺は、見事に離婚して、一つの幸せを手に入れて生きていくこととなった。
そんな過去・・・
そんな過去があったからこそ、俺は命を粗末にする奴らは一番嫌いだった。
粗末にしていい命など居ない・・・
強者なんて居ない・・・そんなものはどこにもいない・・・
俺のそこに至った結論・・・


生きている人々全てが『弱者』で、その一つ一つが、必死に生きようとしている輝かしい『生命』の一つなんだ、と。


だから俺は、何時如何なる状況であろうがそのような発言は最も嫌っていた。
この話をした刹那や烈火は、暗く思い顔をしている。
同情してくれるのはありがたいが、今はそんなセンチメンタルな気分に浸るほど、俺は理性と言う物が制御できていない。

できているが、その理性すらも沸点を超えている。
だから俺は、自分で自分の行動すら、正直意味が分からない状況となっていた。
気付いたときには、エスペリアを解放していた。

エスペリア「!?」

さすがの彼女も驚いたようだ。いきなり敵が自分を放すなど、思っても見ないだろう。
だが、すぐに構えを治すと、静かに言ってきた。
エスペリア「・・・・・なぜです?なぜ、私を放したのですか?」
なぜ放したのだろう?
自分でも分からなかったが、一つだけは明確に焦点を結んでいた。

命を無駄にする奴は、一発と言わず何発でも殴って言い聞かせてやる。

朝霧「・・・言っておいてやろう。正直、今の俺は俺自身すら何を考えているのか分からないほど頭に来ているんだ。その理由・・・お前にも明白だろう?」
エスペリア「戦場では・・・命を散らす事など当たり前です!ましてや、仲間によって斬られるなら・・・本望と呼べるもので」
朝霧「ああ、そうかいそうかい!そんなにアンタは俺をぶち切らせたいんだな!」
エスペリア「な、なにを!?」
朝霧「何度も言ってやろう・・・命を粗末にする奴は、何人たりとも許さん!例えそれが愛する者であろうと、親友であろうともだ!そのタブーをお前は何度となく口にしてしまった。俺のもっとも嫌いな言葉を・・・」

鳳「雄一・・・」
不破「当然だろうな。今の俺たちじゃ・・・もう、あいつは止められない。」


朝霧「俺法廷でアンタは今、有罪と確定した。罪状は・・・すこし苦痛を持ってもらう。」
ブァッ!

俺がそう宣言した瞬間、刀身に黒い炎がまとった。
刹那たちは、あまりにも非現実的で着いて行けておらず、ただ唖然としている。
だが俺はそんな状況であろうとも、とまるわけには行かない。

エスペリア「黒い、炎・・・?」

その黒い炎を見た瞬間に、彼女は驚いたようだった。
だが、俺はそんな一瞬の隙を見逃さない。
今のうちに・・・叩き込む!

朝霧「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!」

そのままありえぬ速度で疾走し、彼女の目の前までわずか3歩でたどり着く。
たどり着いた瞬間、彼女は防御の構えを取った。
だが・・・もう遅い。


朝霧「せいっ!」

「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」

刹那の中、炎に包まれた超高速の4連撃が、彼女を撃った。
音すら残さず、ただ衝撃だけが空気を振るわせた。

朝霧「・・・・・俺たちの世界にある、本来できない技だ。名を・・・「鳳凰炎舞」と言う。覚えて置け」


『鳳凰炎舞』
朝霧が操る我流。炎をまといながらの、超高速の4連激を相手に叩き込む大技。一撃目は腹に入れた後、持ち上げるように相手を上に持っていき、空中で背中に回転二連檄をたたきこみ、終わりざまに下へ一撃を叩き込む技。


敵となった女性を薙ぎ払った雄一。
思いを踏みにじられて、その怒りを相手にぶつけ、わからせる。
そんな荒々しい方法で相手を薙ぎ払ったが、それこそが彼の『悪』なのだろうか?
いや・・・失言だ。彼なら宣言するだろう。
『悪』と呼べるもに対してさらなる『悪』で叩き伏せる・・・それこそ真の『悪』だ、と。

第二話・完